【睇戲】『大大ダイエット』(馬題=大大哒)<インターナショナルプレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
特集企画《ニューアクション! サウスイースト》

『大大ダイエット』<インターナショルプレミア上映>
(馬題=大大哒)

重い重い『中英街一号』の後は、口直しにカラッと笑える作品を観て、ざわつく心を落ち着かせよう、というワケでもないが、こちらは「海外初上映」のマレーシア映画。このところ、毎回マレー作品を観ているが、その都度記しているように、多民族多言語国家のマレーシア、映画もまさに多民族多言語でバラエティに富んでいる。こちらは中国語作品。タイトルだけ見ると、劉徳華(アンディ・ラウ)と鄭秀文(サミー・チェン)主演の『ダイエット・ラブ(港・瘦身男女)』を思い出すが、さてさて…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

images中題 (簡)『大大哒』 (繁)『大大噠』
英題 Think Big Big 
邦題 『大大ダイエット』
製作年 2018年
製作地 マレーシア
言語 標準中国語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):周青元(チウ・ケングアン)

主要演員(主なキャスト):林宣妤(セレーヌ・リン)、吕杨(ファビアン・ルー)、温慧茵(ヴィヴィ・ウン)、狄妃(ルビー・ヤップ)、容璇雯(ムーン・ヨン・シュアンウェン)、刘锦绣(ジョアンヌ・ラウ)、甘可琪(ケイ・グレイ)

なかなか楽しく、ちょっぴりほろ苦い作品で、十分堪能できた。ストーリーとしては、ありきたりな展開と言ってしまうと、せっかく来阪した周青元(チウ・ケングアン)監督には、あまりにも申し訳ないのだが、でもやっぱりありきたりな筋立て。なのに、「楽しく、ほろ苦く、堪能できた」のだから、うまく作ったということだろう。きっと同じ内容の映画を日本で日本の俳優使って撮っても、そこそこヒットするんじゃないかと思う。

DS8lpItVQAAC5EGさすが今年の旧正月映画とあって、楽しませるツボを心得ている。テーマパークの着ぐるみ担当やってる超肥満の女性が、ダイエットに成功するまでの道のりを、愉快に描く。これを「愉快」で片づけてしまうと、世の女性から顰蹙食らうかもしれないが、男子目線で観ると、やっぱ愉快なのである。

痩せてゆく段階ごとに、3人の女優が一人の女性を演じているのが面白い。『ダイエット・ラブ』では、劉徳華(アンディ・ラウ)と鄭秀文(サミー・チェン)が、肥満の全身特殊メークで痩せてゆく(原状回復w)という手法だったが、こちらは役者を使い分ける。どっちがいい悪いは「なんともなぁ~」なところだが、小生としては、演じ分けの方がしっくりきた。こっちの方が「劇的痩身」を楽しめる(ほらまた、「楽しめる」なんて言って…)。

痩せる女主人公ムーンの男朋友以外は、ほぼ女性キャスト。これもまた旧正月映画ならではの華やかさというところか。で、この男朋友もいい味出していた。

さて、女主人公ムーン、実は「痩身願望」からダイエットしたわけでなく、ちょっとドジって舞台セットを破壊してしまう。弁償代稼ぎのために応募したのが、ダイエットコンテスト。減量は順調に進み、国民の女神と呼ばれるまでに大変貌を遂げた。が、ここからほろ苦い物語になってゆく。人気者の宿命で、SNSは常に更新せねばならなくなり、気が付いたら、彼女を支えてきてくれた友人たちが去ってしまっていた…。
images (1)SNSに振り回されている現代人への警鐘である。これは胸に響く。上映後、制作のきっかけを周青元(チウ・ケングアン)が語る。
友人や周りの人を見ていると、SNSに振り回されている。つまりは人の目を絶えず気にして、自分を見失っているということ。他人の目を気にして、全ての人を満足させようとするなんて無理なこと。『自分を大切にしましょう』というメッセージを込めた作品」と。そう、この作品からビシビシ伝わってきたのは、まさにこのメッセージ。そこをダイエットという、見てわかりやすいツールを使って伝えたんだろうな。

ところで、「一人を三人が演じて」と記したが、その3人、実は全員素人さんだというからびっくりだ。てっきりマレーシアで有名どころの役者さんたちかと思っていた。一方で男朋友は通しで同じ俳優が演じる。監督さんは「彼はやりにくかったと思う。相手は3人でも一人の人なんで、彼は同じ気持ちで演じなければならないから」と言う。ああ、なるほど、そういう苦労があっただろうな。

IMG_5865-1この作品、出演者が華人ということもあって、一応基本的には標準中国語、俗に言う北京語で会話は成り立っているが、ときに広東語など方言も混在しているように聴こえた。これは小生もシンガポールで経験したのだが、Aさんが標準語でしゃべっても、Bさんは広東語で返事し、Cさんは潮州語でAさんとBさんに相槌を打って、Dさんが閩南語で反論するとか、そういう場面。監督によればマレーシアは、「北と南は閩南語で中部が広東語」だそうな。それでも通じ合っているのだと言うから、シンガポールと同じような雰囲気だな。ただ、いくら多民族多言語国家とは言え、今作のように華人社会、あるいはマレー語社会に特化した作品で、モトは取れるのかなぁ?

普段は、香港、台湾、気が向けば大陸の華語片しか観ないから、たまにシンガポールやマレーシアの華語片を観るとめっちゃ新鮮に感じる。いやもう、ホンマ世界は広いわ。

电影《大大哒》官方预告

(平成30年3月16日 シネ・リーブル梅田)


2件のコメント

コメントを残す