【睇戲】『クリミナル・アフェア 魔警』(港題=魔警)

『クリミナル・アフェア 魔警』
(港題=魔警)

『激戦 ハート・オブ・ファイト』で、驚異の肉体改造を披露してさらにイイ人を演じた張家輝(ニック・チョン)が、今度は非常に危険な人物を演じる。監督も同じ『激戦~』の林超賢(ダンテ・ラム)。さてどんな展開になるのやら。期待値はかなり高い。きっと香港映画お得意の「警察モノ」にとどまらない作品に違いない…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

TDW_MainPoster_1_1396497807港題 『魔警』
英題
 『That Demon Within』
邦題 『クリミナル・アフェア 魔警』
製作年 2014年
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 林超賢(ダンテ・ラム)

領銜主演(主演):張家輝(ニック・チョン)、呉彦祖(ダニエル・ウー)

主演(出演):思漩(クリスティーン・チェン)、廖啓智(リウ・カイチー)、林嘉華(ドミニク・ラム)、安志杰(アンディ・オン)、 歐錦棠(ステファン・アウ)、李國麟(ジョセフ・リー)、梁焯滿(サミュエル・リョン)

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実際の事件現場。非常に生々しい(2006年3月18日付『蘋果日報』)

「魔警」とか「魔鬼警察」とか聞いてぱっと思い浮かんだのが、2006年3月に起きた警察官・徐步高による警察官射殺事件(警官1死1傷)。犯人の徐步高も死亡。もちろん、この作品はこの警察官射殺事件からインスパイアされたもの。

当時、香港メディアを大いに賑わせたあの事件。あらためて当時の報道をひも解いてみたが、メディアの異様な盛り上がりぶりがうかがえるだけに、林超賢がどんな腕前で料理し、芸達者な出演陣がどのように見せてくれるのか、興味深い。

そして主役の一人呉彦祖だが、小生自身、彼を映画館のスクリーンで見るのは、記憶に間違いがなければ、1998年の『美少年の恋(原題・美少年之戀)』以来のことだと思う。もちろんその間にも彼は数え切れないほど映画出演しているが。偶然にも『美少年の恋』でも今作でも彼は香港警察の警官役。どこまでも警察の制服が似合う男だ(笑)。

【甘口評】
呉彦祖が持ち味をフルに発揮していた。この作品、主役が二人とも結局は「凶悪犯」というのが、最後まで緊張感を継続させている。どこかでどっちが「イイ人」になるなんて希望は、早い段階で捨ててしまわざるを得ない。やるせない気持ちにもならないでもないが、ここが従来の「警察モノ」とは著しく一線を画している点であり、本作のウリの一つだろう。

呉彦祖はストーリー当初から「ちょっとヘン」な奴を臭わせながら、シーンごとに「性格缺陷(欠陥)」を次第にエスカレートさせていく有様を見事に演じていた。撃ち合いなどのアクションシーンが多い「警察モノ」の展開がある一方で、呉彦祖演じる警官・デイブの存在が、娯楽要素の高い「警察モノ」ではなく、人の心の闇の部分を視覚化、アクション化してスクリーンで見せるという「警察モノ」になっている。数週間前に見た同じ林超賢監督作『激戦』は、ハートウォーミングな格闘映画だったが、それとは全く違うフィールドの才能を見せてもらえた。元来が、ポスト杜琪峰(ジョニー・トー)の呼び声が高い監督だけに、今後も幅広いジャンルを手掛けて行ってほしい人材。

『激戦』と同じく、張家輝、安志杰が作品の「肚」をわきまえた好演。監督が役者を、役者が監督を信頼しているのがわかる。

また、窃盗集団の面々が、廖啓智、歐錦棠、李國麟らTVBの警察ドラマなどでおなじみのメンバーだったのが、作品への安心感や信頼感をもたらせてくれていた。

【辛口評】
こうでなきゃならいんだろうけど、何十発という撃ち合いの挙句、てっきり死んだと思った人間が、ほとんど無傷であるかのように次の撃ち合いに参戦…。この展開が、周潤發のノワール映画の時代から好きにはなれないんだが、やっぱり香港はこれでなければいけないんだろうね、それもまた良しか(苦笑)。

安志杰が警察内部から窃盗団への内通者という役どころだったのが、残念。彼ならもう少し使いようがあっただろうにねえ。若手のイキのいい俳優だけになんとも勿体ない気がした。小生はすごく買っているのだよ、彼のことを。次、いいのを頼みますね(笑)。

世の中がそういう時代なのだろう、香港も。いや、香港だから余計にそうなんだろう。最近、「心理劇」というか心の奥底にあるトラウマなどが事件を起こす引き金になるということを題材にした香港作品が多い気がする。またそれが大衆に受けるというのも、香港映画も香港社会も随分と変わってきたなあと思うことしばしば。たまには、あっけらか~んと笑える作品が見たいけど、そういう旧正月向け娯楽作品、なかなか日本じゃ公開してもらえないからね…。そこが寂しいところ。

《魔警》正式預告

(平成27年2月24日 シネマート心斎橋)


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