【六四34周年】王丹性騷擾(王丹セクハラ騒動)

<日本では相変わらず天安門事件の英雄扱いの王丹だが、今や台湾ではセクハラ疑惑の渦中にある。時代は流れているのよ>


六四34周年を前に、テレビだったかネットだったか失念したが、天安門事件の学生指導者の一人、吾爾開希(ウーアルカイシ、ウルケシ)のインタビューを目にした。日本のメディアは、相変わらずの人選で「ちょっとなぁー」と、うんざりした。一体、いつまで吾爾開希だの王丹だので、六四を語らせるんだろうか?まあ、手っ取り早いし、「じゃ、他に誰かいるのかよ?」ってところだろうけど、正直、毎回同じことの繰り返しで、聞き飽きたってもんだ。

で、その聞き飽きた、見飽きた人士の一人、王丹、学生リーダーの一人だった周鋒鎖を中心としたメンツで、六四34周年を前に、米国ニューヨークに「六四紀念館」を開設したというニュースが流れてきた。「六四紀念館」と言えば、香港では2021年に国安法により、閉鎖され、ほとんどの展示物が警察に押収されたので、新たにオープンした「六四紀念館」では、展示物を改めて収集したという。

当時の香港の新聞。奇しくも華字紙は「文滙報」「大公報」という二大左派紙 Ⓒ香港01

さて、台湾では最近、政治関係者のセクハラ疑惑が相次いで浮上しており、「台湾版#MeToo」の風波が吹き荒れている。被害者がFacebookなどSNSで、続々名乗り出ている。政権与党の民進党では複数の疑惑が持ち上がっており、状況次第では来年1月の総統選、立法院選に影響するかもしれない。風波は芸能界、スポーツ界にも拡大しており、人気アイドルなどもやり玉に挙がっている。

最初の疑惑は、5月末に民進党婦女部の元職員が、SNSに告発文を投稿したことから始まる。この元職員は昨年9月、業務委託先の映像会社の関係者に、自動車で移動中、体を触られたと告発。党幹部に相談したが「なぜ逃げなかったのか」と疑われ、適切な対応してもらえなかったという。党執行部は6月2日、謝罪会見を開き、関係者を処分するとの考えを表明。来年の総統選党公認候補の頼清徳主席は、相談窓口の設置や職員研修などの対策を打ち出すなど火消しに躍起である。

そして「台湾版#MeToo」の風波は、王丹にも及ぶ。

6月2日、台湾の政治活動家、李元鈞(またの名を李援軍)が王丹から受けたセクハラ行為を告発した。この告発後、国立清華大学の別の大学院生だった徐豪謙も、王丹のセクハラ行為を告発した。王丹は「告発は政治的動機によるものであり、どれも真実ではない」と述べた。折しも「#MeToo」風波の真っ最中ということもあって、台湾社会で大きな話題となる。李元鈞は7日水曜日午前、台北地方検察庁に「強姦未遂」で告訴状を提出した。同日、米国から台湾に戻った王丹氏は、「司法当局と率直に向き合い、何事も回避しないつもりだ。司法当局が公平に対処し、事件の真実を明らかにすることを願うだけだ」と応じた。

「司法に真実を明らかにしてもらいたい」と余裕の王丹だが… Ⓒ香港01

李元鈞が6月2日に自身のFacebookに投稿した内容によると、9年前の2014年、王丹の助手である謝氏と知り合った李元鈞は、王丹に同年、米国へ招待された。米国滞在中の6月6日、ニューヨーク州フラッシングのホテルの一室で2人きりになったとき、王丹は李元鈞を後ろから抱き締め、ベッドに押し倒し、ズボンのベルトを解こうとした。李元鈞は最近、痔瘻の手術を受けたので、やめてほしいと頼んだ言う。李元鈞はその後、王丹からセクハラジョーク、性行為への口説き、その他のセクハラを受けた。李元鈞は「家庭の事情」を理由に、早々に台湾に戻り、台北市議会議員の林亮君邱威傑にこの件を報告した。投稿で李元鈞は、王丹に公の場で謝罪を求めている。

李元鈞は「最近、多くの政治家が職場でセクハラや虐待に遭っているのを目の当たりにしており、ようやく社会がより積極的に議論し、これらの問題に取り組む姿勢に向けて動き始めていることに非常に安堵している」と述べた。そこで「9年間耐えた末、6月4日の時点でこの件を公表することにした」とも。まあ、「#MeToo」の波に乗って告発したってことかな。とは言え、相手が「六四の象徴」たる王丹だけに、騒ぎは大きくなる。

↑↑↑ 「謝罪を求める」と題した李元鈞による6月2日のFacebook投稿。

同日遅くには、王丹もまたFacebookに返信を投稿。関連する申し立ては事実ではないとし、投稿者は政治的な目的から、六四前夜に告発を選んだのだと思うと述べた。

4日の記者会見で当時の状況を説明する李元鈞。改めて王丹に謝罪を求めた

4日には、李元鈞は台北市議会議員の林亮君と記者会見を開き、「王丹が謝罪しなければ、法的告訴を起こす」と表明。同日夜、王丹は「自分の記憶と依頼人の発言には大きな乖離がある」と述べたが、依頼人の告訴を拒否せず、真実を究明することに同意した。そして7日、李元鈞は王丹を「強姦未遂」で台北地方検察庁に正式に告訴した。

台北地検に告訴状を提出した李元鈞

さらに告発は続く。6月3日、自称「性技巧講師」で著名なコラムニストでもある徐豪謙も、自身のFacebookで声明を発表した。王丹が清華大学で教鞭を執っていた際、私的な夕食会中に右手で腰を撫でたとして非難する内容で、彼は王丹を「セクハラ常習犯」と糾弾した。

↑↑↑ 王丹のセクハラを告発する6月3日の徐豪謙のFacebook投稿。こういう騒ぎの中だからか知らんが、王丹の目つきがスケベ親父そのものに見えるww。

徐豪謙がFacebookに投降した内容は、およそ下記のようなものである。

2010年に精華大学人文社会学部に入学した当時、同学部は王丹を教職に採用し、多くの学生が興奮した。上限60人のクラスだったが、席はが無いほどの盛況で、履修希望者はそれ以上だった。王丹は授業後に、学生寮のラウンジで学生たちと酒を飲んで交流するのが好きで、特に社会的取り組みや政治情勢への洞察に熱心な学生たちとの交流を好み、彼らも王丹を頻繁に訪れるようになった。飲み会の場が、寮のリビングからカラオケボックスに移ったこともあった。

セクハラ被害を受けたその日は、ゲイである徐豪謙の彼氏も来ていて、王丹も二人が付き合っていることは知っていた。それでも、王丹はカラオケで彼氏と徐豪謙の間に座り、ためらうことなく右手を服の中に入れて腰を撫でた。徐豪謙は嫌がらせを受ける不快感以上にとても腹が立ち、なぜ王丹が自分の彼氏の前で手を伸ばして「吃豆腐=セクハラする」という気になったかのかはわからないが、「こんなひどいことをするのが、人々が称賛する学生運動リーダーの王丹なのか!」と腹が立った。

徐豪謙は、王丹はあの時、どんな精神状態だったのか?「今こうしてキーボードをタイプしていても、心臓が激しく鼓動しているのを感じます」と言う。

徐豪謙は投稿の最後に、この投稿の主な目的は、王丹が昔から「セクハラ常習犯」だったことを世の中に知らせることであり、「李元鈞氏が経験したことは軽視されるべきではなく、犯罪は認められるべきである」と強調した。そして「事実は抹消されてはならない」と言う。

徐豪謙が投稿した日、王丹は告発に対する最新の回答を発表した。「告発文と自身の認識・記憶の間には大きな隔たりがある」と述べ、「(1)この筆者が言及したセクハラ行為は全く存在しない。(2)上記は明確に説明した。まだやるべきことがたくさんあるので、しっかりと説明する。(3)私の政治活動はいかなる形でも影響を受けず、今後も前進し続ける」と3つの回答を提示した。

しかし、ネット上を中心に、多くの市民が「回答になってへんがな!」と、納得はしておらず、誠意のある回答を求めている。さて、王丹はどう出るか…。

ちなみに、一連の「王丹疑惑」に関して、国立清華大学人文社会学部では、6月4日に声明を発表した。「在職中に男女平等法違反があった場合は、教育部(文科省に相当)に通報する」と。また国立精華大学としては、「この問題は公共の利益に関わるものであり、多くの人が犠牲になった場合には、学校が率先して調査するつもりである」と、教育部に通知したことを認めた。また同大学は7日、王丹の雇用停止に加え、同大学での8年間の王丹の教職歴を調査し、すべての学生と積極的に連絡を取り、同様の経験がないかどうかを調べ、さらに電話で問い合わせるとの声明も発表した。被害者は率先して学校に連絡するよう求めている。「教育部は、台湾のどの大学も王丹を教職に雇用することを禁止する決定を下すのでは?」との見方もあるが、そうなったら、王丹は台湾にとどまれなくなるだろう…。

事の次第は、こんな感じなんだが、つくづく、「時代は変わった」と感じる事件である。天安門事件の象徴であり、語り部でもある王丹だが、そんな人物でさえ「セクハラ」という疑惑の前では、こうして反感の的になる。王丹だからと言って容赦はないのだ。そもそも、天安門事件当時に生まれてなかったであろう二人の告発者にとって、王丹は「聖域」ではないのだ。いつまでもありがたがっている日本のメディアとは、えらい違いである。要は、長い年月を経て、非常に「胡散臭い」人物になったのだ。

陳水扁政権時から、民進党の庇護の下で台湾で「民主活動家」の地位をほしいままにしてきた王丹だが、「台湾版#MeToo」で民進党への風当たりが強まる中で、民進党に対する世間の圧力を一時的にでも逸らすための「スケープゴート」として、実は民進党に利用されたんじゃないか? とさえ思えるんだが、さて果たして真相や如何に…。


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