【謎の空き地「ばばらく」の想い出】*旧ブログ

ウチの近くに、小生が小学生の頃であるならば、地元の子供たち全員が絶対知ってる空き地がありまして、これがなぜか「ばばらく」という、アラブのエライ人みたいなおかしな名称でして、そして誰も恐らくこの「ばばらく」というけったいな名前の曰く因縁故事来歴を知らないのであります「犬のババ(うんこ)がいっぱい落ちてるからかな」、など考えたこともありましたが、考えるのもバカバカしいので、きっとだれも由来には触れないんだと思いますな(笑)。

小生も多聞に漏れず、この「ばばらく」とはおつきあいがありまして。

小学校2年生の時、横井庄一さんがグアムから帰還されたのであります。そしてあさま山荘事件も起きました。当然ながら、「洞穴(ほらあなごっこ」や「立て篭もりごっこ」が全国的に(?)子供の間で大流行するのであります。

しかし悲しいかな、大阪市東南部の市内有数の住宅密集地にして車の通れない路地の比率が校区の全道路の大半を占めるこのエリアに「洞穴」など存在いたしません。

さあ、そこでこの「ばばらく」の登場です。

 

3学期のある冬の日。

友達数名で「ばばらく」で基地ごっこをしていて、だれかれなしに「横井庄一ごっこをしよう!」となりました。そうです、この「ばばらく」、空き地とは言うものの、かなり雑草が生い茂っていて、資材というか建築廃材というか、そういう板ギレとか朽ちた材木が無造作に積み上げられたりもしていて、そういうような遊びにはうってつけの場所でもありましたので、ごく自然の成り行きというものでありましょう。

 

最初はノリノリだった全員でしたが、気が付いてみたら小生ともう一人だけになっていました。夕闇迫る「ばばらく」。とは言え、横には南海平野線(現地下鉄谷町線)が走っており、特に寂しさはありません。あるのは、「ここで洞穴暮らしをする」というドキドキ感だけであります。

「もう『天才バカボン』始まってるで」やら、「そろそろ『キイハンター』終わるくらいちゃうか」などなど、いかに子供の時間軸がテレビ番組を基準にしているかがわかる会話の連続。

今から考えれば、それはきっとテレビ番組を話題にすることで、若干の不安と寂しさを紛らわせていたのかもわかりません。今となってはよくわかりませんけど。

 

さて、そうこうするうちに、先に帰ったはずの友人がそこのおばちゃんと一緒に「ばばらく」へやって来ました。おばちゃんは「あんたら、こんな時間まで何してるの!早いこと家に帰りなさい!!」。同時に僕ら二人は現実に引き戻されます。「これはきっと、おばちゃんがうちの親にもチクって、帰ったらえらい怒られるんや」という現実…。

 

かくして最後まであさま山荘事件よろしく「立て篭もり」を決め込んでいた二人は、友達のおばちゃんという「鉄球」をぶち込まれ、とぼとぼ帰宅したのであります。

帰宅して拍子抜けしたのは、『キイハンター』どころか『天才バカボン』すら始まっていない、午後6時過ぎだったということ…。親も怒るどころか「遅いやん、もうちょっと早よ帰りや~」ってなもんで…。

 

ただ、この一件は後に開かれたPTA総会で取り上げられ、「『横井庄一ごっこ』や『あさま山荘ごっこ』を『ばばらく』やることが児童の間で流行している」とし、「ばばらく=悪い遊びをする場所」というレッテルが貼られてしまうことになったのは、残念な限りです。

 

とは言え、今さら子供たちも「ばばらく」から離れることなど簡単にはできません。「基地関係」の遊びがダメなら他にも「ばばらく」の活用法を見出すのが、子供のエライところ。

草ぼうぼうで資材などがあって野球などの球技には不向きですが、「たんてい」などの「鬼ごっこ関係」の遊びにはうってつけですから、その後も「ばばらく」に子供たちは集います。

そしていつの間にか「ばばらく」は、向かいの駄菓子屋で「プロ野球スナック」を購入した子供たちの、カード交換の場となります。

 

巨人や阪神のカードはすぐに当たりますが、当時はパ・リーグのチームのカードなんて、50回に1回当たればいいところで、それでもまだ、小生が応援する南海は比較的確率が高い方で、同じ在阪チームでも阪急や近鉄は悲惨な状況でした。そんなわけで、パ・リーグのファンの子は必死で情報を集め、「3組の誰それがロッテ選手のカード持ってるらしい」とか、「1組のナントカ君が日本ハム選手のカードと阪神の誰でもええから交換したいみたい」なんていう情報を得れば、「それじゃ、3時に『ばばらく』に行くわ」みたいな…。

 

中学校になって、南海平野線にとってかわる谷町線と阪神高速松原線の工事が本格化して、ばばらく」はマジで資材置き場になって、子供の出入りもできなくなってしまいました。そしていつの間にか、空き地や児童公園で遊ぶ子供もすっかり減ってしまい、小生の頭の中からも「ばばらく」は消えていました。

 

先だっても少し触れたように、10月に実家に居を戻しました。引越しと言っても自転車で5分少々の距離ですから、大げさなものではありません。

最寄駅がJRのM駅から谷町線のT駅、もしくは近鉄のI駅に変わりました。これとて、すべて徒歩10分以内の距離ですから、「おお!新しい街に引っ越してきたぜ!」ってわけでもありません。

 

ここへ越してから、谷町線T駅や駅傍のコンビニへよく行くわけですが、自転車でふ~っと走ってて、タイムスリップしたんじゃないかと思う光景に出合いました。

そう、あの「ばばらく」が健在だったのです。

阪神高速道路建設の資材置き場などになってしまって以降、すっかり存在を忘れていた「ばばらく」が、あの「横井庄一ごっこ」からおよそ40年経過した今、また目の前に忽然と現れたのであります。半分ほどがマンションや駐車場になっていますが、相変わらず雑草ぼうぼうの「ばばらく」は健在でした。

 

金網で囲まれた「ばばらく」は、もはや子供を引きつける磁力はないらしく、高速道路の下の「わけのわからん空き地」でしかありません。なんか寂しい気持ちになりますね、コンビニや駅へ行く度にそこを通るんですが…。でもやっぱり「ばばらく」は40年前も今もなお「わけのわからん空き地」のまま存在してるんです。そこが少し嬉しかったりも。どやねん(笑)。

しかし、何なんでしょうね? 「ばばらく」はどうしてず~~~~~っと空き地なんですかね?

小生の親の世代もわからないみたいですから、あれはホント「謎の空き地」ですね。

「幽霊が出る」とかそういう噂も聞いたことないですし…。いや、仮に空き地の理由を知ってる人がいたとしても、理由は聞きたくないな、あくまでもあそこは「ばばらく」であってほしいからな…。

 

ときどき立ち止まって「ばばらく」を眺めていると、南海平野線のチンチン電車の走行音や、レトロな踏切の意外にもリズミカルな「チャンカチャンカチャンカ…」という音色が聴こえてきそうになりますなあ。

 

いずれまた同窓会などで、あの時代に「ばばらく」に集結してた連中と顔を合わすこともあるでしょう。そのときに「ばばらく』『横井庄一ごっこ』やれへん?」とか持ちかけてみますかね。それとも相も変わらず「プロ野球カード」の交換会でもやってみますかね(笑)。

いつでも写真撮れる「ばばらく」ですが、あえて写真は載せませんでした。

読んでいただいた皆さんも、自分の街の、あるいは自分の子供時代の「ばばらく」に思いを馳せてもらえれば…。


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