【睇戲】「TAIWAN NIGHT」&『私を月に連れてって』(台題=帶我去月球)<日本プレミア上映>

第13回大阪アジアン映画祭 コンペティション部門
TAIWAN NIGHT|特集企画《台湾:電影ルネッサンス2018》

昨年の大阪アジアン映画祭では開催されなかった「TAIWAN NIGHT」。それにより、台湾映画の低迷期を思い知ることになった。実際、3作品の上映にとどまった。まあそれでも、魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督が最新作を持って来てくれた上、サイン会も開いてくれたし、『海の彼方』という感動のドキュメントも観ることができたので、そこは「こらえて下され」ってところだった。

今年は打って変わって、短編、アニメ含めて6作品が揃い、5本を観ることができた。そしてもちろん、「TAIWAN NIGHT」も開催された。めでたし、めでたし。

TAIWAN NIGHT

「TAIWAN NIGHT」での上映作『私を月に連れてって』の前に、セレモニーが開催された。会場のABCホールは、早々にチケット完売となる。にしては、結構前の方の席が取れたのでよかったよかった。

まずは、台北駐日経済文化代表処顧問兼台湾文化センター長の朱文清氏が登場。「近年、台湾映画はテーマが多様化。台湾テイストがますます濃厚になり、アニメも充実してきた。今回出品の台湾6作品を通して、台湾社会の自由と多元化を感じていただけると思う」と述べた。


続いてゲスト登場。重鎮から若手、金馬奬受賞作からインディ作品、アニメ作品まで、朱氏の言葉通り「自由と多元化」を感じさせるメンバーが並ぶ。

『血観音』楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)監督
『川流の島』郭斯恆(グオ・シーハン)プロデューサー
『傷心わんこ』張毅(チャン・イー)監督、楊惠姍(ロレッタ・ヤン)プロデューサー、焦雄屏(ペギー・チャオ)プロデューサー
『パープルな日々』主演の斉川蘭子
『私を月に連れてって』謝駿毅(シェ・チュンイー)監督

左から、朱文清氏、楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)監督、郭斯恆(グオ・シーハン)プロデューサー、張毅(チャン・イー)監督、楊惠姍(ロレッタ・ヤン)プロデューサー、焦雄屏(ペギー・チャオ)プロデューサー、斉川蘭子、謝駿毅(シェ・チュンイー)監督。さすが元・大女優の楊惠姍は存在感抜群だった

中でも、1980年代に勃興した「台灣新浪潮電影(台湾ニューシネマ)」の旗手のひとり、張毅(チャン・イー)監督と夫人の楊惠姍(ロレッタ・ヤン)の来阪には驚いた。それもアニメ作品を持って来たというからさらにびっくりだ。アニメに関しては「亡くなった楊德昌(エドワード・ヤン)との約束を果たすため」と言う。「彼とは、いかにして中華圏でアニメを作ってゆくかと言う話をしてきた」と。台湾映画界の重鎮3人が、楊德昌の遺志をつなぎ、どんなアニメを作ったのか興味津々だが、何分、「犬の話」と聞いただけでウルウルしてしまうほど「犬もの」には弱いので、鑑賞をパスした。

セレモニー後、いよいよ『私を月に連れてって』の上映始まる。

『私を月に連れてって』<日本プレミア上映>
(台題=帶我去月球)


「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『帶我去月球』
英題 Take Me To the Moon
邦題 『私を月に連れてって』
製作年 2017年
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):謝駿毅(シェ・チュンイー)

領銜主演(主演):劉以豪(ジャスパー・リュウ)、宋芸樺(ビビアン・ソン)
主演(出演):嚴正嵐(ヴェラ・イェン)、石知田(チーティェン・シー)、李銓(リー・チュアン)、姚愛寗(ヤオ・アイニン)

これも観たかった作品。何と言っても、『私の少女時代』で大ブレークした宋芸樺(ビビアン・ソン)が主演と言うから、絶対見逃せないではないか。『私の少女時代』公開に先立って開催された彼女の舞台挨拶をシネマート心斎橋で見た「歴史証言者」(笑)としては、当然だろう。

ストーリーとしては、昨年の大阪アジアン映画祭で小生のツボにきた『敗け犬の大いなる煩悩』同様、何らかの身体的衝撃によって過去へタイムスリップ…という展開。ただ、大きな違いは、上映後の質疑応答で謝駿毅(シェ・チュンイー)監督も語っていたように、本作はその中心に、故・張雨生の存在があるという点。

張雨生、実に懐かしい名前である。1990年代の台湾ミュージックシーンで絶対的な地位にあった張雨生も、四大天王絶頂期の香港ではそれほど人気はなかったと記憶しているが、まあ名前くらいはだれでも知っていたと思う。実際、彼が1997年11月に交通事故死した時は、香港各紙も大々的に報じていたのを思い出す。

日本での知名度がどうだったかはわからないが、張惠妹(アーメイ)を一躍スターダムにのし上げた功労者として、知っている人もいるかも…、いやいないか…。その張雨生をモチーフに、馮勃棣が書き下ろしたオリジナル脚本『雨生台北』を改編したのが本作である。

高校時代、「月球幫」(字幕では「月球組」)なるバンドを組んでいた同級生5人が再会したのは、宋芸樺(ビビアン・ソン)演じるヴォーカリスト・李恩佩の葬儀。帰り道、交通事故に遭った劉以豪(ジャスパー・リュウ)演じる汪正翔は、1997年の高校卒業の3日前にタイムスリップしてしまう。97年と言えば、「香港返還」の年だが、この作品には香港の「ほ」の字も出てこない。当たり前だが。「ひよこが死んじゃった~」と泣く少年が手にしていたのが、あのゲームだというのが何ともベタで(笑)。

宋芸樺(ビビアン・ソン)演じるヴォーカリスト・李恩佩は、全校生徒の憧れの的。彼女と劉以豪(ジャスパー・リュウ)演じる汪正翔、李銓(リー・チュアン)演じるバンド仲間の阿勝の三角関係。優柔不断な汪正翔と真っ向勝負の阿勝。男子ならどちらの言い分も行動もよくわかるだけに、どっちにもイラついたり、「そうそう、キミは間違ってない!」とか思いながら、恋の行方を見守るということに。

やはりバンド仲間で、唯一、汪正翔が「未来から来た」ことを信じている、石知田(チーティェン・シー)演じる大包がいい味出していた。イケメン俳優にして売れっ子モデルの彼が演じるちょっとドジなメガネ少年というギャップが、台湾人には楽しめたことだろうと想像する。

ちょっぴり学芸会的な感じもするが、ココというところで張雨生の懐かしい歌声が流れてきて、そんな辛口評価を吹き飛ばしてしまうのだから、ズルいと言えばズルいわな(笑)。ラストは、想像に難くない締めくくりとなるわけで、タイムスリップものの安定路線をゆく。

汪正翔が過去へ戻るとき、そして現在へ戻るときに登場し、謎めいた格言?を言う街角の玉蘭花売りの老婆役の呂雪鳳も、味わい深い演技を見せていた。汪正翔が彼女から買った玉蘭花の数が、物語を90分に収めてくれているとうわけで(笑)。

宋芸樺(ビビアン・ソン)の相手役、劉以豪(ジャスパー・リュウ)だが、これが日本初お目見えかな。風貌がなんとなく高校時代の小生を髣髴とさせるものがあって、好感が持てた(笑)。いや、そっくりだと言ってるわけじゃないんで、誤解なきように…。

終演後は、質疑応答。

いや~、すでに「台湾で観ました」とかおっしゃる方がいて、なんとご熱心なと驚いた次第。で、エンドロールを観ていたら舒淇(スー・チー)と魏徳聖(ウェイ・ダーション)の名前が。質問しようかなどーしようかなと迷っていたら、幸い他の人が聞いてくれて助かった(笑)。「舒淇は役作りの面で、東京ロケの時にわざわざ東京まで来て宋芸樺にアドバイスしてくれました。魏徳聖にはストーリー建てなど脚本面でアドバイスをもらいました。この映画は、二人の協力なくしては作れなかったと思うほど、多大な助言をもらった」とのことだった。なるほど、なるほど。

そして、バンド「月球幫」だが、楽器演奏も歌も吹き替えなしで、一から練習して演じたとのこと。張雨生のヒット曲で映画の題名にもなっている『帶我去月球』も実際に宋芸樺が歌っている。

電影【帶我去月球】官方正式預告

(平成30年3月14日 ABCホール)



 


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