【睇戲】『どこでもない、ここしかない』<ワールドプレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭
《特別招待作品部門》

『どこでもない、ここしかない』
<ワールドプレミア上映>

こういう「~映画祭」で嬉しいのは、「世界初上映」とか「海外初上映」、「日本初上映」という作品がずらりと並ぶこと。特に「世界初上映」ともなれば、世界中のだれよりも真っ先にその作品を観ることができるのだから、こんな優越感は「~映画祭」だからこそ味わえるというもの。この作品もそのひとつである。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

28468036_10155687540281622_3501762014296591725_n邦題 『どこでもない、ここしかない』
英題 『No Where, Now Here
製作年 2018年
製作地 日本、スロベニア、マケドニア、マレーシア
言語 日本語、トルコ語、スロベニア語
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
監督:林家威(リム・カーワイ)

出演:フェルディ・ルッビジ、ダン、アンニャ・キルミッスイ、アウグストゥス・クルー・スニック

大阪を拠点に活動、ベタな大阪弁を完璧にこなすマレーシア生まれの華人監督、林家威(リム・カーワイ)の出来たてのホヤホヤの1本。「マカオ映画祭」や「香港・マカオインディペンデント映画祭」を大阪などで開催してくれる、「わりといつもそこらにいてる身近な」映画監督である。小生如き一介の映画見物人が、「あ、どうも」と心安く挨拶できる映画監督は、この人くらいで、ハナシも実におもろい。そして頭イイ、良く働く、良く動く。

監督がバルカン半島へ行き、映画を撮っているというのは、ご本人のFBやTwitterを通じて知っていたが、まさかその作品の世界初上映を鑑賞できるとは思ってもみなかった。日ごろの行いが良いと、こういう幸運が巡ってくるのである(笑)。

バルカン半島という、つい数年前までは「ヨーロッパの火薬庫」と称されていた土地を舞台に、どのような映像が撮られているのか? それだけでも興味が湧くのだが、マレー華人、大阪在住の林監督が、この地を訪れて映画を撮った背景に何があるのか? ってことも興味津津。でも、一旦、映画が始まるとそういうあれこれは忘れてしまうんよね、この作品に限らず。

撮影の経緯については、上映後の質疑応答で監督が答えている。「2年前、シベリア鉄道でロシアに行き、ロシア経由で東欧を周って、最後にたどり着いた場所がバルカン半島。意外と安全で人も優しいんで、ホントびっくりでした」と。鉄おたとしては、こんな羨ましい旅はないな…。「そこでいろんな人と出会った中の一人が、今回の主役のフェルディです」。実際にスロベニアのリュブリャナと言う土地でゲストハウスを経営しており、監督もそこに滞在して友だちになったのだと言う。
映画では、このフェルディが観光、不動産のブームで金持ちになって気が大きくなったのか、イスラムの戒律に背き、女性に次々とちょっかいを出してゆく。耐え切れなくなった妻・ヌーダンは家を出る…。

バブルに浮かれた男に、嫌気がさした嫁はんが逃げてしまう、というどこにでもあるような話だが、この物語に、見知らぬバルカン半島の風景、同地ではマイノリティであるトルコ人、イスラム教…などのいくつかの「そこに行かねば見えない事柄」が味付けされ、濃厚な仕上がりになっていたことに、ラストが近づくにつれて気づいててゆく。脚本なしで次々と映像を撮っていた作品だからこその、この味付けなのかもしれない。

こちらが林家威(リム・カーワイ)監督

スタッフも登場。左から録音担当・山下彩、音楽担当「Lantan」の二人、音楽プロデューサー・渡邊崇。監督は「映画自体は、あちこち行って作っていますが、仕上げは関西で地道にやってるんです。音楽スタッフも関西やから、『関西発の映画』です!」と、締めの言葉。リム監督には、これからも大阪を拠点に、映画作りを続けてほしいし、またいつか、香港のインディ作品を紹介する場も作ってもらいたいなと思っている。

(平成30年3月13日 シネ・リーブル梅田)




1件のコメント

コメントを残す