【睇戲】『無敵のドラゴン』(港題=九龍不敗)

大阪アジアン映画祭も終わり、映画の方も一息つこうかなと思っていたら、なんと、我らが陳果(フルーツ・チャン)監督がアクション映画をやっちゃってるじゃないかえ!どういう風の吹き回しだ?誰かにそそのかされたのか?それとも路線変更か?様々な疑念渦巻く『無敵のドラゴン』、これは観なあかんでしょ(笑)。ってわけで、もうそろそろ映画館も自主的に休館するだろうから、さっさと行っとこかと、シネマート心斎橋へ急いだ次第。

無敵のドラゴン 題=九龍不敗

港題『九龍不敗』 英題『Invincible Dragon』
邦題『無敵のドラゴン』
公開年:2019年 製作地:香港 言語:広東語
評価:★★

監製(プロデューサー):陳果(フルーツ・チャン)
導演(監督):陳果
編劇(脚本):陳果
領銜主演(主演):張晉(マックス・チャン)、アンデウソン・シウバ、鄭嘉穎(ケビン・チェン)、劉心悠(アニー・リウ)、鄧麗欣(ステフィー・タン)
主演(出演):周國賢(エンディ・チョウ)、陳鈺芸(ジュジュ・チャン)、吳岱融(ヒューゴ・ン)、李麗珍(ロレッタ・リー)、林雪(ラム・シュー)、吳耀漢(リチャード・ン)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

これまでの陳果(フルーツ・チャン)作品には見られない豪華キャストである。張晉(マックス・チャン)、鄧麗欣(ステフィー・タン)、李麗珍(ロレッタ・リー)、林雪(ラム・シュー)とスター勢ぞろいだし、こういう組み合わせがまた香港映画マニアを喜ばせるものがある。我が青春の李麗珍がすっかりおばさんになってしまっていたのには、愕然とし、歳月の流れの残酷さを見せつけられた思いもしたが…。

警官の衣装のせいもあるかもしれないけど、「あんた、本物の李麗珍なの?」と聞きたくなった(笑)

【あらすじ】

幼い頃に “伝説の九龍”と出会ったことから、肉体に“ドラゴン・タトゥー”を入れた香港警察捜査官ガウ・ロン(=九龍・演:張晉/マックス・チャン)。女性警官を狙った連続殺人事件の捜査に乗り出したガウだったが、犯人に婚約者( =方寧・演:鄧麗欣/ステフィー・タン)を拉致され失意のどん底に突き落とされ、第一線から身を引いた。だがその後、マカオで同じ手口の連続殺人が起き、ガウの止まっていた時間が再び動き出す。かつての部下を集め犯人に宣戦布告したガウは、事件の裏に隠された巨大な陰謀に立ち向かう―!<引用:株式会社twin|配給作品紹介「無敵のドラゴン」>

原題の『九龍不敗』の4文字を見ただけだと、「九龍で一番強いヤツの物語」かと思うも、「いやいや、まさか天下の陳果がそんな80年代みたいな映画撮るはずないよな」と(笑)。キャストに、格闘マニアなら「おおお!」となるアンデウソン・シウバの名前があることからも、そんな前世紀的な映画でないのはわかるし、張晉vsシウバに興味津々となる。そこに鄧麗欣や李麗珍という「きれいどころ」がどう絡んでくるのか?というのも、興味のあるところだったが…。

先に結論を言うと、「陳果先生、もしかしてこの映画、ミスった?」である(笑)。

【甘口評】 LRT(軽鉄)での格闘から目が離せない!

▼最初、CGで龍が出てきてどうなることかと思ったが、そこは張晉(マックス・チャン)主演作。しっかりアクションシーン満載で、香港映画の面白さが詰め込まれている。シウバとのアクションシーン以上に、新界(New Territories)の西エリアを走るLRT(軽鉄)車内での、張晉と女格闘家・陳鈺芸(ジュジュ・チャン)との格闘シーンは、スクリーンに釘付けとなる。電車が脱線転覆してようやく格闘に終止符が打たれたとき、電車が食事中のご家庭に突っ込んでくるという、「ドリフの大爆笑」みたいなフィニッシュもご愛敬。

▼この陳鈺芸もなかなかのアクションを見せる女優だ。芸能界は歌手がスタートということだが、次世代の女性アクション俳優として期待されている。そう言えば『空手道』にも出ていたらしいが、見落としている…。今後も、色々と出演機会が増えるんじゃないだろうか。

▼出番は冒頭のほんの数分間ながら、林雪(ラム・シュー)の曲者役者としての存在感が光る。ああいういかがわしく胡散臭い役は、林雪だからできるというもの。

これは本当の腹なのか?

▼マカオ警察側の捜査官役の鄭嘉穎(ケビン・チェン)も板についたもので、主人公にとっても観客にとってもちょっとウザい役どころを、うまく演じる。これまたハマリ役である。一瞬、志垣太郎と見間違うのだけどね、いつも(笑)。

どうしても志垣太郎に見えてしまい、東京ロマンチカの「あかんたれ~、あかんたれ~」の歌声が聞こえてくる(笑)

▼張晉(マックス・チャン)が主人公・九龍の境遇や心理状態の変化に応じて、その都度、髪型が変わるので、マックス好きの女性にはたまらないだろう(笑)。それにしても、いつ見ても切れの良いアクションを見せる役者である。体の手入れも行き届いているし、演技も悪くはない。今作では「はぐれ刑事」のやさぐれ具合と、アクションシーンでのカッコいい姿をメリハリをつけて好演していた。もっと出演作品が日本で公開されてゆくべき一人だと思う。

▼マカオタワーの外周バルコニーでの格闘も手に汗握るものがあった。小生はあそこを「空中散歩」したことがあるが、同行の高所恐怖症の御仁は、室内にいても足がガタガタ震えていたほどの高所である。マジで現場でアクションしたかどうかはさておき(笑)、マカオタワーの外周バルコニーというのは、観る者を興奮させるシチュエーションとしては、ナイスアイデアだと感じた。

マカオタワーで肉体美を披露する張晉(マックス・チャン)

▼個人的趣味としては、漢方医を演んじた劉心悠(アニー・リウ)を『浮城』以来久々に観られて、うれしかった(笑)。

【辛口評】 で、何をしたかったのか…

▼結局のところ、それに尽きるのだ。陳果は、この映画で一体何をしたかったのか?という疑問だけが残った。決して駄作ではないが、褒められた内容でもない。アクション映画を撮りたかったのか? 刑事ものミステリーを撮りたかったのか? CGを駆使したファンタジーを撮りたかったのか? どれもこれも実に中途半端で、出来上がってみれば平々凡々未満のものになってしまったという感じがしてならない。陳果は満足しているとは思えないが…。とにかく不可解な作品である。

▼シウバの格闘シーンも、シウバ自身がそれほど演技が上手くないことで、なんだかチグハグ感がぬぐえなかったし、「こいつ、映画舐めてないか?」と思うくらい、体も作っていないのが残念だった。

鄧麗欣(ステフィー・タン)の起用法に関しても、疑問と不満が残る。実質1/3しか出ていないのに領銜主演=メーン・キャストに名を連ねている。そこは知名度、人気からしてそれでいいとしても、もっと物語に絡んでいくような起用法はなかったのか?あとの2/3が回想シーンと死人役では、あまりにも勿体ないではないか…。

配給元のtwinは、香港映画にも力を入れてくれる会社だが、時々、こうしたすっとこどっこいな作品を持ってくるので、あちゃーとなってしまう。ま、あちゃーな作品でも香港映画を観られるってのは、とてもありがたいことなんで、これからも期待してますよ!

《九龍不敗》終極足本版預告

さて、いよいよ新型コロナウィルスの感染蔓延が深刻な状況になってきた。本日をもって、しばらくは映画館へ行くのは辛抱しようと思う。SARS時の香港に暮らした身としては、とにもかくにも「自分が感染者だと疑え!」である。となれば、無用な外出は完全NGだ。一日でも早く、何の不安もなく映画館へ、寄席へ、劇場へ行ける日が訪れるためにも、しばらくは辛抱の日々を過ごすとしよう…。我期待明天會更好!

(令和2年3月21日 シネマート心斎橋)


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