【睇戲】『アリのままでいたい』

『アリのままでいたい』

子供たちは夏休みである。子供のいない小生にはまったく関係ないハナシではあるのだけど、とは言え、どこかで「夏休み気分」も味わいたいってのが、男の子の男の子たる…(笑)。さりとて、海水浴場へ繰り出すのも面倒だ。虫カゴと網を持って近くのお寺やお宮へ行くわけにもいかんだろう(笑)。

そんな折、それはもうとってもとっても「夏休み」な映画が公開中と言う。それも3Dだと言うではないか。実はけっこう映画を観ているけど、3Dはまだ未体験。うってつけだ、行ってみよう!
ってわけで『アリのままでいたい』を観てきた。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

arinomamaposter2『アリのままでいたい』3Dバージョン
公開年 2015年
製作地 日本
言語 日本語

評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

撮影総監督:栗林 慧
監督:鴨下 潔
音楽:菅野祐悟

出演する昆虫:39種類

ボイスキャスト:DAIGO、吉田羊、杉咲花
アニメーション部分の声:藤原啓治、矢島晶子

主題歌:福山雅治『蜜柑色の夏休み2015』

いや~、男子の心をくすぐる、素晴らしい映画だった。1939年(昭和14)生まれの栗林撮影総監督は、自衛隊員、保険会社勤務の傍ら、写真技術を学び、69年からフリーの「生物生態写真家」として活動を初めたというから、いわばこの世界の第一人者。77年に故郷の現・平戸市(長崎県)に移り住む。この『アリのままでいたい』も同地が撮影地。

この作品の魅力は、昆虫の世界のあれやこれやであるのは言うまでもないが、同時に撮影地の四季の風景の素晴らしさにも、感動する。行ったこともない土地なのに、その風景にやたらと「懐かしさ」を感じるのは、日本人のDNAか…。それとも、脳みそのどっかの引き出しにしまわれている、あの日々の思い出が、顔をのぞかせたのか…。

子供の頃は、毎年夏休みに父の田舎である、和歌山の超山奥で何日間か滞在するのが恒例だった。あのころのことを思い出す。都会では決して見ることのない、様々な昆虫をはじめとした生物。中でも興奮したのは、無数のホタルの群れと、「アホほど」獲れるカブトムシとクワガタ。それもかなりの大型で色つやがとてもいいやつらだ。そんな日々だったから、いつも大阪へ帰るのが悲しくって、泣いていたなぁ…。線路の向うから、SLの汽笛が聞えると、そりゃもう、悲しさの頂点ですぜ…。
そんな思い出を鮮明に、久々に甦らせてくれたのは、非常にうれしかった。

単に昆虫の生態や珍しい昆虫を特殊なカメラで捉えて見せてくれる(いや、それだけでも充分満足なのだが)だけでなく、それぞれにストーリーを持たせていることで、昆虫の生態が、より身近なものに感じたり、興味を拡大させるきっかけになっているのが、いいところ。
とりわけ、カマキリの一生は印象深く、最後は外敵と判断したメスに頭を食いちぎられても、種の継続のために一生懸命交尾するオスの姿には、胸を打たれた。

「たかし」とその父親「クワノガタ博士」が登場するアニメーション部分は、大人的には「あってもなくてもいいけど」という場面だが、何回かこれが挟まれるのは、子供視線ではよい「ブレークタイム」になったかと思う。人気漫画家の地獄のミサワが描いているので、キャラ的には多くの人が見覚えもあって、なじみやすい。

一応、今回はせっかく3Dで公開している座館があるのだから、3Dを初体験しようというのでそうしたが、これ、2Dでも充分に伝わるだろうし、とにかく映像がきれいなので、浮世の垢にまみれた大人が童心に帰って映画を観ている間だけでも、心穏やかになるには最適な「夏休み映画」だと思う。子供連れで来るのはそれとして、一人で来てうっとりするのもよろしいですぜ。小生含め、そういう「元・男の子」のお客も結構いた(笑)。

やっぱ、夏は昆虫よ!
ジャポニカ学習帳の表紙から昆虫を排除するなんて、とんでもないぜ!

*作品の性格上、甘口、辛口の劇評はなし

(平成27年7月22日 梅田ブルク7)


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