【睇戲】『29+1』(港題=29+1) <アジアプレミア上映>

第12回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|Special Focus on Hong Kong 2017

『29+1』(港題=29+1)

poster今映画祭、最初の純・香港映画となる作品。
監督の彭秀慧(キーレン・パン)は女優ではあるが、小生の中では香港では数少ない舞台演劇のスーパースター。役者としてはもちろん、脚本から演技指導までなんでもこなせる。
この『29+1』もずいぶん長い間、舞台で演じてきた一人芝居である。在住中はついに鑑賞の機会を得られなかった。すぐに完売するからである。長年の希望が、大阪アジアン映画祭でようやく映画という形になって叶うことになった。

睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題 『29+1』
英題 『29+1』
邦題 『29+1』
現地公開年 2016
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):彭秀慧(キーレン・パン)
編劇(脚本):彭秀慧

領銜主演(主演):周秀娜(クリッシー・チャウ)、鄭欣宜(ジョイス・チェン)
主演(出演):蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)、楊尚斌(ベン・ヨン)、金燕玲(エレイン・ジン)、岑珈其(カキ・シャム)

<ストーリー>
クリスティ(周秀娜)は、1ヶ月後の30歳の誕生日を前に、大いに焦っている。仕事では「デキる上司」(金燕玲)に抜擢されストレスも増大。長い間柄だったカレシともぎくしゃくし始める。追い打ちをけるように、父親の死、アパートの部屋が売りに出されと踏んだり蹴ったりの日々。家主の計らいで、家主の親戚・ジョイス(鄭欣宜)がパリ旅行で不在の間、部屋を借りることになる。ジョイスの日記から、偶然にも自分と同じ誕生日だと知り、最初は日記の主の明るく前向きな生き方に戸惑いながらも、次第に共鳴してゆく…。

第12回大阪アジアン映画祭、堂々の「観客賞」受賞に輝いた。女性が主人公の作品が多かった今年の香港作品の中で、やはり頭ふたつくらい抜きん出ていた作品だろう。彭秀慧監督が長年にわたり一人芝居で温め続け、満を持しての映画化だけに、非常に見ごたえのある作品となっていた。ますます舞台を観たくなったが、この映画が集大成であって舞台はもうやらないとか。ただ「2035年に、59プラス1をやる」と2013年の最後のステージで観客と約束したと言う。すごく見たいけど、う~ん、俺、生きてるか?(笑)

「HONG KONG NIGHT」で挨拶する彭秀慧監督(3月10日、ABCホール 筆者撮影)

鄭欣宜がすごくよかった! 父親が歌手の鄭少秋(アダム・チェン)、母親がお茶の間の人気者だった肥姐こと故・沈殿霞(リディア・サム)。幼いころからテレビに出ていたが、一時、強烈なバッシングを受けた時期もあった。その都度、肥姐は「これでへこたれるようなら、この子はそれだけの子だったということ」と、厳しく突き放していたのを思い出す。今回、すっかり大人になったばかりか、芸域の広さを存分に見せつけてくれた彼女の成長ぶりが、自分の子供のことのようにうれしかった。

そのカレシ役の蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)は、しれ~っと(笑)、大阪アジアン映画祭の常連である。2014年『狂舞派』、2016年『わたしたちが飛べる日』、そして今作。母親に負けぬ肥姐っぷりである鄭欣宜に対して優男の蔡瀚億とのカップルが、この作品で光彩を放つ。

一方のカップルが日ごとに冷え込んでいき、決裂を迎えるのに対し、こちらのカップルはジョイスの身に重大なことが起きていることが発覚したことで、一層絆を強めていっている。そこから先の展開は、特に女性ならば涙腺が緩みっぱなしだったに違いない。男子の小生ですら、鼻の奥がツンツンしたのだから。女性客が圧倒的に多いアジアン映画祭のこと、この作品が観客賞を獲得するのも頷けるというもんだ。

この場面、すごくよかった。このあたりから鼻の奥がツンツンし始めた。どういう場面なのかは、近々に香港でいよいよ上映が始まるので、ご自分でお確かめのほどを(笑)

終盤がなんだか駆け足をし過ぎた感あり。そのためにごちゃごちゃしたように思えたのがちょっと残念だが、監督2作目としては上々出来以上。功夫片、武侠片、古装片、ノワール、警察もの…、なかなか女性を主体に描く作品が出てきにくい土壌があった香港映画だが、こういう作品を観るにつけ、香港映画もずいぶん変わったなぁと実感することしきりである。え?「今頃何を言ってるんや!」って? ごめんなさい…。

しかし…。
女性って、30歳を目前に控えると、あんなにジタバタするもんかね? あああ、再び、ごめんなさい…。

 《29+1》電影版:先導預告

(平成29年3月7日 阪急うめだホール)




 


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