【睇戲】『台北セブンラブ』(台題=相愛的七種設計)

久々の映画。

7月以来だから3か月ぶりとは、こいつはいけない。よくその口で「映画?好きですよ~」と言えたもんだ(笑)。ま、しかし、これは縁のもの。観たい作品、観たかったけど時間が合わなかったなど、いわゆる「諸般の事情」もあるから、そこは仕方ない。と、言い訳はさておき…。

台湾巨匠傑作選 二〇一九
台北セブンラブ(台題=相愛的七種設計)

丁度、シネ・ヌーヴォで「台湾巨匠傑作選 二〇一九」、「台北愛情捷運系列=台北発 メトロシリーズ」と銘打って、台湾映画の大特集。これを逃すと、年内はちょっと観たい作品に巡り合えそうにないので、ホークスvsジャイアンツの日本選手権試合も大いに気なるところだし、天皇陛下の即位礼正殿の儀の行わるる日も厳粛な気持ちで拝見したいところだが、そこはまあ、それとして、とにもかくにもシネ・ヌーヴォへと馳せ参じるという次第。

まずは『台北セブンラブ』から。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『相愛的七種設計』
英題 『Design 7 Love』
*大陸公開時 簡『如果爱能设计』『Love can never be designed
邦題 『台北セブンラブ』
公開年 2014年
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳宏一(チェン・ホンイー)

領銜主演(主演):許瑋甯(アン・シュー)、莫子儀(モー・ズーイー)、黃璐(ホアン・ルー)、邱彥翔(チウ・イェンシャン)、白梓軒(トム・プライス)、王大陸(ダレン・ワン)、陳語安(チェン・ユーアン)
特別演出(特別出演):鄭有傑(チェン・ヨウチェ)、魏海敏(ウェイ・ハイミン)、曲家瑞(クリスティ・チュウ)、隆宸翰(クリス・ラン)

多分、日本で名前の知られているのは、黃璐(ホアン・ルー)と王大陸(ダレン・ワン)、そして監督の陳宏一(チェン・ホンイー)くらいかな。知られていると言っても、あくまで「中華電影マニアとか台湾映画愛好家の間では」って但し書き付きだけど。かく申す小生も、そんなもんだが、顔を見ると「あ、何かの作品で見たことあるかも…」って役者が多かった。

冒頭、重度の火傷を負ったと思われる女性の顔の大写しから始まる。この顔の持ち主が、あるデザイン会社に入社したことで、社内の恋の駆け引きが激化してゆく…。

コンセプトは「デザイン」と「恋愛」そして「時間」。

2014年、台北市は<2016 年世界デザイン首都>に選ばれ、デザイン業界は沸き立っていた。ドロシー(許瑋甯/アン・シュー)はかつての恋人バーズ(莫子儀/モー・ズーイー)に誘われ、上海を離れ台北のデザイン事務所で働くことに。進行中のデザインホテルの改装プロジェクトに加わる。ドロシーへの想いを断ち切れないバーズとクライアントのマークに迫られるが、フランスにいる元恋人を忘れられない。同僚は個性の強い人間ばかりだが、皆愛に飢えて いる。ホテルのデザインテーマは“愛”に決まるが、果たして無事“愛”はデザインできるのか。ドロシーが最終的に 手に入れるのは、誰の愛なのか。 引用元『台北セブンラブ』公式HP

ストーリーは「う~ん」だった。が、全体の雰囲気がスタイリッシュで垢抜けている。台北の街も「映しよう」でこうなるのか(笑)、と思いもよらぬ発見もあった。この垢抜け具合が、香港映画との大きな違いかな。今、話題の誠品書店なんかは、めっちゃ垢抜けしてるわな。

一方でこの「無国籍感」みたいな描き方がめっちゃ癪に障るのだ。国際市場を意識しているのかな? なんて思ってしまうが、いやいや、実際の台北はあんなにきれいじゃないよな(笑)。どうもそういう作品が増えてるな、台湾では。

タイトルが示す通り、「7つの恋物語」が描かれている。登場人物が自分の役柄を説明したり、エンドロールのサービス映像などで、がちゃがちゃとややこしくなりがちな複数の恋物語がうまく整理整頓されていて、工夫の跡が感じられる。そこは親切でよかった。

とは言え、ちょっと終盤はダレてしまった。「で、この流れ、どうオチをつけるのよ?」と思っていたら…。そのオチも面倒くさい気がしないでもない。

役者で言えば、上述の通り、『ブラインド・マッサージ』で好演した黃璐(ホアン・ルー)が、デザイン事務所のマネジャー、バーズ(莫子儀/モー・ズーイー)が上海から呼び寄せた元カノのドロシー(許瑋甯/アン・シュー)を煙たがるという役どころで、『ブラインド・マッサージ』とはまったく違う面を見せてくれた。その許瑋甯(アン・シュー)と言えば、昨年観た『目撃者 闇の中の瞳』の「魔性目線」が印象深いが、今回もなかなかの美貌で、クライアントの色狂いで頭空っぽの二世社長(白梓軒/トム・プライス)に色仕掛けでグイグイ迫っている。

王大陸(ダレン・ワン)は、かなりチャラい役どころ。これはこれで似合っていた。彼なんか売り出し方で、日本でも人気が出そうなんだが。小生は、どうしてもホークスの釜元豪とオーバーラップしてしまう。とにかくよく似てるんだから(笑)。

以下、小ネタだが、社長役の邱彥翔(チウ・イェンシャン)が、台湾男子の伝統的ヘアスタイル「山本頭」で出演。この人、こんな雰囲気じゃなかったよな…?

「デザイン」「時間」を象徴するのだろうか、時折、架空の都市が創造されていくCGが織り込まれるのだが、台北101らしきビルは当然として、なぜか通天閣がいつも描かれているのが、気になった。スカイツリーでもなく、東京タワーでもなく、あべのハルカスでもなく、何故に通天閣なのか? 監督さん、教えて!

一昨年に観た『太陽の子』の共同監督、鄭有傑(チェン・ヨウチェ)がタクシー運転手役で出演。パンフの監督インタビューによれば、台湾映画が好きな黃璐(ホアン・ルー)へのプレゼントだとのこと。

しかし、台北が「2016 年世界デザイン首都」に選ばれていたなんて、初耳だ。もっとも、劇中のナレーションでは「応募したのは台北だけだったから当然」ということだったが(笑)。

実はこの作品、長らく日本で公開されていなかった。そうなれば、恐らく日本で日の目を見ることはないだろう、普通は。そんな映画は山ほどある。それでも「日本で是非!」と思った、台湾人の両親を持ち、日本で生まれ育った女性が台湾映画を配給する個人会社を立ち上げ、さらにクラウドファンディングで公開資金を募ったところ、見事に目標額を達成し、公開に至ったという作品。いや~、恐れ入る。映画好きの鑑のような人だな。

第51屆金馬獎
「最優秀新人賞」ノミネート:許瑋甯(アン・シュー)
「最優秀視覚効果賞」ノミネート:有機像素有限公司

相愛的七種設計 正式預告

(令和元年10月19日 シネ・ヌーヴォ)



 


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