小学生低学年の頃、日本史の漫画シリーズを毎月買ってもらってた時期があった。今もその手のシリーズは根強い人気があるようで、夏休みなどによく見かけるの。あの頃(50年ほど昔ww)とは随分漫画のタッチも変わっているが(笑)。
興味のあった時代の一つが、日華事変(日中戦争を当時はそう呼んでいた)あたりの日中関係。で、いかにも中国人の名前!って感じの張作霖というのが気になって仕方なかった。なんででしょうかねぇ…。と言いながら、子供向けの漫画日本史では、せいぜい「満洲某重大事件」で列車ごと爆殺されちゃった人、くらいしかわからない。その当時はそれでよかったんだが、やがて中学、高校と学習内容が詳しくなっていくにつれて、張作霖だの袁世凱だの軍閥だの馬賊だの義和団だのと、辛亥革命以降の混沌とした大陸の情勢に対する興味が高まってゆく。もっとも、軍閥とか馬賊という言葉に、何と言うか、一種の「ロマン」のようなものを感じると言うか…。なんかそんな感じ。
張作霖や袁世凱、清朝末期から辛亥革命後の大陸を書いた本は山のようにあるが、「新書」というお手軽な体裁の本をまずは読んでみようというわけで、澁谷由里による『張作霖─満洲の覇者、未完の「愛国」』 を手に取った。しかし、興味を持ってから何十年かかってんねん、という厳しいご指摘は甘んじて受けるとして、読んでみようという心意気を買ってくれないか(笑)。
※まだ「中華民国」も「中華人民共和国」も成立していない時代についても述べてい箇所があるため、「支那」と「中国」の表記が混在しています。
『張作霖─満洲の覇者、未完の「愛国」』 澁谷 由里
岩波新書 ¥1,034
2026年2月20日 第1刷発行
令和8年4月24日読了
※価格は令和8年4月27日時点税込
満鉄の招きで旅行中、奉天駅上の大和ホテルに宿泊していた与謝野鉄幹、晶子夫妻。奉天駅の一駅先の皇姑屯駅付近で起きた満洲某重大事件。いやー、歴史って面白いなと、すでに「はじめに」から惹きつけられる。知ってる人は知ってたと思うけど、小生はこれは初めて知ったの史実。張作霖爆殺事件の目と鼻の先に与謝野鉄幹と晶子がいたとは。1928(民国17、昭和3)年6月4日早朝のこと。奇しくも、天安門事件と同じ「6月4日」というのも、偶然とは言え、因縁のようなものを感じる。これまた「これだから歴史は面白い」と思わざるを得ない。
本書は「はじめに」で張作霖の死亡を取り上げ、さらに本文の「序章」で爆殺現場の状況や事件に至る経緯などを述べた上で、その生涯をひもといてゆくという形になっている。なので、一旦全部を読み切った後に、もう一度冒頭部分を読み直すと、彼の生涯の「始まり」から「終わり」までを時代順に読み切ったことになる。「新書」というのは、スイスイ読めてわかりやすいものと思っているが、こと岩波と中公はひと癖もふた癖もあって、あれこれと思考を巡らせながら読み進む場合が往々にしてある。本書などはその典型だろう。著者は「新書は学生が重要な読者層」と書いているけど、本書を理解する学生は相当お賢い学生たちなんだろうなと思う。
張作霖は1875年3月19日(光緒元年2月12日)、現在の遼寧省の寒村で生まれる。光緒帝は清の第11代皇帝で、「ラストエンペラー」となる宣統帝溥儀の先帝であることから、支那の混沌の時代が始まろうとしていた時期に生まれた。また「満洲」という地に生まれたのが、彼のその後の「愛郷」の精神の源流となっている。
実に様々な人物が登場するので、覚えるのも一苦労だったのだが、厄介なことに、消えたと思っていた人物がその後、二度も三度も、いやそれ以上に登場し、その都度、ページを逆戻りして「ああ、こいつね」などという作業の繰り返しで、もう途中からはその都度「ご新規さん」として読み進めた。でないと、一向に読み終わらない(笑)。日本の戦国時代の歴史書も大概なものだが、それを超越するスケールで時代が動いていたのがわかる。
小生の記憶力の衰退も問題かもしれないが、いやそれにしても、登場しては消え、消えたと思っていたらまた現れ、今度こそ消えたと思ったら「まだ、そんなとこで燻ってたんかい!」という感じで…。もう何十人もの人物がこの繰り返し。それほどに、多数の人物を巻き込み、あるいは巻き込まれしたのが、彼の人生でもあった。
なので、タイトルが『張作霖』であっても、決して張作霖個人の生涯を記録した本ではなく、張作霖を中心とした清朝終末期から爆殺事件に至るまでの中国史になっている。それ故に、初めて知ることや知らなかった人物を知ることができ、また一層、この時代への興味が増した。
本書を読み終えて思ったのは、「歴史にIFはない」と言うが、あえてそこを考えてみて、「もし、日本が張作霖を殺害せず、もう少し彼とうまくやる方策を模索してたら、その後の日支(日中)の関係はどうなっていただろうか」ということ。結局は、満洲を維持したい日本、とりわけ関東軍にとっては目障りな存在だったため、かくのごとき結末を迎えてしまった。最初に記した「愛郷」ゆえの結末だったのだろうか…。などなど、アホはアホなりに、このややこしい本を読んで考えてみたりしたという次第だ。
ちなみに、「関東軍」はなぜ関東軍という呼称なのか。「そんなことも今まで知らずに生きてきたのか、お前は!」と叱られそうだけど、本書で初めて知った。知らいないものは仕方ない(笑)。ま、そんな塩梅で「馬賊」や「軍閥」という響きにロマンを感じた、まことにけったいな少年は、還暦を過ぎてようやくその片鱗に触れることができたという、そんな一冊だった。
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同じ著者の本だが、こっちの内容にも興味が…。 |
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。

