【睇戲】『振り向いたらそこに』(台題=奉子不成婚)

勝手に「台湾映画祭」やっております(笑)。ま、シネ・ヌーヴォの「台湾巨匠傑作選」および「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」に乗っかってるだけのことなんだけど(笑)。

熱帯魚』に続くこの日の2本目はその「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」から『振り向いたらそこに』を観る。これもなかなか優れた作品で、ちょっとウルっときてしまったり、「おお、それやるか!」と笑ってしまったりと、そこは台湾で俳優、映画監督として活躍する北村豊晴なればこそってのもあったりで、なかなか楽しいひとときではあった。

今回は板南線文湖線(正式名称:文山內湖線)が交差する忠孝復興駅を中心とした物語。駅周辺はそごうや微風廣場など大型ショッピング施設が多いので、小生もよく使う駅。文湖線って、以前は木柵線って言ってたような…。板南線は利用頻度の高い路線。台北駅や忠孝新生、西門、龍山寺、板橋など目的とする駅が多いし、小生のお取引先の多くがこの路線界隈にあったからねぇ…。ホント、懐かしいな。久しぶりに台湾へ行きたい…。その熱病を少しでも和らげようと台湾映画を観るのだが、逆効果だ(笑)。

台北愛情捷運系列 忠孝復興站
振り向いたらそこに(台題=奉子不成婚)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『奉子不成婚』
英題 『The Thin Blue Lines』
邦題 『振り向いたらそこに』
テレビ放映年 2016年4月16日(衛視電視台)
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):北村豊晴

領銜主演(主演):張少懷(チャン・シャオファイ)、蔡淑臻(ジャネル・ツァイ) 、 馬如龍‬(マー・ジューロン) 、 史丹利(スタンリー) 、 范時軒(アマンダ・ファン) 、 孫國豪(リチャード・スン)、廖慧珍(リャオ・ホイジェン)
客串演出(ゲスト出演):王鏡冠(ウオン・チンクヮン)、紀培慧(テレサ・チー)、樊光耀(ファンクヮン・ヤオ) 、莫允雯(クリスティーナ・モック)

コーヒーをこよなく愛す売れない映画プロデューサー・湘海が美人OL・小嫻に一目惚れ。まったく相手にされなかったが、コーヒーの香りが二人の距離を近づけ、結ばれるのだが…。“授かり婚”を題材に揺れ動く男女の感情と突然に娘の妊娠を知らされた父親の葛藤コミカルに描く。烈火の如く怒る小嫻の父を前に、どうする?湘海…。

まず、「おお!」と思わず声を上げそうになったのが、下の写真のシーン。あの映画のあの場面の前で、壁ドンときたもんだ(笑)。そう、台湾新電影(ニューシネマ)の旗手、楊徳昌(エドワード・ヤン)の名作『恐怖分子』のもっとも象徴的なシーンである、「あの場面」の「あの写真」。北村監督の台湾映画愛を感じるシーンではないか! 好きなんだろうな、台湾映画が。

作品のテーマの一つは、授かり婚、要するに「できちゃった結婚」。中国語では「奉子成婚」と言うが、中文タイトルの通り「不成婚」となっているのが、この映画のミソでもある。ま、できちゃう時ってあんなもんだわなと(笑)。いやいや、小生はよく知りませんけどね(笑)。しかし英文タイトルの『The Thin Blue Lines』ってのが、まさに「できちゃった」で、えらい直球タイトルである(笑)。

男主人公の張少懷(チャン・シャオファイ)を筆頭に、キャスティングが良い。

売れない映画プロデューサーゆえに滞納を続ける湘海のもとに、家賃取り立てに来た大家を演じた廖慧珍(リャオ・ホイジェン)は、『ラブゴーゴー』でおデブな女の子役だった。

MRTの車内で小嫻役の蔡淑臻(ジャネル・ツァイ) に何度か似顔絵やイラストを渡した、ミステリアスな雰囲気の女性客を演じた紀培慧(テレサ・チー)は、シリーズ最終章『ハロー、グッドバイ』で、主役となり、その謎のベールがはがされるのだが、当然ここでは謎はベールに包まれたまま。

娘の小嫻が可愛くて仕方ないことから、湘海にも厳しく接する小嫻の父親だが、その背景を知り、思わずウルっときてしまう。特に「あいつは頼りない男だけど、絶対、夫を見下すな」と小嫻に語るシーンは感動の嵐だった。その父親役の馬如龍‬(マー・ジューロン)は台湾映画には欠かせぬ名優だったが、残念ながら今年の6月9日に世を去った。

史丹利(スタンリー)演じる湘海の友人も、非常にいい味を出していた。ああいう友達は欲しいね。

小嫻の父親に説得されたんだろうけど、小嫻の勤めるショップに老人のチア部隊を引き連れ、赤いタキシードでやって来て結婚を迫る湘海には大笑い。あれやられた方は、それこそ百年の恋も冷めるというもんだ(笑)。でも、なんか台湾的で「ああ、こういうのもアリかな」なんて思ってしまう(笑)。ほかにも「ああ、台湾的でいいな」と思うシーン、小ネタがイイ感じで散らばっており、台湾好きの日本人にはうれしいところだが、台湾人にはどう映ったかな…?

父親という観点で見ると、9年がかりでオデュッセウスの物語の自主映画を撮っている湘海は、オデュッセウスに自身の父親をオーバーラップさせる。だからこそ、9年もの歳月を費やすことができるのかもしれないが、最終的に周囲の人間すべてを巻き込んで完成した映画は、自主映画以下の出来栄えで(笑)。それにしても、湘海の服装センスはダメ男ぶりをいかんなく発揮している(笑)。そんな湘海も最後には、男として、夫として、父親としてちょいと泣かせてくれるヤツになっていた。

面白い展開で、出演陣の奮闘ぶりや楽しんで撮っている雰囲気もよく伝わって来たから「★★★★☆」の高評価にしたけど、突っ込み出したらキリがないくらい「おいおい…」ってのも結構あった。そこがまた、魅力ではあったんだけど。

主題歌のflumpool『証』がうまいこと使われている。flumpoolはよく華語片で使われているな。そんなに中華圏で人気があるのか?

第51屆金鐘獎
「ドラマ、電視電影部門主演男優賞」ノミネート:張少懷(チャン・シャオファイ)

flumpool 「証」 Music Video (Full Chorus ver.)

衛視電影台 奉子不成婚 4/16 (六) 晚上九點 全台首播

(令和元年 天皇陛下即位礼正殿の儀の行わるる日 シネ・ヌーヴォX)



 


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