【睇戲】『空手道』(港題=空手道)<日本プレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
特集企画《Special Focus on Hong Kong 2018》|コンペティション部門

『空手道』<日本プレミア上映>
(港題=空手道)

17203224_625382067645185_8521066369541559379_n「和製ドラゴン」として、1970年代から香港映画で活躍する我らが倉田保昭先生の『空手道』である。前日の「HONG KONG NIGHT」にゲストで登場した杜汶澤(チャップマン・トー)の監督で、彼も倉田保昭とともに主演俳優に名を連ねる。前夜、「日本映画を撮る!という思いで挑んだ」と語った本作、さてさてどんな日本映画なのか、杜クンの腕前をじっくり拝見しよう。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

FB_IMG_1506793386216_1506821033港題 『空手道』
英題 『The Empty Hands』
邦題 『空手道』
製作年 2017年
製作地 香港
言語 広東語、日本語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):杜汶澤(チャップマン・トー)
監製(プロデューサー):杜汶澤、鄧維弼(ウェイビー・タン)
美術、服装(プロダクション・デザイナー):張蚊=張伊雯(チョン・イーマン)
領銜主演(主演):鄧麗欣(ステフィー・タン)、杜汶澤、倉田保昭、歐錦棠(スティーブン・アウ )
友情演出(友情出演):陳靜(ダダ・チャン)
主演(出演):柳俊江(ライアン・ラウ)、盧覓雪(ミシェール・ルー) 他

the_empty_hands-420505758-large何と言っても、倉田保昭のますますご壮健なるお姿を拝見することが叶い嬉しい限り。いや~、やっぱりカッコええわ~。
そして、この作品も「やっぱり鄧麗欣(ステフィー・タン)」である。上映後の質疑応答で、杜クンが語っていたが、空手の経験が無かったので、半年間、倉田道場で修行して、倉田保昭から「これならいける」とOKもらってから撮影をスタートさせたのだと言う。その甲斐あってか、格闘シーンはもちろん、握りこぶしでの腕立てなど厳しい稽古場面も、彼女がきちんと演じていたのには、感服するばかりである。ホンマ、今の香港映画界で一番の頑張り屋さんである。もう、大好きよ、アナタ!

杜クンの監督・主演作が大阪アジアン映画祭で上映されるのは、これが2作目。前作は一昨年上映のマレーシア・シンガポール映画『ご飯だ!』。あちらは「人情コメディもの」とでも言うべき作品で、笑いありホロリありの内容だったが、今回はガチの「スポ根もの」である。

TheEmptyHands+2017-1-b

亡き父・平川彰(倉田保昭)の真意が汲めず、空手から遠ざかっていた鄧麗欣(ステフィー・タン)演じる平川真里が、再び空手家として再生してゆく過程をたどる物語。
その再生に大きくかかわってくるのが、杜クン演じる父の元・弟子でかつて破門となったムショ帰りの陳強(チャン・キョン)。スポ根と言いながらも、この再生劇に父の遺産である道場の相続話がからんでいるのが香港らしいところ。平川真理の再生やいかに!と言う流れで、最後はまあ、お決まりのパターンなのだけど、繰り返すけど、鄧麗欣(ステフィー・タン)の奮闘ぶりが素晴らしいのだ。上述の空手もさることながら、日本人という役柄上、日本語も話さねばならない。まったくの棒読みだったけど、あれはかなり訓練したやろね。まさに、ステフィー自身の演技そのものが、「スポ根」なのであった。

口のきけない弟子、啞狗を演じた歐錦棠(スティーブン・アウ )は珍しい役どころだが、体格がいいので空手家としては適役だった。平川真里の幼馴染を演じた陳靜(ダダ・チャン)は、なかなかの巨乳で、この子は良いではないか! こまっしゃくれた子役クンたちもたいへんよくできました! 忘れてはならないのが、ラジオの人気DJガーチョン(馮家俊)を演じた柳俊江(ライアン・ラウ)。元はTVB(無綫電視)の人気アナウンサー。なんだかんだで、ちょいちょい映画出演しており、年に何回かは必ずスクリーンで見かける。

さて、杜クンは「日本映画を撮る」とのことで今作を作ったわけだが、どう観ても香港映画だった(笑)。ただ、道場や畳の生活、ちゃぶ台での食事場面、道場の神棚、父の祭壇など細部にわたって「日本」が忠実に再現されていたのがいい。とかく「なんちゃって和風」に落ち着いてしまう海外作品が描く日本だが、ここら辺は本格的だった。「日本的なものをリサーチをしました。道場はどのように作られているのか、日本人の生活習慣、たとえば履物はどこで脱ぐのか、畳の上に布団を敷いてもいいかなど、たくさん資料集めをし、倉田先生からもアドバイスをもらいました」と、プロダクション・デザイナーの張蚊は語った。そして「日本での上映に緊張しています。もし変なところがあったら、どうぞ倉田先生にクレームを」と、笑わせてくれた。

倉田道場で空手を6年間学んだという杜クン。「空手から学んだ精神を観客と楽しみたかった」と、なんか小難しいことも言っていた。また「日本映画が好き。昔から日本映画は何を観てもきれいだと感じる」とも。

「おい、居眠りすんなよ! 俺も眠いねん!」と言ったかどうか(笑)

「日本映画を撮る」という心意気やよし。細部にわたって日本文化を研究したプロダクション・デザイナーの張蚊も素晴らしい仕事をした。鄧麗欣(ステフィー・タン)他、俳優陣も熱演した。言う事ないじゃないか、万々歳!といきたいところだが、素直に「スポ根香港映画ですよ~」としておけば、★の数があと1つ増えたのに…。
それと、平川真理が女格闘家との血戦で血まみれになりながら、何度も立ち上がって遂に逆転勝利を果たしてからの「その後」の処理が、駆け足すぎて、まるで早送りヴューを観ているようで、「あらら…」って感じになってしまったのが、極めて残念。ここのやり方がもう少し丁寧だったら、それこそ★5つやったのになぁ…。杜クン、これは次の課題ってことで、楽しみにしとくわな。
あ、それから…。何故小生が彼を「杜クン」と呼ぶかは、『ご飯だ!』のエントリに詳しく記しているので、興味があれば見てネ。

【萬眾期待 – 《空手道》(The Empty Hands) 正式預告片 11月2日上映】

(平成30年3月17日 ABCホール)





1件のコメント

コメントを残す