【上方芸能な日々 文楽】平成27年夏休み特別公演<1>

人形浄瑠璃文楽
平成二十七年夏休み特別公演 第一部<親子劇場>

まずは訃報から。
小生が夏休み公演第一部を見物した翌日、人間国宝の竹本源大夫が浄土に旅立たれたとの報。思えば、4月の吉田玉男襲名披露公演初日、幕間で行われた各賞表彰の場で、久々にその姿を見たのが、最後の「舞台」だった。
高校生時代、文楽をなんとなく見始めたころ、源大夫はまだ前々名の「織大夫」。以来、綱大夫になっても源大夫になっても「織さん、織さん」と呼ばせてもらっていた(もちろん、アカンたれやからご本人を前にしては、とても恐れ多くて、言えませんが)。
「重低音の浄瑠璃しはる」というのが、小生若き日の織さんのイメージ。そんな織さんをいつまでも忘れないでおきたいと思う。

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さて、夏休み公演2日目、まずは第一部のお子さん向けの部を観てきた。
客席は、三分の一がお子さん。その反応も様々。両サイドで白河夜船の両親をよそに、興奮したのか立ちあがって手をたたく子、逆に、両親は堪能していても、まんなかのお子は、すやすや寝ているとか。大人ばかりの客席よりも、お小さい方たちの多い客席の観察の方が数倍面白し。って、芝居を見なさい、浄瑠璃を聴きなさい!、俺!(笑)

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地下鉄日本橋駅から文楽劇場方向へ向かう通路に、このポスターが堂々と。世間で話題なっている。つくづく「世間も変わったなあ」と思う。今まで、何をやっても見向きもしなかった層が、ようやくちょっとは文楽を気にし始めたということだろう。思い出すのも忌々しい一連の言われなきバッシングがあってのことかと思うけど、だからと言って、別に文楽は変わったこともやってなければ、世間におもねるようなこともしていない。文楽は文楽のままである。恐らくこの先、何百年たっても文楽は文楽のままであり続ける。

ふしぎな豆の木

■初演:今公演
■作者:竹田真砂子
■監修:桐竹勘十郎
■作曲:鶴澤清介
■作調:望月太明蔵

 

小説家で多くの邦楽作品も手掛ける竹田真砂子氏による新作。イギリス童話『ジャックと豆の木』をベースにしている。ジャックは「本若丸(ほんわかまる)」とうなかなかベタな名前の12歳の男の子。巨人は「龍魔姥(りゅうまうば)」とちょいと発音しにくい名前で。

通常、文楽の舞台転換は、横移動、前後移動、ときに回り舞台だが、この作品では、”ある場面”で「上下移動」する。上、いや下か? に移動した後は、本来は「黒子」の左遣い、足遣いが「白子」になって登場と言うのも珍しい。

子供向けだから当然わかりやすい展開。基本的に浄瑠璃を聴いてなくても、あるいは理解してなくても充分ストリーは通じる。昨年の『かみなり太鼓』もそうだったが、案外、大人も楽しんでいる。床は、主人公の本若丸を咲甫、龍魔姥を芳穂、本若丸の母親・お十を靖。咲甫の本若丸と靖のお十の大仰な「えええ~~~!」などの掛け合いが楽しい。これくらい大袈裟にやった方が、子供には伝わりやすいのだろう、結構子供たちは喜んでいた。お、子供さん、浄瑠璃聴いてるやん、一応は(笑)。

三味線は作曲者の清介のリードのもと、まとまっていて聴き心地良し。龍爾の胡弓が良かった。さすがコントラバス出身。

木登りならぬ「豆の木登り」や「豆の木下り」という、この作品なればこその動きを、本若丸の一輔、姉のみどりを遣う紋臣が器用に見せてくれる。龍魔姥の幸助も気分良く暴れていたと見えた。でもせっかくだから、もうちょい暴れてみよう!って、どんな「せっかく」や(笑)。

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 解説「ぶんらくってなあに」
毎回言ってるような気がするが、このタイトル、なんとかならんのかえ?
人形解説は文哉。今回は、子供さん3人を舞台に招き、主、左、足を体験してもらうコーナー無し。無けりゃ無いで、別に構わない。まあそこは直前の阪急百貨店での催しで、毎日やってたから、今さら感もあるしね。

東海道中膝栗毛 

■作者:十返舎一九 *滑稽本
■初演:安政元年(1854)、江戸中村座 *三世桜田治助の作『旅雀我好話(たびすずめあいやどばなし)』として、義太夫が使われたのを最初に、その後、義太夫でも演奏されるようになる。

 

赤坂並木より古寺の段

弥次さんに英大夫、喜多さんに津駒大夫というなかなか心憎い太夫の配置。大阪弁で進む義太夫節も、今作では弥次さん、喜多さんという江戸の住人が主人公で、かつその掛け合いにこの物語の妙があるから、二人の会話は江戸言葉で進行するのが、珍しい。

そして、子供さん向けならではの「入れ事」も楽しい。この日は「ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん」の一連のギャグを交えたことで、お子さんたち、大盛り上がり。ということは、やはり思った以上に子供さんたちは、太夫の語りに耳を傾けているというわけか…。大人のお客、居眠りこいてる場合やないよ(笑)。

人形も文司(喜多さん)、玉也(弥次さん)の呼吸も合っており、軽快かつ軽妙な舞台になっていた。

あと、どれだけの人が気づいていたか、和尚(じつは狐の化身)がたたく木魚の音を、寛太郎の三味線が見事に表現していたこと。きっと客席の子供たちはみんな気づいていたかな。

終演後は人形がロビーでお見送り。人形遣い、あっと言う間に子供たちに囲まれる(笑)。こういうファンサービスは大事。できれば本公演でも継続してほしいものだ。

IMG_2061暑いから、さっさと帰りまっさ。また来週!

(平成27年7月19日 日本橋国立文楽劇場)


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