【睇戲】『無言の激昂』(中題=暴裂无声) <中国未公開>

中国映画祭「電影2018」
『無言の激昂』(中題=暴裂无声)

日本初公開の新作中国映画を上映する「日中国交正常化45周年記念 中国映画祭『電影2018』」が、今月、東名阪三都市で開催されている。

昨年12月で、日中両国の国交正常化から45周年となったことを記念し、国際交流基金、公益財団法人ユニジャパン、上海国際影視節有限公司は、上海、深圳、昆明の中国3都市で日本映画上映会を行った。引き続いて日本で開催される「中国映画祭『電影2018』」では、中国劇場未公開作品含む最新の中国映画10本が紹介される。すべて2017年以降の新作で、日本では初公開のものばかり多種多様なジャンルの映画が集結する。

開催中の「大阪アジアン映画祭」とも提携しており、中華電影迷はこの1週間、代休や有給を取る人、ズル休み、仮病が続出ということに(笑)。

小生も毎年この1週間は大忙しの日々であって、残念ながら、この「電影2018」の全作品を観ることは叶わないが、せめて本国で未公開の作品だけは観ておこうというわけで、まず1本目、『無言の激昂』を観てきた。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

中題 『暴裂无声』(繁体『暴裂無聲)
英題 『Wrath of Silence
邦題 『無言の激昂』
製作年 未公開(2018年4月公開予定) 2017年7月27日、青海省西寧市「第11回FIRST青年映展」先行上映
製作地 中国
言語 標準中国語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):忻鈺坤(シン・ユークン)

主演(出演):宋洋(ソン・ヤン)、姜武(チャン・ウー)、袁文康(ユエン・ウェンカン)、譚卓(タン・ジョオ)、王梓塵(ワン・ツィーチェン)

<概要>
寒くてどんよりとした中国北方の冬、鉱山労働者である張保民(チャン・バオミン)の息子が行方不明になってしまった。張はある事故により話すことができない。彼はわが子を捜し求めるうちに、この失踪事件が、違法採掘をし続ける鉱山オーナーと深く関わっていることを突き止める。
破壊された環境、消えた子供、汚れた心、荒野で声なき怒りが広がっている…
(「電影2018」HPより)

朝寝坊して、って言うか、二度寝してしまって、上映開始から10分後に駆け込むという失態。隣席の人、お騒がせして相すみませぬ。

まず最初に、タイトルの「无声=無言の…」というのは、主人公の鉱山夫・張保民(チャン・バオミン)が、口がきけないというところからきているんだということを知る。その「无声」の主人公の激昂の的は何なのかを描く一方、そうなってしまった「事件」の真相を、主人公と共に観客も追いかけてゆくという展開。

飼っていたヤギを散歩に連れて行ったきり、主人公の息子が行方不明になってしまう…。出来る限りの手段を使って、時には激しい暴力に遭いながら、まさに血眼になって息子を探す主人公。その間に見えてくる、鉱山の開発をめぐる大企業オーナーとその手下の横暴な行為…。その大企業の弁護士一家に起きる事件などなど、いくつかの物語が絡み合いながら、主人公の息子はいづこに?と、展開してゆく。それぞれのヤマ場は、二度寝の眠気を覚ますに十分なドキドキ感がある。

最後に「え~!ああ、そうなんや!」という結末を迎えるが、全てを種明かししたわけではない。巧みに「伏線」を散りばめ、最後に「回収」を寸止めして、「無言の激昂」の真相解明を観客の「想像」にゆだねるという手法。でもまあ、結論はわかるよな…。

上映後にゲストとしてステージに上がった忻鈺坤(シン・ユークン)監督は、この点について、「結末がはっきりするより、一人一人が想像をめぐらせる方が映画は面白いでしょう」と語った。小生はこの意見に賛成だが、きっとそうではない人も多いはず。そういう人は消化不良のままシアターを後にするのだろうか…。まあでも、この作品に限れば、消化不良は起こさないとは思うけど。その点では、「観客にゆだねる」と言いながらも、割と親切な結末だったと思う。

質問に丁寧に答えていた忻鈺坤(シン・ユークン)監督。『心迷宮』に続く長編二作目だと言う

延々と続く荒涼とした風景は、物語に絡む人々の心の内を反映しているように見えた。物語の舞台をこのエリアにしたのには、そういう意味があったかもしれないと、勝手に想像を巡らせる(てか、そういうのを質問しなさい!ってハナシですわなw)。

エンドロールを観ていると、これは内蒙古での撮影だったようだ。時折見え隠れしていた近代的な超高層アパートは、包頭(パオトウ)の町並と思われる。小生が認識していた包頭は、砂漠のオアシス的なそれでいてどこかに「中華」を漂わす地方都市というものだったが、いやはや、鄧小平がかつて「国内いたるところに香港を作る」と発言していたらしいのだが、確実にそうなっているようだ。ただ、主人公があの天を衝くアパートメントに移住する日は来ないような気がする…。監督との質疑応答で、お二方の中国人が発言されていたが、「よくぞこのテーマで描いて下さいました」と、感極まっていた様子からして、そんな気がするのだが、果たして…。

さて、引き続き、もう1本重たそうなタイトルの中国映画を観る。その前に、シャシャッと腹ごしらえしておこう…。

(平成30年3月11日 梅田ブルク7)



 


1件のコメント

コメントを残す