【睇戲】『淡水河の奇跡』(台題=鮮肉老爸)

この日の2本目は、台湾独特と言える「電視電影」作品。劇場公開を前提として制作されたのではなく、テレビ放映を前提として作られた映画で、製作局で放映された後に他局で放映されることもある。映画祭などで上映されることも多く、劇場用映画同様に賞の対象にもなる。2018年の「第13回大阪アジアン映画祭」で上映され、高い評価を受けた『川流之島』もそのひとつ。

今回の「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」は、2015年から16年にかけて放映された作品で、台北捷運(メトロ)の駅にちなんだ物語シリーズである。このシリーズは『雞排英雄(ナイト・マーケット・ヒーロー)』『大稻埕(ピース、時空を超える愛)』などで知られる葉天倫(イエ・ティエンルン)監督がプロデュースし、自身と5人の新鋭監督による7つの愛の物語を綴っている。下記に、台北捷運の路線図を上げておくので、ご参照のほどを。

ちなみに、この日観た『淡水河の奇跡』は紅線【R】こと淡水信義線淡水駅周辺が舞台となる。しかしまあ、小生が息苦しい香港から「週末脱出」して台湾通いを始めた1996年ごろに比べれば、随分とMRT網が発展したことだと、驚くばかりである。

台北愛情捷運系列 淡水站
淡水河の奇跡(台題=鮮肉老爸)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『鮮肉老爸』
英題 『Where The River Flows』
邦題 『淡水河の奇跡』
テレビ放映年 2016年4月23日(衛視電視台)
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):高炳權(ガオ・ピンチュアン)

領銜主演(主演):侯彥西(ヤン・シェンユウ)、苗可麗(ケーリ・ミャオ)、曹西平(デニーズ・ソウ)、吳慷仁(ウー・カンレン)、方志友(ベアトリス一・ファン)、何以奇(エンジェル・ホウ)
客串演出(ゲスト出演):江中博(中博)、馬西屏(シーピン・マー)、葉天倫(ネルソン・イェ)、周厚安(アンドリュー・チャウ)、安伯政(ザック・アン)

幅広い視聴者層が想定される「電視電影」だからだろうか、先に見た『ラブゴーゴー』よりもわかりやすいストーリー展開。よくある「タイムスリップもの」というのも、万人受けするのだろうか? 昨年の大阪アジアン映画祭TAIWAN NIGHT」で上映された『私を月に連れてって』もそうだったし、一昨年の同映画祭のマレーシア作品『敗け犬の大いなる煩悩』もそうだった。

この作品は、その2作とは違い、「過去から現在にスリップした」主人公が巻き起こすあれこれを描く。スリップしてきた男を吳慷仁(ウー・カンレン)が演じる。「うん?名前も顔も見覚えあり…」と思っていたら、何のことない、今年の大阪アジアン映画祭で上映された香港作品『非分熟女』に出ていた、アイツだった。今回はまったく芸風が違い、「ほぉ~、こういうことできるのか」と。

幼い時に父親が失踪し、淡水で母が商う魚丸店を手伝いながら、自分でパブを開こうと計画している青年・阿給は、友人に騙され母親の店を内緒で抵当に入れ、多額の借金を背負ってしまう。恋人にもフラれてやけ酒を飲み、淡水河で立ち小便をしているところ、溺れている青年を助ける。仕方なく家に連れて帰ると、青年を見た母親は20年前に失踪した人気アイドルの夫に瓜二つと口にした。助けられた青年もまた、自分は80年代のアイドルユニット「クリームチーズ」のBonyだと言い張る…。

さっき観た『台北セブンラブ』が若干、なんじゃらほいなところもあったからか、この映画は非常に楽しめた。小生には、こっちの方が断然合ってたな(笑)。

何かと阿給一家を気に掛ける酷龍は、Bonnyと共に80年代に「クリームチーズ」でアイドルだったという設定だが、実は演じた曹西平(デニーズ・ソウ)は、実際に70~80年代「台湾西城秀樹」と言われたスーパーアイドルだった人。もう還暦だが、な~んとなく「この人、昔はモテたんやろなー」と思って観ていたら、案の定だった(笑)。

阿給を演じた侯彥西(ヤン・シェンユウ)は、なかなか表情豊かで、いい俳優。今年の大阪アジアン映画祭TAIWN NIGHT」で上映された『悲しみより、もっと悲しい物語』にもチョイ役で出演していたらしいが、すまん!まったく記憶にない(笑)。テレビドラマにはよく出ているようだが、もっと映画にも出てほしい人材と思う。香港もそうだけど、こういう俳優、いっぱいいるよな。

上述の吳慷仁(ウー・カンレン)だが、80年代アイドルを演じきっていてたし、精神病院に連れ戻されてからの脱出劇、さらには過去へ再びタイムスリップを試みるまでのドタバタを熱演しており、こういうのはテレビの視聴者には好感度抜群だろうなと感じた。ファッションが実に70~80年代アイドルで、小生の年代には懐かしいものがあるが、今から見れば、やっぱり相当ダサい(笑)。しかし、彼は『非分熟女』の時もそうだったが、「美尻」を披露する役が続くな(笑)。で、その「美尻」に刻まれたインパクトの強いタトゥーをまた再び見る機会が数日後にやってくる(笑)。

そんな阿給の母親すなわちBonyの妻を演じた苗可麗(ケーリ・ミャオ)も、台湾ではおなじみの人だとか。この人の時に見せるエキセントリックな言動が、自然体でとてもよかった。夫が失踪た後、息子と娘を育てながら、代々続く魚丸店を切り盛りしてきた「肚」の座り具合を感じさせる演技だった。

その魚丸だが、好みもあると思うが、小生は「香港よりも台湾の方が断然旨い!」と思っている。大体、スープが台湾の方が口に合う。スーパーなどで買って帰るといいよ。適当にスープの素も一緒に。コリアンダーを適当に散らすと本格的だけど、無かったり嫌だったりなら、セロリでもいいでしょ。香港で買って帰ろうとは思わないなぁ…。ま、個人の好みですけどね。

精神病院脱出劇が面白いのだけど、そこはDVDで確かめていただくとして(笑)、Bonnyと精神病院の同室で、耶蘇(キリスト)というニックネームそのまんまの風貌だった周厚安(アンドリュー・チャウ)は、歌手の周華健(エミール・チョウ)の長男だと知る。「え!こんな息子がおったのか!」と驚くばかりだ。周華健は香港でも人気で、小生もCDを何枚か持っているが、へ~!ってところだ。

全体的には、「親子の情の深さ、夫婦の情の深さ」を描いていて、娯楽作品だけど、ホロリとするシーンもあって、よくできた作品だと思った。今後3本観る予定の「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」に大いに期待を持たせる内容だった。

さて、舞台の淡水。あんなに台湾へ行ってるのに、意外にも行ったことがない(笑)。「台湾行くけど、おすすめは?」とか聞かれて、「淡水で魚丸食いながら夕日を見るといいですよ~、サイクリングもできますよ~」なんてほざいているが、もう、どの口が言うねん!ってところだな(笑)。

衛視電影台 鮮肉老爸 4/23 (六) 晚上九點 全台首播(初回放映時TVCM)

《鮮肉老爸》- 野性的青春MV(劇中歌)

曹西平-野性青春(オリジナル)

(令和元年10月19日 シネ・ヌーヴォX)



 


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