【睇戲】『青春の名のもとに』(港題=以青春的名義)<日本プレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|特集企画《Special Focus on Hong Kong 2018》

『青春の名のもとに』<日本プレミア上映>
(港題=以青春的名義)

22158681_120622808595133_8782550878654562304_n今回の「HONG KONG NIGHT」上映作は、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)と吳肇軒(ン・シウヒン)主演の『青春の名のもとに』である。劉嘉玲については、もはや説明の必要はないが、小生が彼女の新作をスクリーンで観るのは久々のことである。恐らくは『無間道III:終極無間(邦・インファナル・アフェアIII 終極無間)』以来かな?

そもそも「劉嘉玲エエやんかいさ!」と思ったのは、1980年代のハナシで、周潤發主演の『愛と復讐の挽歌』シリーズのことであるから、ずいぶん長いお付き合いになる。なのに彼女は大方の予想通り、梁朝偉(トニー・レオン)と夫婦の契りを交わしてしまったのだから、こっちはたまったもんじゃない(笑)。

吳肇軒(ン・シウヒン)は、一昨年の「HONG KONG NIGHT」で上映された『私たちが飛べる日(港・哪一天我們會飛)』がデビュー作。やはり一昨年の大阪アジアン映画祭で上映された『十年』にも出演、昨年も『一念無明』に出演しており、大阪ではなじみの顔である。そして今年はようやくゲストで来阪してくれた。う~ん、しかし劉嘉玲と吳肇軒の主演ってのが、イマイチ、ピンと来んのやけどなぁ…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

26233761_1195208087281782_8541847030497150164_o港題 『以青春的名義』
英題 『In Your Dreams』
邦題 『青春の名のもとに』
製作年 2017年
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):譚惠貞(タム・ワイジェン)
監製(プロデューサー):劉嘉玲(カリーナ・ラウ)

領銜主演(主演):劉嘉玲、吳肇軒(ン・シウヒン)
主演(出演):謝君豪(チェ・クワンホウ)、董瑋(トン・ワイ)、劉天蘭(ティナ・ラウ)

23213474_1160261567443101_4020871434690640076_oなんかねぇ…。いやはや、悪い予感が当たってしまったというか…。

「教師と生徒の禁断の恋」という前時代的物語を、今風に映画に仕立てたとのことで、「はい、よく頑張りましたね!」と言うところだが、展開が地味すぎた。生徒側の両親が別れていて、父親と息子の二人暮らし、その上父親は飲んだくれで妄想も激しいってのが、やっぱり前時代的で、「そりゃ、こういう設定になるわな」というところで、どうにもこうにも…。

ただ、吳肇軒(ン・シウヒン)演じる主人公の16歳男子生徒・張子行は、かなり行動的というか「突破」な性格で、いわゆる「00后(2000年代生まれ)」の男の子ってこういう感じなのかなぁと思わせてしまう雰囲気を、よく表していた。その辺は、彼は実年齢も「90后(1990年代生まれ)」なんで割と地に近いところでやってたのかなぁと思う。

そして我が劉嘉玲(カリーナ・ラウ)だが。体型が50歳代なのは小生とほとんど歳が変わらないのだから、もうどうにもならないけど、それはそれで、この「理由あり」な女教師を演じるにはちょうどいい雰囲気ではあった。限りなく化粧っ気を抑えて、「なるほど、劉嘉玲のすっぴんはこんな顔か…。と言う事は、梁朝偉は朝な夕なにこの顔を見てはるわけか」などと、映画とはまったく関係ないことを考えていたりして、こういう観客はよくないですな(笑)。
プールサイドで、20歳代の吳肇軒(ン・シウヒン)と激しく踊るシーンがあったのだが、よく頑張って踊りましたねと、労ってあげたい。

そして特筆すべきは、董瑋(トン・ワイ)の飲んだくれ親父の熱演である。武術指導やアクション監督としても名高い董瑋は、各映画賞での受賞歴も豊富であるのは、香港映画ファンならご承知のこと。そんなアクション界の超大物が、こういう役どころを濃密にこなすところに、香港映画界の奥深さを感じる。出て行った女房代わりに息子をチークダンスの相手にして、キスまで迫るという、きわどい役どころを、このおっさんが演じる日が来るとはねぇ、いや~びっくらこいた。

この親父が逃げた女房に未練タラタラである一方で、息子もまた自分を置いて家を出た母親を、どこかで追いかけている。その母性を女教師に求めて…ってかんじで物語が進んでゆく。

In-Your-Dreams-movie-poster-CinemAsiaさて、大物女優・劉嘉玲(カリーナ・ラウ)との共演について、上映後の質疑応答で吳肇軒(ン・シウヒン)が語っていた。

元々、王家偉(ウォン・カーウァイ)監督の映画が大好きで、劉嘉玲も出演していた『阿飛正傳(邦・欲望の翼)』もよく観ていたと言う。そんな劉嘉玲に会ってみて、「やっぱ美人だな~」と思ったそうな。

「か弱い女性の役は、普段の劉嘉玲さんとは違うんで、あまり得意な役ではないのかなと思っていたら、か弱くても強がる女性を演じてきてビックリでした」。そんな劉嘉玲の芝居にリアクションが出来ないのではと心配していた。だから「劇中の僕は素のリアクションです(笑)」と笑う。

その割には、お前、ベッドシーンなんてとても積極的だったじゃねーか! そこについても裏話を披露してくれた。

「ベッドシーンでは、ベッドに手を突っ込む時に中指を骨折しちゃいました。もちろん痛かったけど、劉嘉玲さんは演じ続けていたので、僕はそっとベッドを抜けて行ったんですよ(笑)」。

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吳肇軒(ン・シウヒン)について、譚惠貞(タム・ワイジェン)監督曰く「決してイケメンじゃないけど(笑)、カメラに映るとイイ表情出すんですよね~」。ああ、それそれ、小生も激しく同意! それはある意味、彼の大きな武器だと思う。きっとこれから、そういう役どころが増えてゆくと思うな。

質疑応答では、監督が思わず涙するシーンもあった。

作品を書き始めたのが大学在学中の5年前のことだと言う。「当時、親友が先生のことを好きになってしまったがため、成績も下がり、友達からのサポートもなく、私も彼女を責めてしまいました。この作品は、彼女のために書いたんです…」。吳肇軒(ン・シウヒン)は思わず「監督の涙は初めて見ました」。

この作品もまた、バジェットの限られた作品だった。そのため、劉嘉玲は映画のクオリティーを心配していたと言う。半年かけて劉嘉玲と議論を重ね、ようやく出演の承諾を得て撮影にこぎつけた。撮影期間はわずか18日間だった。

「その後、後期制作(=ポスプロ)が資金不足で完成も危ぶまれるという時に、劉嘉玲さんがプロデューサーをかって出てくれたんです」と、苦労話を監督が明かした。

董瑋(トン・ワイ)の名演技とともに、これまた「おやまあ」と思ったのが、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)演じる女教師の旦那役の謝君豪(チェ・クワンホウ)である。すっかり禿げてしまったなあ…。あるいはそういう髪型なのか? いやいやそれはない…。ちなみに吳肇軒(ン・シウヒン)が3歳の時に、謝君豪主演の『南海十三郎』を広東語学習の一環として、銅鑼灣の映画館で観た香港某公司丁稚時代の小生であった(笑)。

どうも小生にとっては、「愛しの劉嘉玲(カリーナ・ラウ)が出てる」ってだけの作品だったけど、吳肇軒(ン・シウヒン)や董瑋(トン・ワイ)のいいところ、意外な一面も見出したつもりではあるが、低い評価になってしまった…。まあ、★の数は「劉嘉玲を観れて、今日も幸せ」ってとこか(笑)。

《以青春的名義》In Your Dreams 終極預告

中指を折ったというシーンも、終盤にアリ(よくわからんけどww)

(平成30年3月16日 ABCホール)


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