【睇戲】『G殺』(港題=G殺)<日本プレミア上映>

第14回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|特集企画《Special Focus on Hong Kong 2019》

G殺
港題=G殺<日本プレミア上映>

今年の大阪アジアン映画祭も、鑑賞予定作品はこの日観る『G殺』を入れて、残り二本。あっという間だ。

何度も申し上げているように、小生、朝が非常に弱い。目覚めていても起き上がれない。悪いことに、残り2作はいずれも10時15分、10時の上映開始。ってことは、小生、8時50分には家を出なければ間に合わない。となると、遅くとも7時ごろに目覚めて、8時に起き上がるという段取りにしないと…。間に合うかな…。大丈夫かえ? 俺(笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

大丈夫。ギリギリ間に合った(笑)。明日もこの調子で(笑)。

港題 『G殺』
英題 『G Affairs』
邦題 『G殺』
公開年 2018年
製作地 香港
言語 広東語
香港電影分級制度本片屬於第Ⅲ級,18歲以上人士收看(=18禁)
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):李卓斌(リー・チョクバン)

演員(出演者):陳漢娜(ハンナ・チャン)、杜汶澤(チャップマン・トー)、林善(ラム・セン)、李任燊(カイル・リー)、陸駿光(アラン・ロク)、黄璐(ホアン・ルー)

さて、朝の早うから、えらい映画観させてもろたわ。ある意味、今映画祭、最大の話題作にして問題作である。なかなかやるなぁ、この監督。「HONG KONG NIGHT」では「どこ部屋の若い衆ですか?」なんて言ってゴメンなさい。あんたはすごい!

<作品解説>

香港の古いアパート、6階G室。チェロ奏者の青年がバッハの無伴奏組曲第1番ト長調(G大調)を奏でる中、互いの肉体を貪り合う男と女。そのあまりにも非日常的な日常を突き破るかのように、突如、室内に転がり込んでくる女性の生首! この猟奇事件をきっかけに、(Gカップではないのに)クラスメートから“G”と揶揄される女子高生、自閉症でゲイ(Gay)の青年、拳銃(Gun)を乱射する悪徳刑事、胃癌(Gastric cancer)に冒された母、中国大陸からやってきた売春婦(広東語の呼称は“雞/Gai”)、Gにまつわる人物の生きざまが交錯し始めるのであった…。
引用:第14回大阪アジアン映画祭HP

上記<作品解説>にあるように、いきなり生首が飛び込んでくるんだけど…。それほどリアルな出来の生首ではなかったけどね(笑)。歌舞伎や文楽で、斬首した首が本人かどうか確かめる「首実検」の首の方が、よっぽどリアルだと思うけど。ま、その状況に、もちろん、チェロの兄ちゃん、ギャー!となって卒倒しちゃう…。こんな始まりを朝10時からよ(笑)。

ああいう古風で、どこか淫靡なビルって多いよな、香港の市街地には。かく申す小生が最初に住んだアパートもあんな感じだった…。街風景は、なんか銅鑼灣(Causeway Bay)と灣仔(Wan Chai)の中間、ちょうど時代廣場(Times Square)あたりが多いように感じたので、終演後のサイン会で、特に確信を持ったシーンのロケ地を監督に聞くと、やはり銅鑼灣一帯だとのことだった。

この後、色んなGが画面に現れては、スピード感いっぱいに、なんとも救い難い物語が展開してゆく。

G CupGUNGayGastric cancer(胃がん)(=鶏。広東語で“がい”、普通話で“じぃ”=娼婦を指す)などなど…。(がい)Gが、小生は一番しっくり来たなぁ。ただそこは、観た人それぞれに感じ入るGがあって、それぞれに登場時人物を主人公として観ていたんだと思う。そういう多面性を感じた作品だった。

「それぞれの主人公」と言っても、GカップでないのにGと言われていじめに遭う女子高生・雨婷(ユーティン)を演じた陳漢娜(ハンナ・チャン)、級友で自閉症のチェロ弾き・傅以泰を演じた林善(ラム・セン)、二人の級友で、アスペルガー症候群、そしてゲイ疑惑のDon仔を演じた李任燊(カイル・リー)、雨婷の継母で大陸娼婦の小梅(シウムイ)を演じた黄璐(ホアン・ルー)、さらにはユーティン)の父親で悪徳刑事を演じた杜汶澤(チャップマン・トー)というメンバーを中心に話は進んでゆく。

しかしまあ、杜クン演じたあんな悪徳刑事、80~90年代の「香港ノワール」で、黒社会と結託する悪い警官以来、ほとんど見かけないだけに、けっこううれしい存在だった。現実の香港の警察官は、悪いやつはいないけど、英領時代のような優秀さは感じないな。良くも悪くも、特区政府の公務員という感じ。

で、小生はどのGが印象に残ったかと言えば、さっきも記したが、すなわち「來港妓女(大陸から来た娼婦)」のシウムイの物語。彼女がとても悲しかったので、彼女の物語として観ていたのである。香港人のみんなは、來港妓女を忌み嫌うけど、ことシウムイについて言えば、「この香港で生きよう」という意志が感じられたのに、あの最期は…。ないわなぁ、切ないわなぁ…。しかし、黄璐(ホアン・ルー)って『推拿(邦題=ブラインドマッサージ)』でも思ったけど、実にエロいよな。

もちろん、若い俳優陣の奮闘は特筆ものだった。特にドン役の李任燊(カイル・リー)は、難しい役どころを見事に演じ切っていた。「生首」の容疑者として、厳しい取り調べを受けるシーンなど、よくここまで役作りができたなと、感心することしきりであった。

Gにまつわる物語が展開する中で、それ自体が、映画冒頭の生首すっ飛んできた事件の「伏線」となるわけで、終盤の一気の「回収」そして、悪徳刑事のあっけない最期へと展開、さらに…。となるわけだが、李卓斌(リー・チョクバン)監督、ただ者ではないなという上手さ。

まあ、小生的には、何分、まだ完全に目覚めていない状態だったので(笑)、「すんません、もうちょっとわかりやすく見せてもらえません?」ってところだったけどな(笑)。それらしく言えば、そのわかりにくさこそが、香港の現実であり、香港の魔力なのかもしれないけど…。

上映後は、李卓斌(リー・チョクバン)監督と、「よろしくない教師」役だった陸駿光(アラン・ロク)を迎えての質疑応答。その、よろしくない教師役について、陸駿光は、「そこはもう、全て挑戦なので。教師も神ではないわけだから。ただ作品中、私のお尻があまり見えていないことが、残念でした(笑)」。だって教え子にフェラチオ教える教師やもん、ケツは見せませんわな(笑)。

じゃ、次は「お尻の見える役」をもらおう!(笑)

さて、観客から「監督は香港の将来をどう見ているか?」という質問。もうねえ、香港からのゲストには必ずそういう質問が出るのよねぇ。もちろん、興味のあることには違いないけど、もっと作品のことを聞こうよ。今観たばかりの映画の監督と出演俳優が、ここに居てるんやで、それは池上何某にでも質問しなさいって。きっと質問者が喜ぶような如才ない答えが来るだろうから(笑)。

で、李監督は「まず、この映画の感想には、暗いというものから癒しを感じるというものまで様々だった」と。そして「特定の印象付けをしないように描いた」とも。あ、ちなみに小生は単純に「小難しい」という感想です(笑)。さらに例えとして、「エンディングに、二人(ユーティンとチェロ弾き君)が飛び降りるわけだが死体がないということに、これからの香港を重ねることもできる。要するに、それぞれが自由に考えてもらえばいい」。だから香港の未来も「あなたたちがどう見るか」だと。ごもっともです。

この作品、観る前からすごく期待していた。で、観たら確かに「わ~!」とは思ったが、香港メディアが超絶賛し、「香港の現代や将来を描いた云々」との評価は、ちょいと違うんじゃないか? とも感じた。何をどう見たら、そういう見方ができるのか、鈍感な小生には一向にわからない(笑)。もちろん、そう見えたのなら、それでいいし、小生は元来がへそ曲がりだから、いつも「そうはいくかい!」という目で観るから、別のことを感じるわけで…。

しかし、Gが付く言葉でストーリーをまとめ、タイトルを『G殺』としたセンスはすごく気に入った。今後に大いに期待が持てる若い監督の出現を、香港映画ファンとして喜びたいと思わせた作品だった。

第25屆香港電影評論學會大獎
「推薦作品賞」受賞
他4部門ノミネート
第二屆MOVIE6全民票選電影大獎
3部門ノミネート(受賞結果待ち)
香港電影我撐場民選大獎2019
2部門ノミネート(受賞結果待ち)
第38屆香港電影金像獎
6部門ノミネート(受賞結果待ち)

今年の金像獎は、『G殺』と『みじめな人』の真っ向激突の様相! これは面白い! こういうのを、CSの映画専門チャンネルのどこかが生放送しないと!

電影《G殺》終極預告片

(平成31年3月16日 ABCホール)



 


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