【上方芸能な日々 浪曲】『浪曲名人会』

浪曲
国立文楽劇場開場30周年記念
浪曲名人会

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本日の文楽劇場は恒例の「浪曲名人会」で。毎回、非常にチケットの取りにくい人気の公演。人気実力キャリア全てにおいてトップクラスの浪曲師が自慢の喉を披露するだけに、チケット争奪戦は熾烈を極めるのは当然のことなんだが、今回は超若手のイケメンが「座談会」ながら登場するとあって、早くから話題騒然。なんとか隅っこの座席を「残り10席」あるかないかの段階で確保できた。これはもう奇蹟に近いね。ほとんどあきらめていただけに、なんか今年はイイことあるんじゃないか…、はたまた今年の運をすべて使い果たしてしまったか…。ま、それは大晦日のお楽しみってところで(笑)。

<ネタ帳>

1)京山小圓嬢   『サイコロ夫婦旅』 曲師 沢村さくら
2)天中軒雲月  『中山安兵衛婿入り』 曲師 沢村さくら
3)京山幸枝若  『玉川お芳』 曲師 岡本貞子、ギター 京山幸光
「お楽しみ座談会 ~関西浪曲界の新星揃い踏み!」
真山隼人 ・ 天中軒涼月 ・ 浪花亭友歌 ・ 京山幸太
司会=春野恵子

―仲入―

4)三原佐知子  『母恋あいや節』 曲師 虹友美、オペレーター 鵜川せつ子
5)春野恵子    『番町皿屋敷 お菊と播磨』 曲師 一風亭初月
6)松浦四郎若  『勧進帳』 曲師 虹友美
◆ご案内=真山誠太郎 ・ 春野冨美代

定員800人強の文楽劇場大ホール、立錐の余地なしの超満員札止めの大盛況。「浪曲って、こないに人気あったかな?」ってほどの大入り満員だが、芸人は皆、地道に公演を重ねて、なんとか上方の浪曲の灯を消すまいと努力している。その成果もあってのことだろう。

とは言え、客席の年齢層はまだまだ高く、若い世代への浸透が充分だとは言えない厳しい現状もある。きょうの客席も見渡す限り、おそらく60歳代以上が8割を占めていたと感じた。が、この人たちもきっと今から20年、30年前にはまさかその後の人生で自分が浪曲と出会い、口演会場に足を運ぶ日が来るなんて思ってもいなかったんじゃないだろうか…。

そういう意味では、ある程度の「人生の積み重ね」を経て、初めてわかる妙味を秘めた芸なのだろう。そこへ、この日紹介された10代、20代の若い力加わった。これからどんな化学反応が起きるのか、楽しみなところである。

専門誌のような講釈はここらで置いておき、一口感想など。

浪曲親友協会が「どうだまいったか!」と言わんばかりの豪華ラインナップ。ベテランといよいよ油が乗ってきた春野恵子を織り交ぜ、聴衆を退屈させない番組立てが心憎い。

いきなり超ベテランの小圓嬢師匠から幕開け。パンフレットで解説の芦川淳平氏が書いていたように「アウトロー」の半太郎の強がりな部分と世に見捨てらた弱い部分を、慈愛あふれる読みで朗々と。

「高田の馬場」の続編となる『中山安兵衛婿入り』は、ダイナミックかつ軽妙なおかし味を織り交ぜて、雲月師匠が持ち味たっぷりに聴かせた。

待ってましたの幸枝若師匠、『玉川お芳』の前半部を。いつも楽しく聴かせてくれる幸枝若、この日もお客をぐいぐいひきつけて、さあこれからどーするどーするというところで、「丁度時間となりました」。この匙加減がなんとも心憎い限り。

隼人、涼月、友歌、幸太の超若手4人の自己紹介的なコーナー。司会進行はケイコ先生。みんな意欲満々で芸へ取り組んでいるのがうかがわれて、好感持てる4人。この大舞台でこういう場を与えてくれる師匠、先輩がいることはとても幸せなこと。そしてつい数年前まで、この4人と同じ立場だった春野恵子は、彼ら彼女らを引っ張って行く立場に。時代は流れる。

佐知子師匠のときは、ハンカチやティシューが欠かせない。案の定、右で左で前で後ろで、涙をぬぐう気配を感じる。さすが「母モノ浪曲」は他の追随を許さない。曲師・虹友美の「なないろ三味線」がこれまたお見事!

テレビの人気タレント「ケイコ先生」も、浪曲師・春野恵子としての初舞台から早や9年。昨年は米国(ニューヨーク)、中国(アモイ)での公演も成功裏に終わり、今年はさらに海外公演(英語公演)が増える。『番町皿屋敷』は過去にも何度か聴いたが、ニンにぴったりはまっている。

トリは四郎若師匠が『勧進帳』で、大貫禄の読みを聴かせる。今回は女流四人、男は二人で、ありゃありゃと思わないでもなかったが、中トリの幸枝若と二人で存在感充分。正統派で誠実な浪曲を聴かせてくれる安心感がいつもうれしい。

浪曲が苦手という人は、多分、読んでる詞章が耳から入っても、それを頭の中でビジュアル化する機能が万全でないんだろう。そういう人は、落語も講談も浄瑠璃もきっと苦手だろう。正統派のしゃべくり漫才も苦手のはず。もっと言えば、歌を聴いていてもつまんないんじゃないかな…。などと余計な心配をしてあげてしまう。まあ、鍛えてどうにかなる機能でもないようだし。そういう意味では、幼少の頃の本の読み聞かせなんかは、その子が人生をいかに楽しく過ごすかに、大きくかかわってくる思うな…。本、読んであげましょう。想像する力、育ててあげましょう。

あ、全体の司会進行役だった真山誠太郎、春野冨美代の御両人。誠太郎師が教頭先生、冨美代師が保健室の先生みたいなムードで、よぉござんした(笑)。

(平成27年2月28日 日本橋国立文楽劇場)




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