【睇戲】『血観音』(台題=血觀音) <日本プレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|特集企画《台湾:電影ルネッサンス2018》

『血観音』<日本プレミア上映>
(台題=血觀音)

tirasi楽しみに待っていた作品。
昨年、大阪アジアン映画祭のオープニングと『ミセスK』の上映に合わせて来日し、「オーサカ Asia スター★アワード」に輝いた、惠英紅(カラ・ワイ)が主演。タイトルがなんかすごいのと、その惠英紅がこの作品で第54回金馬獎の「主演女優賞」を獲得している。昨年観た『ミセスK』は、彼女の本領発揮の功夫アクションだったが、今作はかなり様子が違うようで、彼女の芸域の広さを再確認するにはもってこい。こういう心憎いチョイスをするので、大阪アジアン映画祭は目が離せない。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

eZLfgVdlYjSdWjSSxprb-1891x2700台題 『血觀音』
英題 The Bold, the Corrupt and the Beautiful
邦題 『血観音』
製作年 2017年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語、広東語、日本語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演編劇(監督・脚本):楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)

領銜主演(主演):惠英紅(カラ・ワイ)、吳可熙(ウー・クーシー)、文淇(ヴィッキー・チェン)
特別演出(特別出演):陳莎莉(サリー・チェン)、柯佳嬿(アリス・コー)、秀蘭瑪雅(ショウレン・マヤ)
主演(出演):王月(ムーン・ワン)、陳珮騏(キャロリン・チェン)、溫貞菱(ウェン・チェンリン)、傅子純(ジュン・フー)、應蔚民(イン・ウェイミン)、巫書維(ウー・シューウェイ)

昨年の第54回金馬獎で、8部門にノミネートされ4部門で受賞。2017年台湾映画最大のヒット作と言っていいだろう。昨年の金馬獎シーズンには、台湾各紙の娯楽面は、連日『血觀音』関連のニュースでにぎわっていたので、「これ観てみたいなぁ」と思っていたら、さすが大阪アジアン映画祭、大阪へ持ってきてくれた。

色々と、「ひょえー!」って言いたくなる作品だったが、何と言っても主人公の三女性一家「棠家」の孫娘・棠真を演じた文淇(ヴィッキー・チェン)の恐るべき「目ヂカラ」に「ひょえー!」なのであった。2003年生まれの14歳!これが日本での「デビュー作」となるのだが、おそらく本作を観た人の大半は、この子の「目ヂカラ」と演技力に圧倒されっぱなしだったんじゃないだろうか。少なくとも小生はそうだった。「棠家」母親・棠佘月影を演じた香港のベテラン女優、惠英紅(カラ・ワイ)と対峙しても、まったく引けを取らないのだから、末恐ろしい少女である。そんなわけで、金馬獎では「最優秀助演女優賞」を「最優秀主演女優賞」の惠英紅と「祖母・孫受賞」を果たしている。

狂言回しとして、台湾の伝承芸能のひとつ唸歌の楊秀卿が、「さぁさぁ、これより始まる物語は~」的なオープニングからラストまで、掛け合いをちょいちょいと入れてゆくことで、ミステリアスな雰囲気を常に与え続けている。

表の顔は古物商、裏の顔は台湾政財界闇のフィクサーという「棠家」は、母親・棠佘月影が一家を統率する、一見、強い絆で結束する女性3人に見えるが、絆が強すぎるがゆえに、どこかでバランスを崩すと、一気に崩壊してゆく…、という展開。なにせ裏の顔が裏の顔だけに、その崩壊の影響は多方面に及び、やがて大規模な政治スキャンダルへと発展してゆく。その中でカギを握るのが、さっきからベタほめの文淇(ヴィッキー・チェン)が演じる孫娘・棠真である。彼女と吳可熙(ウー・クーシー)演じる棠寧の真の関係も気になりながら物語を追っかける。

事の成り行きに、ハラハラドキドキではあるのだが、ちょいと長かった。もう10分短かったら★4つだったのにねぇ…。

日本時代の邸宅を使った棠家の豪邸は、今や日本国内でもあまり目にする機会がないような「いかにも」な豪邸。こういう家屋が、台湾に残っていることに驚く。

あと、柯佳嬿(アリス・コー)や溫貞菱(ウェン・チェンリン)といった、ちょっと前はちょうど文淇(ヴィッキー・チェン)のように「末恐ろしい少女が出てきたもんだ」と思っていた子らが、すっかり成長しているのを確認することもできた。いやー、年月の流れの早いことったらもう…。
立法院長夫人を演じた陳莎莉(サリー・チェン)、その厚化粧がまるで国民党主席だった連戦の嫁はんの連方璃にそっくりだったのにはちょっと笑った。

監督の楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)は、何年か前に観た『GF*BF』以来の大阪アジアン映画祭出品。今回はガラッと様相を変えた作風。今回ラインナップ発表時から話題になっていただけに、小生はちょいと肩透かし食らった感があった。ただ、何度も繰り返すが、文淇(ヴィッキー・チェン)というニュースターの登場が、低迷期に入ったように見える台湾映画の未来に一筋の光明を差すような気がした。

【血觀音】HD正式官方預告

(3月13日 シネ・リーブル梅田)



 


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