【睇戲】『熱帯魚』(台題=熱帶魚)

獻給所有愛作白日夢的人
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天皇陛下にあらせらては、この日、即位礼正殿の儀に臨まれ、御即位を世に宣明され、参集した内外の代表が寿いだ。いつの間にやら、自分と同世代の御君が天皇に御即位なさる時代になっていた。皇后陛下にあらせらては、小生と同い年である…。

そんな日に台湾映画を二本観る小生も、どうしたもんだかと思うが、まあ、せっかくいただいたお休みである。一連の儀式は録画してあるので、後程、ゆっくり拝見するとして、好きなことに時間を使いましょう、というところだ。

2日前に観た『ラブゴーゴー』があまりにもおもしろく、その監督、陳玉勲(チェン・ユーシュン)の第1作目だというので、期待値が相当高い『熱帯魚』。いやー、これがアナタ、なかなかのものでして…。

台湾巨匠傑作選 二〇一九
熱帯魚(台題=熱帶魚)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『熱帶魚』
英題 『Tropical Fish』デジタルリストリア版
邦題 『熱帯魚』
公開年 1995年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語

評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳玉勲(チェン・ユーシュン)

領銜主演(主演):林嘉宏(リン・ジャーホン)、席敬倫(シー・チンルン)、文英(ウェン・イン)、 林正盛(リン・チェンシェン) 、阿匹婆(アピポー)、連碧東(リェン・ピートン)、黃美文(ホアン・メイウェン)

これは傑作。先に観た『ラブゴーゴー』共々、小生が返還前後の浮かれた香港で、浮かれた生活を送っている頃、台湾でこんな面白い映画が作られていたのだから、「何をのほほんと生きていたんですか、君!」と過去の自分を嘲笑したい気分だ(笑)。どうでもいいハナシではあるけど(笑)。

しかし何ですな、もう20年以上も前の作品が、またこうして最新の技術で新作のごとく蘇り、大阪でスクリーンで観ることができるのだから、まあ、えらい時代ではありますわな…。

いやまあそれにしても台湾の受験戦争の厳しさったらもう、ってところだ。この映画でも、誘拐犯一家が誘拐した志強(ツーチャン=演:林嘉宏/リン・ジャーホン)に優しすぎるくらい優しく、受験の心配までして勉強させるのだから。

誘拐された志強の女先生は、『ラブゴーゴー』でもやっぱり首にギプスを装着して、陳進興(チェン・ジンシン)演じるケーキ職人のお見合い相手にどうか、とケーキ屋のおばさんが勧めるシーンが…。観客をクスッと笑わせる心憎いキャスティング。「あ!この人!」と思ったもん。多分、作品が登場した順番通りに、この『熱帯魚』から観ていたら、クスッとがギャハになってたかもね(笑)。

で、この女先生の怖いったらありゃしない。日本で今、あんな体罰したら大問題になるけど、20年以上も前なら、まだアリだったかな…。そのギプスの女先生を演じたのは、陳季霞という台湾ではかなり有名な声優で、日本のアニメ作品も多数こなしている。

嘉義に近い壮大な東石村の干潟の風景に心洗われるのだが、そこで砂で作った巨大うんこが登場!しかしあの干潟を見るにつけ、台湾ではいつも都市部でブラブラしているのは、あまりにももったいないと感じる。再び「何をのほほんと生きていたんですか、君!」と、今度は叱責したい気分(笑)。

文英(ウェン・イン)演じる誘拐犯の叔母さんが、誘拐犯一家を仕切る。いかにも台湾のおばちゃんという感じ。このおばちゃん、見世物小屋で「蛇女」を演じる。昔、近所の山阪神社で夏祭りに見世物小屋があり、「蛇女」を見たかったが親から許し出ず。いま、その正体を見た気分(笑)。そしてこのおばちゃんの演技が高く評価され、第32屆金馬獎で見事、最優秀助演女優賞に輝く。残念ながら2009年8月に世を去っている。

その誘拐犯一家のおばあちゃん役の阿匹婆(アピポー)が、さすがの存在感。この人がいるから、誘拐犯一家も極悪人一家ではなく、いい人たちになったのかもしれない。なにせ台湾が日本だった時代から舞台や映画で活躍してきた人だというから、なるほどの存在感だ。この方も2009年に亡くなっている。

こういう、語弊があるかもしれないが、田舎ののんびりした家族の息子に誘拐されたことで、重くなりがちな誘拐というテーマが、コミカルに描かれていて、誘拐の映画だということを忘れさせてくれる。何と言っても、誘拐報道が徐々に「志強は(高中聯考=現在は會考。高校入試の共通一次試験のようなもの)を受けられるのか?」に焦点が変わっているのが、上述の「台湾の受験戦争の厳しさ」をよく示しており、現地で共感を呼んだのだろう。

攫われた子役二人は、演技を楽しんでいるようでよかった。しかし誘拐の主犯格が、あっさり死んでしまったのには、「おいおい…」と思ったが、後の展開を考えると、その方がよかったね(笑)。

輝かしい受賞の数々が内外の評価の高さを物語る。

第32屆金馬獎
「最優秀助演女優賞」受賞:文英(ウェン・イン)
「最優秀脚本賞」受賞:陳玉勲(チェン・ユーシュン)
「最優秀作品賞」「最優秀監督賞」「最優秀助演男優賞」ノミネート
第48回ロカルノ国際映画祭
「青豹賞」受賞
「国際批評家連盟賞」受賞
1995年モンペリエ映画祭
「ゴールデンパンダ賞」受賞

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(令和元年 天皇陛下即位礼正殿の儀の行わるる日 シネ・ヌーヴォ)



 


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