【第六屆立法會選舉その後】「シナ」の激震

香港第六屆立法會選舉その後
「シナ」の激震

本題に入る前に。

ファイターズが日本シリーズを制した。まあ、ダントツ優勝候補の我がホークスを最大11.5差から追いつき、追い越し、リーグ優勝しての日本一だから、文句のつけようもないだろう。これを許してしまった我が軍は、猛稽古に励んで来場所じゃなく、来季に臨んでもらいたいものである。できれば、カープとシリーズを戦いたいね。

で、その夜。NHKのEテレで香港は誰のものかというドキュメント番組が放映されていた。きっと世の中はファイターズのビールかけなんぞを観ていたか、はたまた、街頭で仮装大会に励んでいたかという時間帯だけに、よほどの「おたく」でないと観ていないと思う。非常によく取材された番組で、こういう丁寧な番組作りは、NHKだからこそできるもの。受信料払う価値がある。なのに不憫な放送局だ。右からは「左傾化甚だしい」と言われ、左からは「国営放送」などと突き上げられて。
それはさておき、この番組を観れば、拙ブログにおける香港ネタなど木っ端微塵である。だからこの先、読まなくていいよ(笑)。再放送が11月5日の0時(4日24時)からあるからそれ見りゃ万事OKよ。

「シナ」に揺れる議会

なんて言うと、せっかくおいでになった方々に申し訳ないので、番組で放映されたその先の事態、今まさに進行中の立法会をめぐる状況についてざっと追っておきましょう。

legislative-council-1440今、香港で最もメディアを賑わせている言葉は「シナ」。当然 現地では漢字で「支那」と表記する。「根底に反日ありき」だった頃の香港ではこの二文字にすごく敏感だった。その敏感のベクトルは、ご想像通りの方向に向いていたわけで、それはわかりやすいベクトルではあったが、小生なんぞは「そもそも『支那』の語源は…」と香港人に教授してあげたくてウズウズしていたもんだが、いかんせん勇気と語学力がないのでやめた(笑)。

日本と同様、先の大戦を実体験として知る世代が減り、社会の中核は団塊ジュニア世代に移行した現在、すでに「根底に反日ありき」の香港は遠い過去の話になったといっても間違いではないと思うが、そんな香港で今「支那」という言葉が脚光を浴びているのはどういうわけか?

実は 5,6年前から香港人のネット上でやりとりに「支那」の二文字が出現していることに注目していた。とりわけ今、「本土派」とか「港獨派」とかいわれる香港至上主義・排他主義の若者の間で、大陸や大陸人のことを「支那、支那人」と呼ぶことが目立って 来ていて、「へ~、香港も変わったね~」なんて感心していたわけだが、事現在に至り、この「支那」が開会したばかりの立法会を麻痺的状況に追い込み、さらには全人代まで巻き込んでの騒動になろうとは、ねぇ…。

第6期立法会開会、3人が宣誓無効

10月12日、第6期立法会が開会し、議員による就任宣誓と議長選出が行われた。宣誓式では15人が宣誓文の前後に勝手に文言を加えたり、「雨傘」などの小道具や楽器でなどで騒いだりした。ま、こんなのは過去にもあったことで「あ、また騒いでるね、いつもの人たちが(笑)」ってことで毎度の余興みたいなもん。ただ、今回は違った光景も。

「本土派」政党の「青年新政」の梁頌恒(バギオ・リョン)と游蕙禎(ヤウ・ワイチイン)、汎民主派諸派で建築・測量・都市計画・緑地設計業界選出の姚松炎(エドワード・イウ)の3人の宣誓が無効とされた。

姚松炎は宣誓文に「真の普通選挙」などの言葉を加えたためだが、青年新政の2人は、英語の宣誓文の「中華人民共和国=People’s Republic of China」に当たる部分で、「China」を「シナ」、「Republic」を「Re-fucking」と読むなどし、「Hong Kong is not China」と書かれたフラッグを掲げたことから、宣誓内容を理解しているか疑わしいとみなされたことによる。次回本会議で宣誓をやり直すまでは会議や投票などには参加できず、議員資格を取り消される可能性もある。特に「シナ」発言は問題視され、13日には特区政府が「人民の感情を傷つけた」と譴責声明を発表。親中派諸団体の反発も激しいものがあり、大規模抗議活動に発展する可能性もある。

立法会議長には、香港経済民生連盟(経民連=建制派)主席の梁君彦(アンドリュー・リョン)が選出されたが、民主派が国籍問題を指摘して、混乱の幕開けとなる。ここでもあっちでも政治の世界に「二重国籍問題」あり。世界はリンクしているのか(笑)。

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おなじみの梁國雄(長毛)は、雨傘活動を彷彿させる黄色い傘を持ち出して「香港基本法」を破くというパフォーマンスで立法会の千両役者ぶりを発揮!
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こちらは珍しい形のタンバリン打ち鳴らしての宣誓。社会福利業界選出の邵家臻(ボトル・シュウ=無所属・汎民主派)。にしてもそのタンバリン、どこで売ってるん?
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游蕙禎
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梁頌恒。なんか悦に浸ってるような表情だな(笑)

「シナ」発言に抗議の署名26万人、訴訟も

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建制派(親政府派、親中派)政党や関連組織の抗議活動は激化するいっぽう

第6期立法会での就任宣誓が無効となった新人議員への抗議の声の高まりは予想通りで、雨傘行動のきっかけの一つであった「セントラル地区占拠行動=佔中」への抗議組織「保普選反占中」はFBで13日午前、宣誓式で故意に「シナ」、「Re-fucking」を口にした青年新政の梁頌恒と游蕙禎に公開謝罪と発言撤回を要求、立法会には解任を求める署名活動を呼び掛け。親中派政党の「民建連」議員や親中派団体などが転載し、23日までに87万人が署名。

13日朝からは、立法会議事堂前では親中派団体、元軍人らが立法会議事堂前で抗議活動を展開し、日ごとに規模が拡大している。

香港城市大学専業進修学院の学生である莫嘉傑氏は同日、「宣誓及声明条例」第21条に基づき、2人の宣誓やり直しは認めずに議員資格の取り消しを求め、高等法院に提訴。
梁、游の2人は17日の記者会見で宣誓に対する態度を軟化させるも、謝罪は拒否。

「シナ」発言の2議員、資格喪失へ政府が提訴

香港特区政府の司法行政所轄官庁の律政司は10月18日、青年新政の梁頌恒と游蕙禎について、就任宣誓のやり直し禁止と議員資格喪失を求め、高等法院に緊急開廷を申請。政府側弁護人は「2人の立法会議員の職位を認めることは、世界と大衆に間違ったシグナルを与えることになり、基本法を擁護しなくとも立法会議員になれると誤解させる」と陳述。2人の宣誓は無効として、立法会条例73条に基づき、議員資格喪失の声明を求める申請が受理され、11月3日から審理が行われる。

立法会議長の梁君彦は同日、青年新政の2人と劉小麗(ラウ・シウライ=自決派)、姚松炎、黄定光(民建連=親中派)の5人の宣誓を無効と裁定。19日にやり直しとなったが、姚氏と黄氏の宣誓が終わった後で建制派(親政府派、親中派)議員が集団退席して流会となり、残る本土派・自決派の3人の宣誓が阻止されてしまう形となった。経民連(=建制派)の梁美芬(プリシラ・リョン)は「市民の声を受けたら、退席するしかないでしょ」と述べ、民意は青年新政の2人に発言撤回を求めているとした。

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建制派が一斉に退席…

建制派、包囲網強化

建制派(親政府派、親中派)の立法会議員39人は10月21日、本土派の青年新政の梁頌恒と游蕙禎の立法会議員宣誓のやり直しを認めないよう、梁君彦立法会議長に要求した。21日に開いた緊急会議で、再宣誓を先送り処理する要求を連名で議長に提出すると決定した。建制派議員取りまとめ役の廖長江は「この度の『支那発言』による全香港市民、全中国人、全球華人(世界中のChinese)の感情を鑑みるに、2人を議員にすべきではない!」と述べ、騒動がすでに司法手続きに入っているため、法律上の結果が出るまで再宣誓させるべきでないと指摘した。要求を議長が受け入れない場合、建制派は流会などで再宣誓を徹底的に阻止するとも。

さらに、建制派各団体は23日、「反辱華 反港独」大連盟を発足し、梁頌恒と游蕙禎が「世界の華人を侮辱し香港独立を宣揚している」として、大規模な抗議集会を行うと発表した。この大連盟は九龍社団連会、民建連(親中派政党)、工連会(親中派政党)、香港中華総商会など25団体が設立したもので、26日に立法会議事堂前に約1万人を集め、梁頌恒と游蕙禎の議員資格取り消しを求める集会を開催した。抗議集会に先立って発表された声明では、両名は香港基本法と宣誓及声明条例に照らして宣誓しなかったため、すでに議員資格を喪失していることや、台湾に赴いて台湾独立派と結託し国家分裂を図っていることなどを指摘し、立法会議員にいかなる手段を用いてでも、両名の宣誓やり直しを阻止するよう呼び掛けた。

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立法会場を取り巻く「反辱華、反港獨大連盟」。飲み物と日当が出れば、そりゃまあ集まるわな(笑)

前日の10月25日、立法会の梁君彦議長は「梁頌恒と游蕙禎の宣誓やり直しを先送りする」と決定した。梁議長は「2人の宣誓を議事日程に入れれば立法会は停止する。立法機関としての利益、憲法規定、議事規則、関係議員の利益を考慮した結果」と述べ、2人の宣誓は特区政府が起こした高等法院での訴訟が終了するまで棚上げするとした。また特区政府は起訴状を修正し「両名が就任した場合、その議席はすでに空席であるとの声明を出す」要求を加えた。宣誓及声明條例21条に基づき両名は宣誓を拒否・なおざりにしたことから議員資格を取り消すことができる。

そして10月26日。立法会議場は内外ともに建制派、民主派、本土派・自決派入り乱れての大混乱となる。梁頌恒と游蕙禎の両名は議場への入場は禁じられていたが、汎民主派議員が二人を包囲して議場に入れた。
—-民主党は「『支那発言』は華人への侮辱」という党の見解により、包囲陣には参画せず。この政党のこういうところが気に食わないし、こういう態度が結局、返還後の香港に「何ももたらしていない」のである。

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汎民主派議員に囲まれて両名着席。しかし多数の取材陣に囲まれて、肝心の二人は見えず(笑)

梁議長は両名に退席を命じたが拒否したため、休会を宣言。国籍問題も含め、梁議長に不満を持つ汎民主派の抗議の会見が開かれたが、この会見にはしっかり参加している民主党は笑止千万である。

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議長への抗議の会見では、しっかり最前列中央を民主党が固める(笑)
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議会流会後、会見する梁、游の二人。どんな思惑があってか知らないが、議会をここまで混乱させた罪は大きい

止まらない議会の混乱

さて、この「支那騒動」に関して全人代が法的解釈をするとかしないとかという今日この頃ではあるが、11月2日の立法会はまたもや大混乱に。いつまでこのお子さん二人にかき回されるのやら…。このままでは議会がまともに開催される日は永遠に来ないのではないか?そんな気さえするが、簡単な話である。二人から議員資格をさっさと剥奪すればよいのである。で、そのための全人代介入であるわけだが、そうなると「一国両制度」の崩壊とかなんだかんだで市民の反発も大きいだろうし、こんな時だけ西側諸国は香港の味方をして北京側を悪者扱いするから、慎重さが必要。中央はタイミングを見ていると思う。香港の複数のメディは、それがすでに「秒読み段階」と報じているが果たして…。

2日の立法会は、「禁足令」の出ているはずの二人がつかつかと議場に現れて、游蕙禎が勝手に「就任宣誓」をしてしまう。議場保安員らがすぐさま二人を退場させるべく取り押さえにかかるが、「民主党以外」の民主派、自決派議員らが二人を「保護」しようとしたため、小競り合いが拡大し、保安員に負傷者が出る始末。この2週間、立法会はほとんど機能していない。二人の目的がこの事態に立法会を陥れることにのみあったとするなら、早急に議員資格の剥奪を実行するべきだ。この事態に一番ほくそ笑んでいるは誰か、火を見るより明らかだが、連中がますます香港にその権力を介入させるきっかけづくりに励んでいるのは他ならぬ、「支那発言」の両名である。

目的が見えない、「シナ発言」議員の言動

「本土派」「港獨派」の言うことには大いに賛同できるし、もし今も香港在住の身であったならば活動を支持してはいたと思う。が、ここに至るまでの両名の態度はあまりにも幼稚であるし、北京を喜ばせるだけの話である。現に全人代が法的解釈するやらしないやらの段階に至ってしまっているでないか。こうなると「結局、それこそが目的か?」とさえ思ってしまう。いや、案外そういう筋書があったのかもしれない…。な、わけないよなとは信じられない昨今の香港の混乱である。

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自前の拡声器を持ち込んで勝手に宣誓する游蕙禎。ノースリーブを着ているのは、ちょっとした擦り傷でさえ「官憲による暴力だ!」と言いがかりをつけるためだろう、多分
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多くの取材陣に囲まれ激高した表情を見せる梁頌恒
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小競り合いで負傷し、病院送りとなる保安員。民主党は「この混乱を招いた責任を青年新政の両名は重く受け止めよ」などともっともらしく言っているが、「お前らが言うな!」ってところだ。お笑い集団か?君らは

すでに「青年新政」では両名に成り代わる次の候補者をリストアップしているらしい。つまりは、もうこの二人が議員にとどまることは難しいとの考えなのだろう。何日間も議会停止状態にし、社会を二分化させる混乱を引き起こした罪は大きい。どうせリストアップされたメンツも大したことはないだろう。結局、従来の「汎民主派vs建制派」の対立構図が安定の香港を維持するのか?それが何も生み出さなかったからこそ、市民は本土派、自決派に票を投じたわけだが、それがねえ。

ほんとに、「君らの目的は何なんだ?」と。これほど市民に失礼な話もないなあと呆れかえる次第である。





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