<銅鑼灣(Causeway Bay)の街角でにらみを利かす戦術バスと装甲車。まあ、装甲車出動なんてことは起きないけど、一応ねぇ(笑)>
36回目の6月4日がやってきた。かつては主催者発表で10万人を超す市民が集った追悼集会も今は昔の物語となった。

真面目に実直に、天安門事件追悼活動や中国政府への責任追及を継続してきた香港市民支援愛國民主運動聯合會(支連会)も、もう解散してしまった。あの支連会が「国安法」を前にしては、為す術なく早々に解散してしまったのには、驚いた。支連会は嫌いだったけど、この解散については、ちょっと同情してしまう部分もあった。

WEBニュースサイト『端傳媒(Initium Media)』は、「香港維園第六年沒有六四燭光,黑衣市民雨中持花及默坐悼念=香港では6年連続でビクトリア公園に「六四」の蝋燭の明かりはなかった。黒い服を着た市民は花を手にし、雨の中、黙祷した」と題した特集記事を掲載した。このメディア、いつの間にか有料になっていたんだが、この特集は無料。そこで、この特集をベースに、今年の「六四」当日を観察してみた。なお、時系列が行ったり来たりしているが、香港のメディアは、どこでもこうなんで、そこは悪しからず。
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逮捕者2名、11名を連行
2020年の国安法施行以降、支連会がビクトリア公園で開催してきた六四追悼集会が姿を消して6年になった。すっかりおなじみとなった本土各地の名産品を販売する「第三屆家鄉市集嘉年華(第3回ふるさとマーケットカーニバル)」が、かつての追悼集会会場で開催された。

6月4日は「敏感な一日」だから、ビクトリア公園及び銅鑼灣(Causeway Bay)一帯では、警察の警備体制が強化され、防刃ベストを着用した警官のほか、多数の私服警官が配備された。戦術バスと装甲車も待機した。午後には、警務處副處長(國家安全)の簡啟恩(アンドリュー・カン)、國家安全處處長の江學禮(ケルビン・コン)が銅鑼灣を視察した。

この日は、多くの市民が警察に呼び止められ、職質され、中にはMTR(地下鉄)の駅まで強制的に送られたり、警察へ連行された者もいた。香港各メディアによれば、公務執行妨害と身分証不提示で各1名が逮捕され、15歳から69歳の男女各5名が警察で取り調べを受けたほか、「女長毛」こと雷玉蓮も警察に連行された。
夜は雨となったが、ビクトリア公園の「家鄉市集」からは陽気な音楽が聞こえ、多くの警察官が会場の外に陣取っていた。黒服を着た多くの人々が、傘をさして歩いたり、椅子に座ったり、ジョギングしたりしていた。中には6月4日事件を悼む人もいれば、ただ通り過ぎただけで、なぜこんなに多くの警察官がいるのかわからないと記者に話す人もいた。いやあ、香港市民ならわかるだろ、その意味が。とぼけるにも程がある(笑)。

午後6時頃、マスクを着け、黒い服で白い花を持った中年女性が記利佐治街(Great George Street)を歩いていたところ、警察は直ちに彼女を取り囲み、オレンジ色の規制線で報道陣から遠ざけ、所持品を検査した。最終的に彼女はMTRの銅鑼灣駅に送られ、退去した。

午後4時半頃、黒ずくめの男がヴィクトリア公園で座り込んでいたところ、警察の職質を受けた。男は職質中に白い電子キャンドルを取り出し、火をつけ、静かに両手に握った。警察と男は口論となり、男はパトカーに連行された。

午後3時頃、「旺角國和集團」の吳おじさんが銅鑼灣に現れたたところ、数人の私服警官に取り囲まれ、15分以上にわたり身体と所持品を検査された。その後、吳おじさんは警官に「護衛」されエスカレーターに乗り、そごう百貨店の外まで歩いた。そこで10人以上の警官がオレンジ色の規制線を張って彼を取り囲んだ。

首にイエスの肖像画を下げた吳おじさんは、旧ソ連のゴルバチョフ元書記の言葉が書かれたプラカードを掲げたが、警察はMTR銅鑼灣駅のエレベーターに「護衛」し、吳おじさんを退去させた。

そして「女長毛」こと雷玉蓮。現在も収監されている長毛・梁國雄とは、民主派圧力団体「四五行動」の同志である。いわゆる「活動家」のほとんどが服役中のため、このところ単独行動、それも奇妙なパフォーマンスが多い。午後4時頃、銅鑼灣駅で手を合わせていたところ、すぐに警察にパトカーに乗せられて、灣仔警察署に連行された。

午後4時過ぎ、そごう付近を走行していた青い自家用車が、軒尼詩道(Hennesy Road)から突然歩道を横切り、記利佐治街(Great George Street)に突入した。現場付近を警戒中だった警察官が直ちに車を停車させ、状況確認を行った後、現場を封鎖した。関与した男性はパトカーに連行され、自家用車はレッカー移動された。同乗していた女性によれは「道がわからなかった」「不慣れな道だった」などと答えているが…。そんなお前、香港で一番の繁華街の「道知らん」っておかしいやろ。カーナビあるやろ? 事故った原因は不明のままだが、本当に「道がわからん」で起きた事故としても、日が日だけに、何かと勘繰られるよな、6月4日は…。
欧米諸国香港駐在事務所の追悼活動

夕方になると、欧米諸国の在香港総領事館は追悼活動を行った。在香港・マカオ米国総領事館、欧州連合(EU)の香港マカオ事務所、在香港英国総領事館が電子キャンドルを点灯し、「VIIV」の文字を投影してこの日を悼んだ。これに先立ち、香港駐在の英国、米国、カナダ、オーストラリアの各領事館では、SNSに6月4日を追悼する投稿を行った。その中で、ルビオ米国務長官は「1989年6月4日の出来事に対する責任追及と正義を求めながら迫害を受け続けている人々の勇気を称えます。」というメッセージを投稿した。

「家鄉市集嘉年華」で聞く六四リアル世代の声
さて、「家鄉市集嘉年華」の会場で、メディアが取材活動を行うのは容易ではなく、スタッフの監視は相当厳しいようだ。ネットメディア『集誌社』は記者証では入場させてもらえず、HK$5の入場料を払って入場したと報じた。来場者のインタビューも容易ではなく、警備員バッジをつけたスタッフ阻止され、主催者の許可を得ていないと制止し、5、6人の警備員が記者を取り囲んだ。
今年のマーケットは規模が拡大し、共催する香港に事務所のある30省の郷土協会の数は、昨年の28から30に増加した。特産品を販売する約300のブースに加え、約200の文化パフォーマンスが披露される。「中華美食街(中華ウマいものストリート)」には30軒の屋台が出店し、新疆の羊肉串焼き、四川の鉢鉢鶏(ボーボージー)、上海の蟹粉包、陝西の肉夾饃(ロージャーモー)、雲南のパパイヤアイスゼリーなど、本土各地の名物が味わえる。

WEBメディア『BBC中文版』が拾った「家鄉市集嘉年華」来場者の声は様々で面白い。
香港移民のシャーリーさんは、『BBC中文版』の取材に対し、ビクトリア公園が過去には6月4日に追悼のろうそく集会の会場だったことは知っていたものの、「家鄉市集嘉年華」についてはあまり知らなかったと語った。シャーリーさんは、この変化は「とてもいいこと」と考えており、「誰もが中国の地域文化について学ぶことができる。もっと知れば、人それぞれ見方が変わるかもしれない」と語った。
3年連続で「家鄉市集嘉年華」に足を運んでいる唐氏は、「各地のグルメが楽しめ、特産品も買える」と語った。また、市民の愛国心を高めるだけでなく、消費を促進する効果もあるとも。これまで六四の集会には一度も参加したことがなかった唐さんは、「どっちが選べと言えば、もちろん『家鄉市集嘉年華』。愛国心がなくても来れますからね」と語った。
林氏は、かつてはビクトリア公園に多くの人が集まっていたが、今は人が少なくなったと振り返り、「家鄉市集嘉年華」の開催は「完全に形式的なもので、集会の会場だったこの場所とビクトリア公園を強制的に封鎖するものだ」と述べ、「人が集まる場所がなくなったからといって、人々が追悼の気持ちを忘れたわけではない」と強調した。
カメラに写ることを嫌がる王小姐は、六四は特に敏感なテーマだと指摘した。「香港で今なお六四集会を開催する意思のある人の数は比較的少なく、影響力はますます縮小している」と語った。ビクトリア公園は追悼の場から各地の物産展へと様変わりした。彼女は、この変化はある意味、偽装された六四の記憶になっていると考えている。「この行為は少し巧妙だと思いますが、一方で、この巧妙さは、この出来事(六四)について別の考え方を喚起するかもしれません」と言う。

最初の二人は、、「『家鄉市集嘉年華』いいじゃん、楽しめばいいのよ」と言う。あとの二人は懐疑的な声。特に王小姐の意見は何言ってるかわからない(BBC、ちゃんとまとめろ!)ものだけど、わからんでもない。うん、まあ、そういうことやねという意見ではある…。で、結局「胸に一物」ある人も来る「家鄉市集嘉年華」って、よほど楽しいんだろうな(笑)。
「黄店」に対して監視強化
複数の政府機関が、元区議会議員が経営する「黄店(民主派を応援する店舗)」に対し、監視の目を強化した。
深水埗(Sham Shui Po)地区のランドマーク、西九龍中心(西九龍センター)内の元区議会議員の陳劍琴(カトリーナ・チャン)のお香店「同香會」は、6月4日も通常通り営業していた。陳氏はSNSで、天然豆乳の白キャンドルを6.4香港ドル、アロマキャンドルを89香港ドルで販売すると投稿していた。昨日、税関職員が彼女の店を訪れ、一部の商品が「消費品安全條例」違反の疑いがあると指摘し、該当する線香とエッセンシャルオイルを押収した。めだっも付け方よ(笑)!「6.4ドル」は明らかに6月4日、89ドルは1989年を意図していると思われてもしゃーないね。しかしこれは税関がタッチする案件なのかな…。

昨年6月4日の前夜、国安法が初めて香港基本法第23条に基づく「国家安全維持条例」を適用し、当時、支連会副代表だった鄒幸彤(チョウ・ハントゥン)を支持するFacebookページ「小彤群抽會」に関与したとして、陳劍琴を含む8人を逮捕した。陳劍琴は、この事件は現在も捜査中で保釈されているが、いかなる部署からも特定の商品の販売を控えるよう指示を受けていないと述べた。
アロマキャンドルの販売は、彼女の本来の生業の一つだ。「私は何かの『常識』に挑戦しているのではなく、いつも通りの生活を送っているだけです。香港でいつも通りの生活を送ることは、基本的人権です」と彼女は言った。「これからもここに住み続け、合法で、公正で、理にかなっていると思うことをしていきます」とキッパリ。そして「私は自分なりの方法で、起こったことを思い出して哀悼します」と語った。
同じく深水埗にある独立系書店「獵人書店(Hunter Bookstore)」では、六四事件に関する書籍や出版物をオークションに出品している。棚には、明報社発行の六四事件写真集『悲壯的民運』、アメリカ人写真家ピーター・ターンリーとデイビッド・ターンリーの写真集『Beijing Spring』、文匯報発行の特集号『血洗京華實錄』など、十数点の出品物が並んでいる。ほっほー。香港における「共産党の口舌」たる左派紙『文匯報』が「北京血の惨劇実録」ってな本を出してたんだな、あの当時は…。

経営者で元区議会議員の黃文萱(レティシア・ウォン)は、最近複数の政府機関が書店を訪れたと語った。5月31日には食物環境衞生署(食環署)の職員が来て、「私的活動に関する苦情を受けた」と言った。昨日(3日)は、消防處の職員がやって来て「消防設備について市民から多くの苦情が寄せられている」と指摘した。しかし、昨年のように、警察による来店客の身分証チェックは目撃していないと言う。
黄氏は政府機関による一連の措置は「意図的に業務に圧力をかけている」と考えている。「古本は一般的な商品です。私はそれを売っているだけです」と語った。
「由治及興」のもとで
「由治及興=安定(統治)から繁栄へ」というテーマのもと、香港はここ数年で劇的な変化を遂げ、六四の物理的な記念碑や記憶の担い手が次々と姿を消した。2021年には支連会が解散し、六四活動を推進してきた中核政治家は投獄され、主要な市民団体も崩壊した。六四関連の書籍が公共図書館から撤去され、大学から六四にまつわる芸術作品が撤去された。
解散した支連会は国家、政権の転覆を扇動した罪で起訴され、今年末に裁判が開かれる予定だ。支連会の前主席である李卓人と何俊仁(アルバート・ホー)、そし前副主席の鄒幸彤(チョウ・ハントゥン)は依然として拘留中だ。鄒幸彤は先日、SNSで6月4日に36時間のハンガーストライキを行うと表明し、「この日を記念し、私たちの決意を再確認するためです。皆さんもそれぞれの方法でこの日を思い出すことでしょう」と述べた。

しかし知らんかったけど、服役中の身でもSNS使ってええんやな。まあ懲役ではなく禁錮やからかな? 「Patreon」ってSNSなの? で、Gemini氏に尋ねてみたところ、
Patreon(パトレオン)は、クリエイターがファンから直接、継続的な支援を受けられるようにするためのサブスクリプション型のプラットフォームです。簡単に言うと、クリエイター向けの「月額会員制のファンクラブサイト」のようなものです。
って答えてくれた。SNSちゃうやん!な~にが「社交媒體」やねん、おい!『端傳媒』よ!
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随分と窮屈な時代になったもんだなあとつくづく思う。小生が90年代半ばから香港撤退するまでのおよそ15年間、毎年現場で観察していた頃とは、まったく違う6月4日の風景を『端傳媒』は伝えてくれた。
すべては「国安法」施行によるものだとは思うが、なぜそうなったのか。2019年の暴力破壊行動を民主化デモと持ち上げてしまった日本も含めた西側メディア、民主派の皮をかぶった暴力破壊集団、それを食い止めることもできず指をくわえて眺めていた伝統民主派、尻馬に乗って暴力破壊行為を肯定していた香港市民…。よく我が身を振り返ってもらいたいものだと思う。
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在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
