【睇戲】『哭き女(なきおんな)』(港題=哭喪女)

香港インディペンデント映画祭
『哭き女(なきおんな)』(港題=哭喪女)

無題「香港インディペンデント映画祭」、2本目に観たのは『哭き女(なきおんな)』。『憂いを帯びた人々』を見終えた、ほぼ15分後からの上映である。「ナントカ映画祭」は短期間に良作を一気に観られるのがうれしいのだが、その分、けっこうハードスケジュールとなる。来れる日、来れない日、来れる時間帯、来れない時間帯、こうした中で予定を組むとどうしても続けて2本、3本を観ることになってしまい、記憶が入り込んでしまうこともあるから、気を付けないと、あらぬ世界に迷い込んでしまうかもしれない…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること

750x1050_movie12760posterskeening_woman-hk港題 『哭喪女』
英題 『Keening Woman』

邦題 『哭き女(なきおんな)』
公開年 2013年
製作地 香港
言語 広東語
評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):許雅舒(リタ・ホイ)

主演(主要キャスト):詩雅(ミシェール・ワイ)、蔣蜜(ミツ・ハナ)、柳俊江(ライアン・ラウ)、高翰文(ホンマン・コウ)、梁榮忠(ジョーイ・レオン)

いや~、実験的、前衛的、挑戦的、画期的、革新的…。「なんとか的」っていうのが全てあてはまるような作品だった。それらの評価って裏返すと「説明しようがない」とでも言うか…(笑)。とにかく小生には、理解しがたい内容だった。何をどう見出したらよいのか、最後の最後までわからんかった、悪いけど…。

「インディペンデント」を超越した作品って印象。この作品は絶対に商業ベースには乗らないし、そもそもそんなつもりで作ってないだろうから、こういうことができたんだろうな…。海外での評価も高いのだが、いやもう、降参です(笑)。

まず、監督の許雅舒(リタ・ホイ)と言えば、何と言っても香港における「実験的映画」の第一人者で、常にこのジャンルの先端を走っている。監督業と並行して、香港城市大學の創意媒體學院で教鞭をとっている。この作品もエンドロールに城市大学の名前があったから、支援を受けているんだろう。

『哭き女(なきおんな)』というタイトルから察せられるとおり、葬式で泣く女性の物語である。ただし、日本の『おくり人』のようなヒューマンドラマではなく、もちろんドキュメントでもない、非常にオカルト的な、きれいに言えば「スピリチュアル系」の作品。

主演の哭き女を演じた詩雅(ミシェール・ワイ)が美しい。てか、美しすぎる。役柄だからかもしれないが、視線に狂気を感じることもあった。そこらへんには撮影の妙も感じられた。彼女が、自分の過去とは関係ない過去の記憶に巻き込まれて、要するに「狂って」いくというストーリー。詩雅は過去に『ファイアー・レスキュー(原題・救火英雄)』、『77回、彼氏をゆるす(同・原諒他77次)』で観ているが、まったくイメージが違った。まるで別人。

その哭き女の彼氏なのか旦那なのかよくわからんけど、同居人が「新聞王子(ニュース王子)」こと柳俊江(ライアン・ラウ)。王子と呼ぶには、もうちょっとねぇ…って年齢だが、彼は香港人なら誰でも知っている。俳優ではない、そもそもはTVBのアナウンサー。基本、香港人は地上波はTVBしか観ないので、よく知られている。映画出演では『SARA(原題・雛妓)』で観た。この同居人が、やたら夢の話をするのだが、「ずいぶん夢見の悪い男だな」と(笑)。

哭き女の意識に入り込んでくる「過去」に登場する女性を蔣蜜(ミツ・ハナ)。非常に不気味な表情をしっかり演じていて、観る者の心にまで入り込んでくるようで、けっこう怖かった。

終盤に流れる黃衍仁が歌う『再會吧,香港!(さよなら、香港!)』という歌がこれが名曲。香港をうまく歌にしている。「享楽におぼれる者がおれば、革命のために血を流す者もいる 身を売る女がおれば、祖国のために身を尽くす少女もいる……」こんな具合な歌詞。You Tubeに本人がアップした動画(画面、ずっと同じw)があるので、ぜひ、聴いてみて。広東語わからなくても歌詞が載っているので、適宜、返り点を打ちながら歌詞を追うと、おおむね意味がわかるんじゃないかと。

評価「★★☆」のうちの★☆は、この歌に捧げたいほどって言うと、出演者各位には申し訳ないが…。

また、映画の予告編も下記に載せておくので、どんな映画かさらっと雰囲気だけでも味わってくださいよ。小生が映画を観ながら、いかにもがき苦しんでいたかを多少はわかってもらえるかも(笑)。

《哭喪女》預告片 Keening Woman Trailer

(平成29年6月5日 シネ・ヌーヴォ)



   


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