【睇戲】『男たちの挽歌 2018』(中題=英雄本色2018) <日本プレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
《特別招待作品》

『男たちの挽歌2018』<日本プレミア上映>
(中題=英雄本色2018)

tirasi

さあいよいよ、第13回大阪アジアン映画祭が開幕した。

昨年、一昨年と、オープニングセレモニーに参上し、オープニング作品を観たのだが、今年は韓国作品だったのでパスした。いや別に、韓国映画が嫌いというわけではないのだが、今の時点ではそっちにはまだ興味がないということだ。しかし、こればかりはわからない。ひょんなきっかけで韓国映画にのめりこみ、韓国通いが始まるかもしれない(笑)。ま、いまのところは、その予兆すらない。

今年も、アジアの選りすぐりの作品、最新の話題作などが一挙上映される大阪アジアン映画祭。いつものことながら、「チケットぴあ」の予約開始時には、アクセス殺到でまったくつながらず。初めのころは焦りと絶望感しか無なかったが、最近は心得たもんで、粘り強くアクセスを繰り返し、予定のチケットを全てゲットできた。

今年の小生の第1作目は、中国作品。あの「英雄本色」が21世紀に中国映画として、装いも新たにスクリーンに登場する。これは初っ端からツッコミ甲斐のある作品ではないか(笑)!
「色々とあら探ししてやろう!」と、手ぐすね引きながら上映会場のシネ・リーブル梅田へと向かう。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

105902.71331155_1000X1000中題 『英雄本色2018』
英題
 『A BETTER TOMORROW 2018
邦題 『男たちの挽歌2018』
現地公開年 2018
製作地 中国
言語 標準中国語
評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):丁晟(ディン・シェン)
友情支持(友情協力):成龍(ジャッキー・チェン)、王力宏(ワン・リーホン)、于榮光(ユー・ロングァン)、曽志偉(エリック・ツァン)、韓寒(ハン・ハン)、寧浩(ニン・ハオ)、高暁松(ガオ・シアオソォン)、吳京(ウー・ジン)、張弛

領銜主演(主演):王凱(ワン・カイ)、馬天宇(マー・ティエンユー)、王大陸(ダレン・ワン)
聯合主演(共演):林雪(ラム・シュー)、余皚磊(イー・カイレイ)、呉樾(ウー・ユエ)
演出(出演):李夢(リー・モン)、張藝上、中野裕太

本家の『男たちの挽歌』は、1986年の香港映画。これをきっかけに香港マニアになった人、香港映画ファンになった人、張國榮(レスリー・チャン)や周潤發(チョウ・ユンファ)のファンになった人…と、強烈なインパクトと多大な影響を与えた作品。香港映画といえば、李小龍(ブルース・リー)、成龍(ジャッキー・チェン)、ホイ三兄弟、キョンシーもの、少林寺ものという時代に、香港ノワールという新たなジャンルが確立された作品でもあった。

監督の吳宇森(ジョン・ウー)の名が、一躍世界に広まったのもこの作品がきっかけだった。以降、1990年代半ばまで、香港ノワールの旗手として、周潤發(チョウ・ユンファ)を主演に据えた作品を数多く世に送り出した。その吳宇森が、福山雅治を主役に迎え、大阪を舞台として物語が展開する最新作『追捕(邦・マンハント)』も好調のようで、健在ぶりを示している。

さて、この『男たちの挽歌2018』だが、そんな吳宇森や張國榮、周潤發、狄龍(ティ・ロン)らに、最高の敬意を表して作製されたということで、いたるところに本家への敬意と愛情が満ち溢れている。満ち溢れすぎて、失笑すら起こしてしまうほどで、客席からも何度もさざ波のような笑いが漏れていた。

筋立て自体は、本家とさほどの変わりはない。一方で、日本の密売人(中野裕太)が物語のキーマンの一人となっているあたりに、今の中国一般庶民と日本の距離感を垣間見た気がする。また、もはや映画に欠かせない小道具となったスマホ、携帯電話が効果的に使われているという点も、「2018年度版」を感じさせる。

で、正直に申すと、小生にとっては、やっぱり本家のインパクトが強すぎて、或いは愛が強すぎてか、どうもこちらは素直な気持ちで観ることができなかった。仕方ないことだし、本人たちには申し訳ないのだが、馬天宇(マー・ティエンユー)に張國榮、王大陸(ダレン・ワン)に周潤發、王凱(ワン・カイ)に狄龍、さらには余皚磊(イー・カイレイ)に李子雄(レイ・チーホン)を重ねてしまうから、「そうじゃないだろ~~!」「二丁拳銃の扱いがダサい!」なんて思ってしまう。別物だと割り切ればいいのに…。

別物だと割り切らせてくれないのが、随所に本家の主題歌『當年情』を散りばめたり、爪楊枝を咥えた本家でおなじみの周潤發の仕草が出てきたりという、まさに「満ち溢れすぎる敬意と愛情」。これが最小限に抑えられていれば、もう少し素直に観られたと思うのに、そこ、凄く残念。

個々の出演者では、馬天宇、王大陸、林雪(ラム・シュー)が奮闘していたという印象。とくに馬天宇は、さすが『加油!好男児』(上海のイケメンオーディション番組)の準グランプリ。きれいな顔している。芸の方もなかなかのもので、売り方によっては日本でもいけるんじゃないかと思うが…。林雪は、もってこいの役どころ。

エンドロールで流れた王力宏(ワン・リーホン)の歌も、グッと来るものがあった。

中国映画と言いながら、大陸、香港、台湾の両岸三地と日本のキャストが揃うという、ボーダーレスな作品でもあった。今や、これが当たり前の姿のなのかもしれない。

物語の舞台は、架空の都市名「琴島市」だったが、一目瞭然で青島がロケ地。かつてはドイツの租借地だけあって、欧州風情が漂う街並みを、美しい映像に仕上げていた。ああ、なるほど、「青島」で「琴島」か! 普通話の発音分かる人なら、納得だわな、これ(笑)。

なんやかんや言っても、こんな具合に、小生みたいにつべこべヌカす「香港ノワールバカ」が多いのを承知で、「英雄本色」を新しい形で世に送り出してくれた丁晟(ディン・シェン)監督には、感謝と敬意あるのみだ。

英雄本色2018 最终预告片

(平成30年3月10日 シネ・リーブル梅田)


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