【睇戲】臨時決鬥

<パッと見て「賀歳片」とわかるビジュアル。おまけに『九龍城寨』のあの人もこの人も出演しているから、一層目を引くね ©『臨時決鬥』Facebook>


※本稿にはネタバレを含みます※

超久々、1年ぶりの映画鑑賞だ。

その顛末については、昨年のアジアン映画祭『看我今天怎麼說(邦:私たちの話し方)で詳細を記しているので、そちらをご笑覧願いたいとして、やはり人間というのは、適度に歌舞音曲、娯楽道楽に接していないとあかんなぁと痛感した。それもテレビや配信ではダメなのだ。ナマでないとダメなのだ。やっぱ、映画館はいいねぇ!小生入れて、観客4人やったけど(笑)。それでいいのか?寨民各位よ!

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

臨時決鬥 邦題:ヒット・エンド・ファン!臨時決闘

港題『臨時決鬥』 英題『Hit N Fun』
邦題『ヒット・エンド・ファン!臨時決闘』
公開年:2025年 製作地:香港 言語:広東語
上映時間:108分
評価:★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):麥啟光(アルバート・マック)
編劇(脚本):麥啟光、凌浩然(リンク・リン)、劉小慧(ジュリー・ラウ)
監製(プロデューサー):張潔妮(キニー・チョン)
摄影指導(撮影監督):劉子健(リック・ラウ)、呂紀澄(バギオ・ルイ)
剪輯(編集):鄭偉麟(アラン・チェン)
造型形總(メイクプロデューサー):文念中(マン・リムチョン)
服装指導(衣裳):郭妍慧(グォ・インワイ)
美術指導(アートプロデューサー):霍佩詩(セシ・フォク)
動作指導(アクション指導):梁博恩(トミー・リョン)、陳俊峰(MJチャン・チョンフォン)

原創歌曲(主題歌):《Pick Me Up》作曲、填詞、編曲、監製/蔡皓(ジョニー・チョイ) 主唱/胡子彤(トニー・ウー)

領銜主演(主演):古天樂(ルイス・クー)、梁詠琪(ジジ・リョン)、王丹妮(ルイーズ・ウォン)
主演(出演):周秀娜(クリッシー・チャウ)、胡子彤(トニー・ウー)、張文傑(ジャーマン・チョン)、陳湛文(チャン・チャームマン)、楊詩敏(ハリエット・ヨン)
、伍允龍(フィリップ・ン)、喬靖夫(ジョセフ・ラウ)、王尹菁(ウォン・ワンチン)、羅永昌(ヴィンセント ロー)、王頌茵(キャシー・ウォン)、陳獻略(ヘンリー・チャン)、符家浚(カルバート・フー)、陳慧敏(ビビアン・チャン)、吳梓熙(ドニー・ウー)
特別介紹(特別紹介):陳楨怡(セリナ・ハー
ト)

【あらすじ】

かつてマカオのムエタイ界を制した伝説の拳王、鍾磊(チョン・ロイ) は、自ら創設した「鍾磊舍(鍾磊ジム)」を営みながら、妻で元女優の嘉莉(ガーレイ)、娘の意(イー)と暮らしている。一方、広告業界で成功を収めるキャリアウーマンの雪(シュー)は、恋人の丹尼爾(ダニエル)がムエタイ女子チャンピオンの雅雲(ガーワン)と浮気していることを知り、怒りに任せて雅雲に対戦を申し込む。雅雲を倒すため鍾磊ジムの門を叩いた雪は、過酷なトレーニングと人々との出会いを通して、闘うことの本当の意味に気づいていく。やがて鍾磊も、信念の違いから袂を分かった元弟子、偉斌(ワイバン)との対決に挑むことに。それぞれの思いを胸に、“臨時決闘”のゴングが鳴る―!

宣伝素材を見れば一目瞭然。典型的な「賀歳片(旧正月映画)」。賀歳片の基本路線としては「オールスター総出演!」で、ストーリーは二の次三の次、娯楽の王道であればそれでよし!ということで、大体はドタバタ喜劇が主流。本作の謳い文句は「『九龍城寨之圍城(邦:九龍トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』のメンバー再結集!」。いまだ冷めやらぬ『九龍城寨』熱を前面に打ち出す。当分は香港映画も『九龍城寨』って言ってれば、日本で公開されるね(笑)。

これがいいんだろ?寨民の皆さんは(笑) ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

監督は『臨時劫案(邦:臨時強盗)』の麥啟光(アルバート・マック)。こちらは一昨年末の「香港映画祭」で観た2024年の「賀歳片」。監督が同じでどちらも「臨時」と付き、英題も『Rob N Roll』と『Hit N Fun』で、一見すると続き物のようだが、まったく別物。しかし題名の付け方が洒落ているね。

小生的にはいい加減、古天樂(ルイス・クー)は見飽きているので、誰に注目しようかと言う所で、梁詠琪(ジジ・リョン)がいた! 古天樂演じる鍾磊の嫁さんで元芸能人の嘉莉(ガーレイ)を演じる。二人の娘役には、『九龍城寨』で魚蛋妹を好演した王尹菁(ウォン・ワンチン)。なんとも寨民の心を揺さぶるキャスティングである。ちなみに、古天樂とジジの共演は、2014年の『香港仔(邦:アバディーン)』以来とか。2015年の大阪アジアン映画祭で観たけど、とてもいい映画だった。ほぉ~あれ以来か…。賀歳片での共演となると、2002年の『嚦咕嚦咕新年財(邦:アンディ・ラウの麻雀大将)』以来になると、Wikiさんの曰く。

いい親子さんでした ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

スポ根とコメディをいい塩加減で作っており、途中でダレたり睡魔に襲われることもなく、108分を堪能できた。なので、終了と同時に厠所に走ったのは言うまでもない(笑)。

観光団?の一団を引率して「鍾磊舍(鍾磊ジム)」へ案内する胡子彤(トニー・ウー)演じる高秋。ジムでトレーニングするのは老人たち。ボディに一撃食らった婆さんの口からたっぷりの唾液をまき散らしながら入れ歯が飛び出る。これを見事キャッチする鍾磊。「おお!この技は!」。そう、いきなりの、あの「龍捲風」のパロディシーン。観客4人ではまったく反応なしだが、恐らく4人の観客は胸の内で爆笑と拍手喝采のシーンだったろう(笑)。これを香港の映画館で観たら、どれだけ楽しいだろうか…。そう思うシーンが随所にあった。

序盤に恋人の奪い合いで雪(シュー 演:王丹妮/ルイーズ・ウォン)と雅雲(ガーワン 演:周秀娜/クリッシー・チャウ)が、雅雲の部屋で激しい戦いを繰り広げるシーンは中々の見もの。これは相当訓練したねぇ。動作指導の陳俊峰(MJチャン・チョンフォン)の腕の見せ所。しかし、雪(シュー)となっているけど、たしか「林雪」って言ってたよな…。「林雪」って(笑)。香港の観客にウケるツボを押さえている。監督、上手いなぁ。

広告業界のキャリアウーマン、林雪を演じる王丹妮は、『梅艷芳』で主人公の梅艷芳を演じ、映画デビュー。出演するたびに役の幅を広げている期待株 ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.
対峙する二人が激しい「殺視線」を飛ばし合う。マジで火花が散りそう! 右は周秀娜(クリッシー・チャウ)演じる雅雲 ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

ぶん投げる、蹴飛ばす、打撃技の応酬と凄まじい女の闘いが繰り広げられたが、結局はチャンピオンの雅雲にコテンパンにやられてしまう林雪。挙句には駆けつけた二股疑惑野郎、「電動メガネ亀」の丹尼爾(ダニエル 演:陳湛文/チャン・チャームマン)は雅雲を労わる…。ムカーっときた林雪は鍾磊舍の門をたたき、決着付けてやる!と燃えるのだが…。

この勝ち誇った雅雲の表情が憎そいね。周秀娜のこういう勝気な表情は小生好み(笑)。しかし、この男、奪い合いするような奴か?ww ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

『九龍城寨』のメンバーを追ってみよう。

まずは張文傑(ジャーマン・チョン)演じる偉斌(ワイバン)。鍾磊の元・弟子。鍾磊の旧態依然としたジムの運営方針に愛想をつかし、自ら近代的なジムを立ち上げて、金儲け主義に走る。雅雲のトレーナーでもある。一見、師匠とは完全に袂を分かったようで、やはり師匠や鍾磊舎、さらには連戦連敗が続き、試合で負傷して入院した弟弟子の高秋のことも気になる。高秋の見舞いに訪れた偉斌は、鍾磊に激しく詰め寄り…。師である鍾磊を未だに敬う気持ちと、乗り越えねばならない壁であり山である鍾磊に対する複雑な心境が交錯する偉斌の胸の内…。これもまた、本作の見どころの一つではある。が、いかんせん、スポットは若いねーちゃんの戦いに当たっているのは、仕方ないところか…。

鍾磊にメンチを切る偉斌。その胸の内は複雑だ

住み込みの弟子、高秋を演じた胡子彤(トニー・ウー)は好演ぶりが光った。高秋というのもいい役回り。37連敗だっけ…。とにかく負け続けてもまたリングに立つ彼に林雪は、そのわけを聞く。「勝ち負けじゃない」と言う答えに、雅雲との戦いにとにかく勝つことしか頭になかった林雪の心にも変化が生じる。この辺はすごく「スポ根もの」やってるなぁという印象。そして次の試合でもまた高秋は敗れた。壮絶なノックダウンだった。しっかし、あの負け方でよく死ななかったなぁと思う。まあ、賀歳片ではめったに人は死なないけど(笑)。

最初は互角の戦いだったんだが、ラウンドが進むに連れて、急激にスタミナが切れてしまい…

変わった役どころで登場したのは、『九龍城寨』で狂気の王九を演じた伍允龍(フィリップ・ン)。鍾磊の弟子ではあるが、今はタイのパタヤでオカマさんやってる。その名は、王九ならぬ王十(笑)。師父の誕生日を間違えて、バースデーケーキを持って突如現れる。伍允龍はせっかくアクションのスゴ技の持ち主なのに、この扱いはないわなぁ~。一瞬だけどジムのリングで師と乱取りやっていたが、あまりアクションは得意でない古天樂を引っ張てる?という感じだったが、どうですかね?

そうそう、王九と言えば硬氣功による「硬化!」だけど、林雪に稽古つける鍾磊が「硬化しろ!」とか言ってたシーンもあったな。これもまた『九龍城寨』をパロってるセリフで爆笑したいシーンだった。

広東語のオネエ言葉で師父に迫る王十ww ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

『九龍城寨』がらみでは、こんな人も。

城寨では、牛刀振り回していた大排檔「阿七冰室」のおやっさん、王七を演じていた喬靖夫(ジョセフ・ラウ)。本作では、鍾磊舎を買いたたく不動産屋の社長、喬夫という役で出演。

その娘、鍾意役の王尹菁(ウォン・ワンチン)、最初の方でも触れたがあの魚蛋妹だった子だ。本作でも、元女優だからか、若干浮世離れしたところもある母親とは違って、しっかり者の娘を演じる。そのしっかり具合がなんともカワユイ。

しかしまあ、大きくなったもんだねぇと、しばらくぶりに見るお隣さんの孫さんでも見る目で見てしまう(笑) ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

そして小生的にはやっぱり梁詠琪(ジジ・リョン)ですな。

ジジ演じる嘉莉に、久々に藝人(香港ではタレント全般を藝人と呼ぶ)としての仕事でCM撮影が入る。嘉莉のマネージャーにして、林雪の叔母でもある林碧珠(演:楊詩敏/ハリエット・ヨン)を通じての仕事だが、現場で林雪とぶつかってしまう。どうしても若い売れっ子時代の自分を忘れられないのだ。「ああ、ジジもそんな役をするようになったか…」と、歳月の流れを痛感してしまう小生…。そんな嘉莉にアクション映画主役の話が舞い込む!林雪と雅雲の衝突を収めようとする姿がSNSで拡散したのがきっかけだった。林雪とともに稽古に励む嘉莉だったが…。

林雪にパンチを見舞う嘉莉。ジジは年齢は重ねても、プロポーションは相変わらずいい。だからめっちゃ細かったけどw ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

結局、何の役も付かずで、めっちゃ落ち込む嘉莉だが、タダでは転ばなかった。「インフルエンサー」として通販動画を開始したのだ。これが案外好評で、再び映画出演の話が来る。今度は母親役だが、もう過去の栄光に引きずられることなく、快諾する。食卓で台本を読む嘉莉。タイトルが『九龍城寨之圍城』を文字っていて笑ってしまうし、読み合わせを旦那に頼んだところ、鍾磊が言ったのは…。いや~、ここ大爆笑のはずなんだけど、いかんせん、観客4人では爆笑できないよな(笑)。香港の映画館で是非とも香港市民とともに大爆笑したいセリフだった。

通販動画に活路を見出すも、売れ行き以上に自分のフォロワー数が気になるw ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.
楊詩敏(ハリエット・ヨン)の存在は大きかった ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

嘉莉のマネージャーにして、林雪の叔母でもある林碧珠を演じた楊詩敏(ハリエット・ヨン)は、コミカルな役回りだが、結構芸達者だなと。初めて観る顔だと思いきや、小生がこれまで観た作品に割と出演しており、何度もお目にかかっているはずなのに、ゴメン!思い出せない。今後、注意いたします!

さあ、そして迎えた「決鬥」の日。リングで向き合うは、林雪と雅雲。隣では、ロープで小さな円を作り、やはり向き合う鍾磊と偉斌。ガラス窓越しに二つの戦いを見守るのは、嘉莉と鍾意の母子、林雪のアシスタント、ビンゴ(演:王頌茵/キャシー・ウォン)とリンゴ(演:陳獻略/ヘンリー・チャン)、そして「電動メガネ亀」こと丹尼爾(ダニエル)。この二股野郎、よく来れたもんだねぇ。お前が原因なんやで、わかってる? 

いよいよ高秋が決戦の幕開けを告げるゴングを鳴らす。勝敗はいずれに!

いやまあこの対決は、なかなかのもんでしたねぇ! 替身(スタント)使ってないと見えたが、どうだったんでしょう ©2025 Ovation Entertainment Group Limited. One Cool Film Production Limited. All Rights Reserved.

と、この先は映画を観てお確かめのほどを(笑)。 

「ここまで読ませて、そりゃないやろ!」とお怒りの向きもあると思うが、最近は劇場公開終わると、すぐにネット配信始まって、それを待ってる人も多いので、あまり最後までネタバラシできないからね(笑)。

まあ、あれですよ。厳しい鍛錬、稽古はもちろん勝負に勝つためではあるけど、それを通じて勝ち負け以上のものがあることに気づいて行く…。そんな過程を描いた作品、ってところかね、多分。個人的には、ジジの元気なところを観られてよかった!という映画でした(笑)。

エンディングは、一門で卓を囲んで「撈起(ローヘイ)!」。これ、シンガポールの風習だと思ってたし、香港在住中は一度も出くわしたことなかったけど、香港やマカオでもやるようになったのかね? それともたまたま出くわさなかっただけ? まあどっちでもええけど(笑)。

ちなみに、この情報もWikiの曰くだけど、この映画、最初は旧正月映画で企画されたものではなかったが、準備段階で香港の旧正月映画のスケジュールが空いていたため、急遽旧正月映画に変更したのだそう。撮影期間もほぼ1か月。よくここまでの作品に仕上げたなあと感心。

この先も香港映画が色々公開されるようなので、ぼちぼちと映画館通いを再開しましょうかね…。

§こっちも読んでね§

(令和8年4月21日 kino cinéma 心斎橋)

 

コメントを残す