この日観る作品は、18時20分から。これはもう早退するしかない…。この日を逃すともうチャンスはない。なにせワールドプレミア。香港ですらまだ上映されていないのだから、一般公開がいつになることかもわからない。そもそも、チケット販売初日にまったく販売サイトにつながらなくて、ようやくつながったと思ったらすでに完売。この日のチケットも、仕事中にトイレにこもって必死のパッチでとったちゅーねん(笑)。その割にはこの上映回は完売にはなってなかったんやけどね(笑)。まあまあ、そんなこんななわけで「ほな、お先に」と、定時よりちょいと早めにお暇してABCホールへ。
コンペティション部門|特集企画《Special Focus on Hong Kong 2022》
阿媽有咗第二個 邦題:ママの出来事 <ワールドプレミア>
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
港題『阿媽有咗第二個』 英題『Mama’s Affair』
邦題『ママの出来事』
公開年 現地4月1日予定 製作地 香港 言語:広東語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):彭秀慧(キーレン・パン)
編劇(脚本):彭秀慧
監製(プロデューサー):彭秀慧
領銜主演(主演):毛舜筠(テレサ・モウ)、姜濤(ギョン・トウ)、柳應廷(ジャー・ラウ)
主演(出演):岑珈其(カーキ・サム)、鄧麗英(エミー・タン)
客串(ゲスト):古巨基(レオ・クー)
監督の彭秀慧(キーレン・パン)と言えば、思い出すのは非常に感動的な作品だった『29+1(邦:29歳問題 *初公開時は『29+1』)。第12回大阪アジアン映画祭の観客賞受賞作である。『29+1』の観客賞には全く異論なく、逆にほかの作品だったら小生はもちろん、他のお客も一緒になって暴動起こしてただろう、ってくらいの良作だった。中でも鄭欣宜(ジョイス・チェン)の好演が強く印象に残っている。なので今作も非常に楽しみにしていた。きっとそんな人がたくさんいての、初回完売となったんだろう。まあ、出演者人気もあるけどね(笑)。
で、今作はと言うと…。
<作品導入>
かつては音楽業界で敏腕マネージャーとして名を馳せていたメイフォン。結婚を機に仕事を辞めたが、息子のヒンも今では高校3年生。再び働きに出ようと、昔の仲間に再就職先を紹介してもらうが、そこは子供たちが通う音楽教室だった。ある時、同僚の友人で、飲食店で働くフォン・チェンの歌声を聞いたメイフォンは、彼を歌手デビューさせようと考える。彼自身の実力や努力はもちろん、メイフォンの手腕もあり、フォン・チェンは順調に売れていく。しかし、その一方でメイフォンは家庭の問題に頭を悩ませていた。<引用:「第17回大阪アジアン映画祭作品紹介」ページ>
製作が「英皇電影」の商業映画、アイドル映画である。大阪アジアン映画祭で、この手の作品がかかるのは珍しい。どうしたことか、今回はこの週末に観る『梅艷芳(邦:アニタ)』もそうだが、バリバリの商業作品が上映される。小生的にはいい傾向ではある。
そして主演である。香港の超人気男子アイドルグループ「MIRROR」から二人。ソロ歌手としても超人気の姜濤(ギョン・トウ)が主演中の主演となっている。映画を観て思ったが、「もうこれは姜濤の映画やな」と。香港ではきっと大ヒットするよ、これ。もう一人MIRRORのメンバーで柳應廷(ジャー・ラウ)も出てるしなおさらだ。小生的には、MIRRORも興味はあるけど、そこはやっぱり毛舜筠(テレサ・モウ)と岑珈其(カーキ・サム)なんだわな(笑)。
▼▼以下、ネタバレにご注意!見たくない人はスルー願います▼▼
上に紹介の通り、茶餐廳の店員が元敏腕マネージャーに才能を見出され、あっと言う間にトップアイドルに…という、もうほとんどあり得ないシンデレラボーイのストーリーなんだけど、なんか引き込まれるものがあった。あれは一体、なんなんだろう…。彭秀慧のマジックなんだうか?
そこはねえ、単なるアイドル顔見せ映画にならないように、色々と仕組んでいる。そういうのがあっての大阪アジアン映画祭出品なわけだけど。
毛舜筠が演じる元敏腕マネージャー、すでに夫婦間は冷え切るところまで冷え切り、離婚を視野に置いてそろそろ仕事を再開しようとしていたところ、「音楽の仕事、あるよ!」とかつての仲間に紹介されたのが、子供の音楽教室。彼女にしたら「まあ音楽の仕事に違いないけど…」ってところ(笑)。そこの若いスタッフが、岑珈其と鄧麗英(エミー・タン)。さあ、ここにも出て来ましたよ、岑珈其が! 鄧麗英って知らんわ~って思いつつ、検索したら『大師兄(邦:スーパーティーチャー 熱血格闘)』に出ていたようで…。で、この教室に通う子がぐずったところに外賣でやってきたのが、姜濤演じる茶餐廳のフォン・チェン。ぐずった子をなだめるために、ダンスと歌を披露するのを見た元敏腕マネージャー、「これは売れる!」とピピっと来たわけですな。
元々、音楽の道へ進みたかったが、とある事情であきらめていたフォン・チェンだが、その気になってゆき…。まあ、そこからはとんとん拍子で話が進む。その「とある事情」を解決とまではいかないが、解決の方向へうまく軌道修正する元敏腕マネージャー。何かと敏腕であります(笑)。
ただ、敏腕を発揮できないのが自分の家族のこと。柳應廷(ジャー・ラウ)演じる息子が一筋縄ではいかない。優等生なんだけど、何かとママを困らせる。最大の原因は、自分に相談なく、ママたちは事を勝手に決めて進めるという点。両親の離婚、フォン・チェンを家に住まわせる…。一つ一つが気に入らない。普段は澄ましている彼だが、ついに爆発して…。
最初は観ていて「こいつ、気に入らん!調和を乱してる!」と思ってたんだが、次第に「うん、わかるわかる!」と彼の味方になっている自分に気づく。そうなんだよな、家のこと、勝手に決めて進められるとムカつくんだわ。小生の場合は「長男に相談なしかぇ⁉」で、彼の場合は「一人息子に相談なしかぇ⁉」ってハナシだ。特に親の離婚の問題は堪えただろうと思う。ちょっとかわいそうだ。それに輪をかけてママは歌手デビューさせたフォン・チェンのマネジメント業に夢中だし。自分だけ置いてけぼり食らったみたいな状態にされちゃ、たまったもんじゃない。
仕事で奔走しながらも、抱える問題を一つ一つ良い方向へと修正してゆく敏腕マネージャーのメイフォン。これまでの小生の印象に残る毛舜筠にはなかった役どころだったが、すごくよかった。これが「人生の積み重ね」ってやつだろうな。女優としてだけでなく人間として、いい年の取り方をしているなぁってのが、伝わってきた。劇中の敏腕マネージャーは子供が急に二人になったようなもんで、大変だわな…。ってのを自然に演じていてさすがである。そんなわけで中文タイトルは『阿媽有咗第二個』となったのかな(笑)。
そうそう!敏腕マネージャーさんが休職前に売り出した歌手として、古巨基(レオ・クー)が実名(やったかな?)で登場して、フォン・チェンとデュエットしていた。歌の上手い古巨基とちゃんと歌えるんだから、姜濤自身もなかなか歌が上手いってことかな? しかし古巨基は昔と変わらんねぇ。
そして敏腕マネージャーさんの復帰先となった音楽教室のスタッフを演じた岑珈其、鄧麗英の二人は、恐らく監督の思うような演技を見せてくれたんだと感じた。それにしてもこの二人、ずっとフォン・チェンに付きっ切りだったけど、音楽教室の仕事はどうなってねん?と、上映中、何度も聞きたかったんだが、そこはまあ、娯楽映画ってことで大目に見ておく(笑)。
MIRRORの二人に関しては、映画初出演とは思えぬ好演。今後オファーが増えると思う。監督のインタビューにもあるんだが、この二人が共演するのはMIRRORだからというわけでなく、たまたま、そうなったとのこと。そんなこんなに関しては、下記に紹介する「監督インタビュー」で、ご覧を!その話を聞いていても、映画を観ても感じたんだが、一応、MIRRORの二人が映画初出演で共演!ってことで、ファンを中心に早くから盛り上がっていた本作だが、実際に映画をやりまわしていたのは、やっぱりベテランの毛姐こと毛舜筠やったなぁと。そりゃそうだわな。
こうして小生もようやく今を時めく「MIRRORの洗礼」を受けたわけである(笑)。彼らはこれまで芸能人を専属契約でほぼ独占してきたTVBには出演しない。新興のViuTVのオーディション番組『Good Night Show 全民造星』から生まれたグループだから。それもまた、今どきの香港の若い人には受ける要因かな。あと、姜濤の歌も何曲か披露されていたけど、ああいうか細い声は香港の若い女性にモテる。これ、今も昔も変わらない。なんでだろうね…。
↓↓↓監督インタビューはこちらから!
OAFF 2022『ママの出来事 / Mama’s Affair』監督インタビュー
あ、まだ香港では上映されてないんで、予告動画も香港用のポスターもありませんよ。悪しからず。
(令和4年3月15日 ABCホール)
幸せになるために解決すべき、いくつかの事柄について。
13年に渡って愛されてきた独り舞台を映画化。観客賞受賞の大阪アジアン映画祭では「とんでもない傑作」という賛辞がSNSに溢れ、本国で公開されるや7週ランクインの大ヒット。あらゆる世代から圧倒的共感を得た。(amazon.com)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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