【睇戲】破・地獄

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あの『九龍城寨之圍城(邦:トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』の興収記録をあっさり更新し、香港映画史上最高の興収を記録した空前の大ヒット作『破・地獄』を観てきた。

香港映画でおなじみの、「カンフーアクション」でもない、「何発銃弾撃たれたら死ぬんですか?」みたいな「ノワール&アクション」でもなく、「ナンセンスコメディ」でもない。この数年目立った香港の現状、将来を嘆く作品でもない。言ってしまえば「葬儀屋界隈の出来事」を「二大コメディアンが主演で描く作品」なんだけど、それが何故にこんな大ヒットし、おまけに観た人は皆、ボロ泣きしている…。これは謎ですな…。ってわけで、この目でしかと確かめようという次第である。さてさて…。

小生も15年ほど香港で暮らしていたから、それなりに冠婚葬祭の場に立ち会ってきた。本作のタイトルにもなっている「破地獄」の儀式は、 葬儀の儀式の一つだが、“そのようなもの” しか見たことない。現代では簡略化されているんだろうか。或いは「お布施」の額で、やるやらないがあるのか? 破地獄については、日本香港人協会が詳しく説明してくれている。

https://jphker.org/ja/2026/05/hk-movie-the-last-dance/

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

破・地獄 邦題:旅立ちのラストダンス

港題『破·地獄』(導演版)
英題『The Last Dance』
(Director’s cut)
邦題『旅立ちのラストダンス』(ディレクターズカット版)
公開年:2024年 製作地:香港 言語:広東語
上映時間:140分
評価:★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳茂賢(アンセルム・チャン)
監製(プロデューサー):陳茂賢、邵劍秋(ジェイソン・シウ)、陳升仁(チャン・シンヤン)
編劇(脚本):陳茂賢、鄭緯機(チャン・ワイケイ)
攝影(撮影):潘耀明(HKSC)(アンソニー・プン)
剪接(編集):張叔平(ウィリアム・チャン)、彭正熙(キュラン・パン)
動作指導(アクション監督):黃偉亮(ジャック・ウォン)
原創音樂(オリジナル楽曲):朱芸編(チュ・ワンピン)
主題曲(主題歌):《普渡眾生》/林家謙(テレンス・ラム) 作曲、填詞、編曲、監製/林家謙

領銜主演(主演):黃子華(ウォン・ジーワー)、許冠文(マイケル・ホイ)、衛詩雅(ミシェル・ワイ)、朱栢康(チュー・パクホン)、周家怡(キャサリン・チャウ)
聯合主演(共演):秦沛(チョン・プイ)、金燕玲(エレイン・ジン)、韋羅莎(ロサ・マリア)、梁雍婷(レイチェル・リョン)、白只(マイケル・ニン)、鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)
主演(出演):劉若寶(ポリー・ラウ)、張凱娸(キキ・チョン)、駱振偉(ソー・ロク)、陳珮欣(カトリーナ・チャン)、谷德昭(ヴィンセント・コク)、岑珈其(カーキ・サム)、周芷慧(アギー・チョウ)、馬志威(エドワード・マー)、艾妮(エリー・ラム)、秦楚瀅(ナミ・チュン)

【作品概要】

ウエディングプランナーの魏道生(トウサン 演:黃子華/ウォン・ジーワー)は、コロナ禍で多額の負債を抱え、葬儀業者への転身を余儀なくされる。しかし結婚式と葬式は大きく違い、様々な困難に直面する。最大の難関は、共に葬儀を取り仕切る「葬儀道士」である 郭文(マン師匠 演:許冠文/マイケル・ホイ)に認められること。利益の追求が第一のトウサンと、伝統を重んじるマン師匠は、考え方の違いから絶えず衝突し、二人の関係は最悪に。だがマン師匠一家と関わるうちにトウサンのわだかまりは徐々に消え、葬儀で行う儀式「破地獄」の真の意味に気づいていくのだった。<引用:映画『旅立ちのラストダンス』オフィシャルサイト

一昨年11月の「香港映画祭2024 Making Waves」は平日の上映で観られず、昨春の「第20回大阪アジアン映画祭」は即完売で涙を呑み…。ということで、ようやく観ることが叶った。今回は、大阪アジアン映画祭で上映された140分の加長版(導演版=ディレクターズカット版)が全国公開されている。

主演の黃子華(ウォン・ジーワー)、許冠文(マイケル・ホイ)は、1992年の『神算(邦:マジック・タッチ)』以来、なんと32年ぶりの共演。監督の陳茂賢(アンセルム・チャン)は、ラブコメディ『不日成婚』(2021)で監督デビュー。翌年の『不日成婚2』と立て続けにヒットする。今作は監督3作目となる。

葬祭を描く作品ということで、香港で最も有名であろう「萬國殯儀館(International Funeral Parlour)」と、同館の位置する紅磡(Hung Hom)をメーンに撮影された。紅磡には他にも大きな葬儀会場があるので、「葬式と言えば紅磡」というイメージやね。

※本稿にはネタバレを含みます※

COVID-19禍で黃子華(ウォン・ジーワー)演じるウエディングプランナーの魏道生も、多額の負債を抱えてしまう。秦沛(チョン・プイ)の演じる葬儀屋の明叔は、引退してカナダへ移住することになっており、葬儀屋をそのまま道生に譲ると言う。この明叔、道生の長年のパートナー、美玉(演:周家怡/キャサリン・チャウ)の叔父。二人が一向に結婚しないことにご不満な様子。

明叔の到来を待つ道生。この時点では「結婚式も葬式も同じようなもの…」って軽く考えていたのだが… ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

いきなり同行させられたのが、土葬した棺から遺骨を取り出し、こびりついている肉や頭髪を綺麗にふき取って、金塔という骨壺に納めるという儀式。Wikiによれば「執骨」と呼ぶのだそう。香港は火葬なので、こういう儀式は非常に珍しいんじゃないだろうか。

腐ってこびりついた頭髪や肉をそぎ落とし、きれいに洗ってもらい、黒光りする頭蓋骨… ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

葬儀を執り行う際のパートナーは、喃嘸師傅*の郭文(演:許冠文/ホイ・マイケル)。この爺さんが中々、一筋縄ではいかない。「Hello文」と呼ばれていると言うが、随分皮肉がこもってるなという感じ。明叔とは、「クソ爺」と呼び合うほど、心が通じている。

*伝統的な葬儀や道教の儀式を司る。葬儀における役割は、故人の魂を地獄から救い出し、浄土へと導く。

「破地獄」を執り行う郭文 ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

道生にとって最大の壁は、郭文に認められること。二人は世代も離れており、死や葬儀の慣習に対する考え方も大きく異なり、絶えず衝突を繰り返すことになる。なんとかして対立を和らげたい道生は、郭文の家を訪れるが、家業を継いだ息子の郭志斌(演:朱栢康/チュー・パクホン)、救急隊員で娘の郭文玥(演:衛詩雅/ミシェル・ワイ)の親子3人による激しい口論を目撃する。

決して本意ではない「家業の跡継ぎ」の「抑圧と絶望」の日々だが、やがて志斌はある行動に出て… ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

朱栢康が演じた息子の志斌は、喃嘸師傅の仕事には身が入っていない。18歳で学校を中退して、この道に入った彼の人生は、父によって「支配」され、喃嘸師傅という身分に縛られているのだろう。妻子持ちの中年になっても、彼は父から逃れられず、「伝統」に抑圧されている。そんな「抑圧と絶望」が表情やしぐさ、発言の端々から伝わってくる。鬱々とした中年男を演じた朱栢康は、見事、第43屆香港電影金像獎最佳男配角(最優秀助演男優賞)」に輝いた。

仕事で患者の死に遭遇するたびに、不倫相手の救急医とベッドを共にしていた文玥だったが… ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

郭文と娘の文玥との関係も、複雑だ。古代から脈々と続く中国文化における女性への偏見、という問題がこの父と娘の間に横たわる。伝統的な喃嘸師傅の技は、男性のみに技術を伝承するという信条に基づいていた。「女性は不浄で、先祖の力を滅ぼす」という主張は、父娘の葛藤、断絶を生んだ。新旧世代の衝突、親子間の葛藤、憎しみや断絶。この作品のテーマと言える。

文玥を演じた衛詩雅は、「ああ、そう言えば居てるね」くらいの印象しかなかったが、本作でもっと見たい女優に加わった。金像獎では、「最佳女主角(最優秀主演演女優賞)」受賞、納得の熱演。

作品は、郭文一家、道生の4人を中心に展開してゆくが、道生の葬儀屋に舞い込む依頼も考えさせられるものになっている。

衝突を繰り返す道生と郭文 ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

道生は「葬儀は結婚式と同様に、生きている人々のためのイベントに過ぎない」という考え方だった。イベントである以上、彼にとって葬儀は金儲けの手段だった。

最初の案件は、交通事故で亡くなった若い男性の葬儀。故人がスポーツカー好きだったとのことで、紙紮*にマセラティを作成した。遺族に感銘を与え、自分の営業手腕も認められると思ったのだが、故人はそのマセラティで事故死していた…。当然ながら遺族は激怒。道生は郭文に謝罪した。郭文は忠告した。「謝罪する相手は遺族だ」と。

*伝統的な葬儀や宗教儀礼で用いられる、紙で作られた供物。故人があの世での生活に困らないよう、また生前の願いを叶えるための品々を模して作られる。家からあの世へと焼却を通じて届けることで、故人の冥福を祈り、遺族の想いを託す。伝統的な「紙幣」「金銀財宝」や「衣服」だけでなく、「愛車」「家電製品」「スマホ」など、現代の生活に合わせて精巧に作られる。

2件目の依頼は、母親(演:韋羅莎/ロサ・マリア)は息子の死を信じず、遺体を高級な素材の棺桶で真空保存し、将来の技術で息子が生き返らせたいと言う。他の葬儀屋が依頼を断る中、道生はリスクを承知で引き受けた。遺体は防腐処理を施されずに6ヶ月間霊安室に保管されていたため、腐敗が始まっていた。

腐敗した子供の遺体は作り物でなく、ホンモノの売れっ子子役、楊自康(ケイソン・ヤン)が演じた ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

志斌に処理を手伝ってもらったが…。一人で悪戦苦闘する道生のもとに、依頼を断るよう告げていた郭文が突如現れ、二人で遺体の防腐処理を完了させ、東華義莊*に安置した。

*長年にわたり、香港の地元住民や海外在住の華僑向けに棺、遺骨、遺灰の保管サービスを提供している施設。

厳粛かつ敬虔な作業を通して、道生は母親から「変人扱いしないでくれて、ありがとう」と感謝され、葬儀屋の役割に対する深い理解と認識を深めていったつもりでいたのだが、郭文と志斌は「死者の安寧を損ねた。あの子の魂はさ迷い続ける」と、追悼の儀式を行った。

棺桶について少し語らせて。

昔々、小生が奉公していた公司が入居してたビルの並びに、古めかしい棺桶屋があった。ごっつい素材で、「これは出棺の時、重いやろな~」と眺めていた。日本の棺桶とは違い、ニスでも塗っているのだろうか、光沢のある、まるで洋服ダンスのような棺桶だった。上の遺体処理の画像、二人の奥で輝いているのが棺桶だ。

そして3つ目の依頼。投資顧問会社かなんか知らないけど、めっちゃ偉そうで、金銭に執着する男が、妻の葬儀を独断的に横暴に扱う。ほんと嫌な奴を白只(マイケル・ニン)が嫌らしく演じる。亡くなった妻の同性の恋人?(演:梁雍婷/レイチェル・リョン)の参列を拒絶する下りは、実にえげつない。道生は依頼者の不在中に、恋人が故人を偲ぶことを認めた。夫の無関心とは対照的な恋人の愛情には、胸を打たれた。

『客途秋恨』が二人に笑顔をもたらす ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

謙虚に葬儀の作法や関連知識を学ぶ道生を郭文が食事に誘う。そこで二人の関係が一気に雪解けムードになる。その仲介をしたのが「南音」である。南音は珠江デルタ地域で歌い継がれてきた語り歌。二人が唱和した『客途秋恨』は、その代表的曲で、粤曲(広東オペラ)や映画にもなっている人気曲でもある。二度と会えないであろう人を想い嘆いている内容で、父親がこの歌をよく歌っていたと語る道生の表情に「こりゃワケありやな…」なんて、後になって思い出すのは、ぼや~っと観てる証拠(笑)。

ここで小生の大好きな二人について触れておくと…。

蓮姐の異変に気付き、心配する文玥。金燕玲(エレイン・ジン)もいつの間にか、こういう役どころになったんだな…。歳月の流れを痛感する ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

まずは、ベテランの金燕玲(エレイン・ジン)。昔から大好きな女優。本作では旦那に先立たれた後も、「燉湯小店(スープ屋)」を営む独居老人、蓮姐を演じる。仕事の合間に立ち寄る文玥の体調に応じたスープを用意してくれる。道生も常連だ。ある日、文玥は蓮姐が高血圧で手足にむくみがあることを発見する。「何かあったらすぐ連絡してね!」「心配しないで」。これが二人の最後の会話に…。

蓮姐を死装束に着替えさせ、死化粧を施す道生。親族がいない蓮姐を「身内」として見守る文玥。棺を閉じる前に、蓮姐のトレードマークだったメガネを添えてあげるシーンなんぞは、滂沱の涙になってしまった…。「孤独死」という点では、小生も他人事ではないだけに、余計にね…。

「これからは連絡取り合おうな」と異母兄に言われ、ぎこちなく「あ、ああ…」と答える道生の異母弟。岑珈其(カーキ・サム)は導演版だけの登場 ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

次に、小生「イチ推し、二推し、サン推し」の岑珈其(カーキ・サム)。「この作品に彼が出てくるような場があるかね?」と思ってたら、唐突に現れてびっくりした。道生の腹違いの弟を演じる。長らく音信不通だった兄と再会し、父親が亡くなる前に道生に一枚の写真を残していたことを明かす。道生が実の両親と一緒に写っている幼少期の写真だった。裏には「どうか許してくれ」と書かれていた…。ディレクターズカット版のみのシーン。

さて、郭文ファミリーに戻ると…。

志斌の息子ちゃんは、頭のいい子らしい。何度も志斌が言ってた。息子の学校入学のために洗礼を受け、カトリックに改宗した。食事場で妻に促され、十字を切る志斌に郭文は不快感を示した。

父の病室の外で、口論を展開する兄妹だったが、兄の決意は動くことなく… ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

葬儀会場で、郭文と志斌は激しい口論となる。「プチン!」と来てしまった郭文は、心臓発作と脳卒中を起こした。ぶっ倒れた父を見捨て、志斌は家族と共にオーストラリアへ移住することを決意していた。志斌は文玥に本当の気持ちを明かす。「父が築いた家族の中では、自分はその一員に過ぎなかったが、妻子と過ごす小さな家庭では、真の自分になれる」と。ああ、そういうことになるよな。小生自身とて、思い当る節が無きにしも非ずだから…。彼はオーストラリアへと逃れることで、ついに解放されたわけだ。これは志斌の人生における「破地獄」だったのかも…。

かくして、文玥は病気の父親の世話を一人ですることになった。

と、まあ、これ以上語ると、完全ネタバレになるので、ここらで止めておく(笑)。文玥の介護を最初は「女の穢れた手で触るな!」と拒絶していた郭文だが、ある出来事を境に、娘のこれまでの人生というものを顧みるようになる。断絶、葛藤、衝突の日々だった二人の関係が、徐々に雪解けしてゆくのか…。

最初は触られることすら拒否してたんだが…。右半身まひを演じた許冠文の迫真の演技はすごかったなぁ ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

しかし、介護の場面はジーンときたなぁ…。これまた、色々と思い当る節があって…。「思い当る節だらけかよ、この映画は!」と思ったが、映画を観た香港市民にも、それぞれにきっとそういうのがいっぱいあって、胸に突き刺さったんだろうな。だから歴代興収記録をあっという間に塗り替えたということだろう。

「本日の葬儀の進行は私が勤めます!」と道生。観てる方からすると、この先のクライマックスをめっちゃ期待するのだ ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

郭文の死を迎えた。移民していた志斌と妻子、明叔も帰港した。

明叔が「冗談だろう?俺を一人ぼっちにするのか?」と、郭文の遺影に問いかける。この瞬間だけで、演じた秦沛は、数十年にわたる郭文とのパートナーシップ、二人の間の深い絆を巧みに表現し、映画の中で詳細に描かれていなかった、生涯にわたる二人の関係を鮮やかに描き出した。思うに、これは監督や脚本家の力量ではなく、ベテラン俳優、秦沛の演技力によるものだ。ベテランの味わい深い演技に、ホロっとしてしまう…。

葬儀の場で道生は「『破地獄』は郭志斌と郭文玥の兄妹で執り行う」と発表した。これは、参列していた葬儀業界の多くの関係者から強い反発を食らう。彼らは女性が道教の儀式を執り行うことを受け入れられない。怒号が飛び交うも、道生は理路整然と反対の声を黙らせてゆく。そして、これは郭文の最後の願いだと明かすが、なお伝統に反するとの声は収まらない。ならば、と…。

ここら辺は、道生と言うよりも、当代きってのスタンダップ・コメディアン、そして脂の乗り切った俳優としての黃子華の本領発揮の場面で、『毒舌大狀(邦:毒舌弁護人〜正義への戦い〜)』のクライマックスを彷彿とさせる「スッキリ感」があった。

「手順はわかってると思うが、俺の言うとおりに動けばいい」と志斌はちょっとお兄ちゃんらしいところを見せる ©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

参列者のほとんどが席を立った。残ったごく限られた近親者の見守る中、兄妹は協力して、立派に「破地獄」の儀式を執り行った…。

と、文字にしたらそこまでのことだし、終わり方としても「まあ、こうなるよな」とある程度、予測できる終わり方だったが、ここでの「破地獄」の儀式が意味するものが、志斌、文玥、そして彼らの父親である郭文、3人相互との和解で、それが兄妹と父親との別れになったということで、この「破地獄」は3人にとって、地獄から抜け出す儀式だったのかも…。なんかうまく言えないけど…。そんなことを思ってるうちに、なんだか知らないけど、ウルウルしてしまう…。

「破地獄」の儀式、最大のクライマックスは、燃え盛る炎を文玥が飛び越える場面。

「爸、跟我來!(お父さん、私について来て!)
(というセリフだったかどうか忘れたけど、こういう意味の事w)

もはや、この一言で涙腺決壊寸前だった。けっしてありきたりな「お涙頂戴」の展開ではない。ここに至るまで綿密に仕組まれた「家族の地獄の物語」が、地獄を突破した瞬間と感じたからだろう。3人のこれまでの人生が、いかに「地獄」だったかは、作品の中でたっぷりと描かれている。だからこそ「爸、跟我來!」で泣いてしまうのかもな…。

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黃子華の演じた道生について一言。道生は、映画の前半では、郭文一家の観察者であり、葬儀のしきたりの学習者として、様々な形の地獄を目撃した。後半では、葬儀の仲介者であり、生きる者の救世主へと変貌した。道教の衣も伝統の技も持っていないけど、別の方法で生者の地獄を突破させたと思う。黃子華だからできた役でしょ、これは。古天樂(ルイス・クー)でもなければ、劉德華(アンディ・ラウ)でもないし、梁朝偉(トニー・レオン)でもない。そうは思わないか?

さて、この稿をどう締めくくったらいいのか、分からなくなってきた(笑)。「完全ネタばれになってしまうので、ここで止めておく」と言いながら、結局ほとんどやっちゃってごめんなさい(笑)。

しかしながら…。

香港社会が、日本の映画好きな方たちが大絶賛するほどまでは、小生は感動しなかったなぁ、ってのが正直なところ。まあ、人並みに泣くところは泣きましたけどね。それは別にこの作品だけじゃないし、もっともっと泣いた映画は他にもあったし…。

ってわけで、「大ヒットの謎」は上手くは解き明かすことはできなかった。それとも、この作品に他人様ほどには感動しなかったってことは、人生経験がまだまだ足らんということかぁ? それはなんとも、齢62にして恥ずかしいハナシではあるね…。

■ 受賞など ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・

○第39屆華鼎獎
・映画、テレビ中国語作品最優秀女優賞:衛詩雅

○第61回アジア太平洋映画祭
・最優秀主演女優賞:衛詩雅
・最優秀監督賞:陳茂賢
・最優秀美術監督賞:姚漢文
・最優秀編集賞:張叔平、彭正熙
他9部門でノミネート

○第31屆香港電影評論學會大獎
・推薦映画:『破・地獄』
他2部門ノミネート

○2024年度香港電影導演會年度大獎
・最優秀主演男優賞:許冠文
・最優秀主演女優賞:衛詩雅
・最優秀助演男優賞:朱栢康

○2024年度香港電影編劇家協會大獎
・年度推薦脚本:陳茂賢、鄭緯機

○第18回アジア・フィルム・アワード
・最優秀オリジナル音楽賞:朱芸編

○第43屆香港電影金像獎
・最優秀脚本賞:陳茂賢、鄭緯機
・最優秀主演女優賞:衛詩雅
・最優秀助演男優賞:朱栢康
・最優秀オリジナル音楽賞:朱芸編
・最優秀オリジナル楽曲賞:《普渡眾生》作詞・作曲、歌唱/林家謙
他13部門ノミネート

○第27回ウーディネ極東映画祭
・観客賞(シルバー・マルベリー):『破・地獄』
・ブラック・ドラゴン賞(批評家による選出):『破・地獄』

○第二回ゴールデンパンダ賞(映画部門)
・最優秀音楽賞:朱芸編
他3部門ノミネート

○シンガポール国際華語電影金獅大賞
・金獅大賞ベストフィルム:『破・地獄』
・金獅大賞最優秀助演男優:朱栢康
・最優秀オリジナル楽曲賞:《普渡眾生》作詞・作曲、歌唱/林家謙

■ 《破·地獄》加長版 | 正式预告片 ━━━━━━・・・・・

(令和8年6月1日 テアトル梅田)

 

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