【睇戲】『ラブゴーゴー』(台題=愛情來了)

獻給所有愛作白日夢的人
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シネ・ヌーヴォ通い2日目のこの日は、懐かしい1990年代の台湾がデジタルリマスターで蘇る『ラブゴーゴー』を観る。何もかもが今と比べて、ずっとシンプルだった時代。通信手段は、固定電話とポケベル。携帯がようやく普及し始めたころだった。当時、香港住まいだった小生にとっても、最初はもっぱら「ページャー=ポケベル」が呼び出したり呼び出されたりする手段だった。もし今もそのままの時代だったら、昨今の香港の混乱は起きていなかったかもしれない…。

台湾巨匠傑作選 二〇一九
ラブゴーゴー(台題=愛情來了)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『愛情來了』
英題 『Love Go Go』デジタルリストリア版
邦題 『ラブゴーゴー』
公開年 1997年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語

評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳玉勲(チェン・ユーシュン)

領銜主演(主演):坣娜(タン・ナ)、施易男(シー・イーナン)、廖慧珍(リャオ・ホイジェン)、黃子佼(ミッキー・ホアン)、馬念先(マー・ニエンシェン)、陳進興(チェン・ジンシン)

「おもろうて、やがて悲しき、またおもろい」という感じで、これはかなり小生のツボに入った作品。サービス精神も旺盛で、笑いあり涙ありでどんどん進んでいくのでダレ場がなく、色使いもカラフルで常に顔が緩んでいるという1時間半。

観る順番をしくじったなと思ったのは、陳玉勲(チェン・ユーシュン)監督はこれが2作目で、1作目が数日後に観る『熱帯魚』。『熱帯魚』から継続するネタもあったので、小生の場合は『熱帯魚』を観て、「ああ、そういうことね」と。

ベンガルに似た陳進興(チェン・ジンシン)演じるケーキ職人、今で言う「パティシエ」はメガネぽんち、今で言う「メガネ男子」。

ゆりやんレトリバーに似た廖慧珍(リャオ・ホイジェン)演じる、ポケベルから広がる恋、そして失望ともいえる失恋を経験する肥満の女の子が切ない。

馬念先(マー・ニエンシェン)は馬念先のまんまという、この上もない安心感(笑)。

以上の3人が同居人で、

施易男(シー・イーナン)演じた痴漢撃退グッズのセールスマン

彼は3人とは別のラインで同時進行する彼の物語がある。4人に共通するのは「なんだか冴えない」という点。そんな冴えない4人の奮闘記でもある。

で、この4人が物語を遣り回してゆくのだが、そこにケーキ店の女店主、ケーキ店にレモンパイを買いに来る美人美容師(メガネぽんちの実は同級生だった)、ケーキ屋で店頭のパンにチューインガムを入れ込んでクレームつけるタチの悪い男(これが問題のポケベルの持ち主だった…)を交えながら、交錯する恋模様が展開する。

ところで、オープニングに流れている台湾演歌は『水長流』。実は日本の歌で美空ひばりの『大川ながし』が原曲。90年代、香港の廟街(俗に言う男人街)では、よくこの歌が流れていて、ついにCDまで買ってしまった小生(笑)。今でもちゃんと歌えるよん(笑)。

痴漢撃退グッズのセールスマン、なんか『愛情萬歳』の骨壺のセールス君をふと、思い出した。そして彼の風体に90年代の香港での丁稚時代も思い出し、「ああ、あの頃、俺もあんなふがいなく冴えないセールスマンだったよな…」と、親近感を抱いていたら、あーらびっくり。意外とやるな!

ラスト、やっと「ポケベルの呪縛w」から解き放たれ、現実に戻ったおデブちゃんが食いまくっている横で、今度は携帯がブルブル震えている…。まさに通信手段が変革期を迎えていた時代だな…。

第34屆金馬獎
「最優秀助演男優賞」受賞:陳進興(チェン・ジンシン)
「最優秀助演女優賞」受賞:廖慧珍(リャオ・ホイジェン)
他5部門でノミネート

映画『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』デジタルリストア版予告

(令和元年10月20日 シネ・ヌーヴォ)



 


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