【睇戲】『堕落花』(港題=墮落花)<日本プレミア上映>

第15回大阪アジアン映画祭

大阪アジアン映画祭最終日の二本目を観るわけだが、一本目の終演から約30分の間に、飯食って出すものも出して、再びスクリーンに向き合うことになる。ここで大きな問題は「睡魔」との格闘である。どうか、睡魔がやって来ないようなビビッドな内容であってほしい。さてさて、いかに…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2020》
堕落花 題=墮落花 <日本プレミア上映>

港題『墮落花』
英題『The Fallen』
邦題『堕落花』
開年:2019年 製作地:香港
言語:広東語
香港電影分級制度本片屬於第Ⅲ級,18歲以上人士收看(=18禁)
評価:★★
導演(監督):李卓斌(リー・チョクバン)
領銜主演(主演):溫碧霞(アイリーン・ワン)、關智斌(ケニー・クァン)、陳漢娜(ハンナ・チャン)、艾迪(エディー・チャン)、陳煒(アリス・チャン)
主演(出演):沈卓盈(ジェス・サム)、郭奕芯(アシーナ・クォッ)、陳穎欣(ヤニー・チャン)、李任燊(カイル・リー)、莊端兒(ゼニア・チョン)
特別演出(特別出演):黃錦燊(メルヴィン・ウォン)
友情客串:關寶慧(エミリー・クワン)

昨年の大阪アジアン映画祭で上映された、衝撃の監督デビュー作『G殺』から1年。今年も李卓斌(リー・チョクバン)監督の最新作にして、デビュー2作目『堕落花』が上映された。なかなか刺激の強そうな内容を想像させるタイトル、そしてポスター。『G殺』は「すごい新人監督がでてきたもんだ!」とびっくらこいたが、同時に「もうちょっと、わかりやすい映画作ってくれへんかな」とも感じた。その思いは、今回以上に強まった。

【あらすじ】

ドン(演:黃錦燊/メルヴィン・ウォン)の葬儀に長女レイン(演:溫碧霞/アイリーン・ワン)が現れる。ドンの養子ウェイヴ(演:關智斌/ケニー・クァン)とドンの長年のビジネスパートナーであったファイア(演:艾迪/エディー・チャン)が覚醒剤ビジネスの相続をめぐって対立を始める。両陣営を上手く渡り歩き、どちらの味方なのか謎深いレインだが、その実は麻薬捜査官のスパイなのだった。自身が覚醒剤アディクトであるレインに見えているものは現実なのか幻覚なのか……。<引用:第15回大阪アジアン映画祭「堕落花」作品解説

「テーマは何なんでしょうかね?」と…。何を、だれを、どういう観点から観るのが面白いのか、最後までわからなかった。「お前が鈍感なんや」と言われたら、そうなのかもしれないけど、それが先述の「もうちょっと、わかりやすい映画作ってくれへんかな」ということだ。手短に言うと「小難しい」のだ。ホント、最近の香港映画はこの手のものが多くて、どうしたもんだか…。特に、大阪アジアン映画祭はじめ、多くのナントカ映画祭で上映される香港作品はその傾向が強い。まあ、気持ちもわからんではないけど。そういう意味でも、さきほど観た『ギャングとオスカー、そして生ける屍』の方が、よっぽど香港映画してる。

愚痴はさておき。

溫碧霞(アイリーン・ワン)なんていう、小生とほとんど歳の変わらぬ53歳のおばちゃんが主演でどうなんよ、と思って臨んだ本作だが、けっこう厳しかったね…。まあでも、どこまでが現実でどこからが幻覚なのか、という薬物依存の世界をゆらゆら蠢く精神状態を描くという点では、なるほどの人選だったのかもしれない。そういう怪しさは伝わってはきた。とは言え…。ってのが偽らざるところ。

コンテナに囲まれた貨物船上と思しき場所での、覚醒剤界のドン(みんなは「先生」と呼んでいた)の葬儀で勃発した跡目争いを見て、「お!黒社会の泥仕合が始まるのか!」と、一瞬心が躍ったが、小生が期待したような80年代後半から90年代初頭の「ノワール」のような展開はなく、なんかもう…。ホンマ、ようわからんわ、この展開、ってな感じで、スクリーンの中で勝手に物語が進んでゆくという感じ。

その「先生」が、黃錦燊(メルヴィン・ウォン)なんていう、非常に懐かしい顔。そりゃもう、90年代にTVBの連続ドラマ『真情』を毎晩楽しみにしていた小生からすれば、「おおお!久しぶりやんけ!」ってなところで、ちょっとうれしかったりもした。

この「先生」、子供たちを集めて「軍事教練学校」みたいなところで育てていたのだが、子供たちが被るガスマスクに、昨今の暴力示威集団のマスクが頭に浮かぶ。意識的にそういうシーンを作ったのかな?さらに、エンディングの防毒マスク集団にも、そういう意図が感じられたが…。やはりこういうのは、作品関係者が上映後に質疑応答する時間がほしいところ。ぜひ聞いてみたいところだが、何度も繰り返すが、それどころではなかった今年の大阪アジアン映画祭。映画を見せてもらえただけでもラッキーという状況だからねぇ…。

「先生」の片腕で、葬儀の場で先生の養子・ウェイヴ(關智斌/ケニー・クァン)に宣戦布告した火叔を演じた艾迪(エディー・チャン)というベテランさんは、今回初めて観た。長い間、芸能界から離れていたが、2015年から復帰しているとのこと。こういういかにも胡散臭い役どころを、胡散臭く演じるベテランは貴重な存在。これからも色んな作品で、胡散臭さをまき散らしていただきたいと思う。

胡散臭さ全開だった艾迪(エディー・チャン)

一方で、アイドルグループBoy’zのメンバーだった關智斌(ケニー・クァン)は、ずいぶんと大人になったなぁと。思えばBoy’zの結成は2003年。17年前だ。ちょうど今と同様に香港はSARSで壊滅的な打撃を受けていた。歳月は流れ、今度は世界中が壊滅的な打撃を受けようとしている。なんだかねぇ…。

陳漢娜(ハンナ・チャン)の演じた餘雪の立ち位置が、いまひとつ不鮮明な感じがしたが、「だれがどこでどう繋がってるねん?」という疑問に答えるべく、『墮落花』のFBには相関図が出ていたので、下記に引用しておく。観てない人には「何のこっちゃ?」やけど、小生にとってはこのブログはあくまで備忘録なんで、あしからず。

結論から言うと、昨年の『G殺』もそうだったけど、李卓斌(リー・チョクバン)はすごい才能の持ち主だと、思った。同時に、才能が有り余るがゆえに、「四歩も五歩も先を行きすぎる」作品を連発しているように思えてしまう。小生のように、李小龍で香港映画と出会い、許三兄弟と成龍でハマり、周潤發でハマり込んでしまい、そこから先に進めていない香港映画マニアには、まったく違う世界の映画を観ているような、ややこしい気分にさせられるばかりである。困った人が出てきたもんだ。<もちろん、いい意味でですョ(笑)。

■第8回シルクロード国際映画祭
「最優秀主演女優賞」受賞=溫碧霞

《墮落花》先導預告出爐!

(令和2年3月15日 ABCホール)



 


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