【睇戲】填詞L <日本プレミア上映>

大阪アジアン映画祭も中盤戦に。小生的にも、この日から長編が最終日まで続く。まずは、香港映画から。なんと、香港での劇場公開日を明日に控えているにもかかわらず、監督、プロデューサー、出演俳優が上映終了後に登場するというから、外せない。仕事はきっちり定時に終わって「ほな、お先ぃ」とABCホールに向かう。

人気歌手のコンサートが開かれている香港コロシアム前で、「応援グッズ」を打って小遣い稼ぎする主人公の羅穎詩(ロー・ウィンシー)と友人の丸丸(ユンユン)。まさかこの丸丸が兄貴と付き合うことになるとは… ©『填詞L』Facebook

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

コンペティション部門 | 特集企画 <Special Focus on Hong Kong 2024>
填詞L 邦題:作詞家志望 <日本プレミア上映> 

港題『填詞L』
英題『The Lyricist Wannabe』
邦題『作詞家志望』

公開年 2023年 製作地 香港・中国
言語:広東語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):黃綺琳(ノリス・ウォン)
監制(製作):黃鐦(ウォン・ホイ)、黃綺琳
編劇(脚本):黃綺琳
原著(原作):《我很想成為文盲填詞人》黃綺琳
主題曲(主題歌):《填詞魂》曲/謝雅兒(アーイー・ツェ)・詞/黃綺琳・歌/謝雅兒

主演(主演):鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)
演出(出演):葛民輝(エリック・コット)、陳毅燊(アンソン・チャン)、鄧麗英(タン・ライイン)、吳冰(サブリナ・ン)、朱栢康(ジュー・パクホン)、潘宗孝(アーネスト・プン)、戴玉麒(タイ・ユッキ)、馬念先(マー・ニエンシェン)、楊偉倫(ヨン・ワイルン)、梁仲恆(ビング・リョン)、胡子彤(トニー・ウー)
友情客串(友情ゲスト):鄧麗欣(ステフィー・タン)、潘源良(カルビン・プン)、陳柏宇(ジェイソン・チャン)、陳心遙(サヴィル・チャン)

黃綺琳(ノリス・ウォン)監督、20年の大阪アジアン映画祭出品作『金都(邦:私のプリンス・エドワード)』以来の長編。

《作品概要》

作詞の才能があると信じた女子高生が、その後10年間、あらゆる手を使って作詞家になろうと奮闘するが…。監督の自伝的要素を取り入れつつ、香港人に愛される広東ポップスをテーマに描いた青春コメディ。第20屆香港亞洲電影節閉幕作。<引用:第19回大阪アジアン映画祭公式サイト

まず、上のポスター。作品タイトルは『填詞撚』。これが当初のタイトル。しかし「」を使うとは、なかなか挑戦的である(笑)。「撚(lan)」はどう訳しますかね…。例えば熱狂的な野球ファン、ホークスなら「鷹キチ」、タイガースなら「虎キチ」などと一昔前までは言ってたが、最近はうるさい人が多いからか、「鷹党」「虎党」って具合に「キチ」を使わないことが増えた。というわけで「作詞キチ」というところか。小生は割と「撚」を使いますけどね(笑)。

結局『填詞撚』ではなく、『填詞L』になるわけだが、お下劣だという理由でなく、一部のサイトで「撚」が表示できなかったことから、原題の意味を損なわず、なおかつ意味に広がりを持たせるための策だった。「歌詞=Lyrics」、主人公の名前「羅穎詩」を掛けているのだと。

填詞」とは、中国語で作詞のこと。「詞を填(う)める」。そう、中国語曲は基本的には、音楽に詞をつけるのである。微妙な声調の違いで、とんでもない意味になってしまう。特に声調が複雑な広東語は注意が必要。下手するとエロ全開の歌になってしまったり(笑)。なので、まずは曲ありき。そして作詞となる。日本のヒット曲のカヴァー全盛時、「なんでこんな詞になるんよww」と苦笑したものだが、そういう背景も一因である。

この作詞に熱中する少女の成長記みたいな映画。原作が監督の黃綺琳(ノリス・ウォン)の著書『我很想成為文盲填詞人』。ご本人自身が作詞家を夢見ていた時代があり、その自伝的な本らしい。そういう意味では、彼女自身のほろ苦い思い出が綴られた映画と言えるだろう。

鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)演じる主人公の羅穎詩(ロー・ウィンシー)は、高校の卒業発表会で、友人とパフォーマンスするべく、校庭のマリア像を運び出すのだが、すでに時遅し。発表会は終了していた…。っていうシーンを見て、2015年の大阪アジアン映画祭で観た『行動代號:孫中山(邦:コードネームは孫中山)』を思い出したね…。ちなみに鍾雪瑩はれっきとした作詞家。一方で映画出演も多く、大阪アジアン映画祭がらみでは、『狂舞派3』、『殺出個黃昏(邦:黄昏をぶっ殺せ)』、『梅艷芳(邦:アニタ)』、『深宵閃避球(邦:深夜のドッジボール)』に出演してる。あ、そうでしたか(笑)。

どうする積りだったんだろうw ©『填詞L』Facebook

作品は7つのチャプターで構成される。「Lesson 1:啱音」、「Lesson 2:押韻」、「Lesson 3:0243」、「Lesson 4:情歌」、「Lesson 5:CASH會員」、「Lesson 6:填詞人合約」そして「Lesson 7:出街歌」。「啱音」により、メロディーに単語を埋め込んで、歌詞の意味が通るようにする。「押韻」はまさしく漢文で習った「韻を踏む」こと。興味深かったのは、主人公が作詞教室に通って習う「0243填詞法(0243の法則)」。広東語の声調はテキストによっては9声、6声と様々だが、実のところは4声で概ね通る。この組み合わせで、耳にあたりの良い流れが4つの音階の組み合わせ、という法則。これで、彼女の作詞の幅はグッと広がるのだが…。

作詞教室の講師に先日観た『人生一嚿雲(邦:雲と人生)』で主演した朱栢康(ジュー・パクホン)。いかがわしさが板についていた ©『填詞L』Facebook

ある時、彼女は「君は恋愛経験がないだろう」と言われる。詞にそれが滲んでいるのだと。すでに大学生なっていた彼女にとっては、最初の「小さな挫折」だったかもしれない。そんな時、映画とはうまいこと行くもんで(笑)、ひょんなことで画に描いたようなオタク男子(演:戴玉麒/タイ・ユッキ)と知り合う。その名もズバリ「宅聰」(笑)。作詞オタクの彼女にとっては、いい相手だった。この宅聰との出会いから別れのエピソードを中心に話が進むのが、「Lesson 4:情歌」。

いい感じのカップル誕生!と思いきや… ©『填詞L』Facebook

そのころ、彼女はインディー系シンガーのクリス(演:胡子彤/トニー・ウー)作詞を手掛けていた。メジャーデビューを夢見る彼は、台湾マーケットも視野に活動の幅を広げようとしている。こいつ、結局は羅穎詩を利用したってところもある。台湾での売り込みを彼女に託すか?ってところ。

宅聰ら大学の友人たちと台湾へ旅行に行く羅穎詩だが、彼女のメーンは仲間たちではなく、クリスから託されたデモCDを台湾のレコード会社で聞いてもらうこと。この会社のマネージャーに馬念先(マー・ニエンシェン)。なんか、カッコよくなってない? 仲間たちを差し置き、自分本位の行動に走る彼女を宅聰は厳しく叱責する。そして別れを告げられる…。ちょっと挫折のレベルが上がったかな。

挫折のたびに、彼女を励まし見守ってくれたのは家族。父親を葛民輝(エリック・コット)、母親をベテラン舞台俳優の邵美君(ルナ・ショウ)。実は彼女の友人、丸丸(演:鄧麗英/タン・ライイン)と付き合っていた兄の羅偉樂(演:潘宗孝/アーネスト・プン)。この家族は温かいなぁと思った。我が家だったら「作詞で身を立てるなんて、そんな夢みたいな話、さっさと諦めろ!」って冷たく突き放させるだろうよ(笑)。

©『填詞L』Facebook

葛民輝の起用について黃監督は「好きな俳優さんだし、ユーモラスな芝居もできるし。私の父もユーモラスな人だったので」と、上映後の観客との質疑応答で語っていた。なんか、あんなお父さん多そうやもんね、香港って(笑)。

©『填詞L』Facebook

バスケ狂いの兄。丸丸とともに実家を去る時に「お前が両親を守ってやれ」みたいなこと言ってたが「ちょっと、それどうよ」とは思った。演じた潘宗孝は上映後Q&Aでは「丸丸とのシーンが一番印象に残っている。丸丸を演じた鄧麗英さんも魅力的な人だよ」と語り、「僕が彼女になってくれって追いかけるシーンもあったはずだけど…」とウラ話も披露。あの唐突さにはそういう裏があったか(笑)。

楊偉倫(ヨン・ワイルン)。意外とシビアなプロデューサー役で出演。羅穎詩の心にグサッと突き刺さる「宣告」をするが、まあ、至極、正論ではあるよな ©『填詞L』Facebook

他にもプロの作詞家に自己紹介メールを送ったり、作詞家コンクールへの参加、ラジオ局でのアルバイト、CD制作アシスタント、広告ソングの制作を手伝ったり…。夢を実現させるため、色んなことにチャレンジしてきたのだが、その度に壁にぶつかり、挫折し、を繰り返すうちに、徐々に作詞家という職業はなんて難しいんだろう、自分には難しすぎると感じるようになる。そして、夢を断ち切る意味で、将来を見越した業態で急成長する企業に就職するのだが…。

コロナ禍の香港で急増した「Uberタクシー」の先駆けのようなサービスを展開する企業に入社するも、当時(06年から09年頃)は禁止されていたため、彼女も解雇の憂き目に…。どこまでもツイてないね… ©『填詞L』Facebook

なんか観ていて、かわいそうになってくるストーリーだったが、最後に彼女が行き着いた場所で、表情に生気がみなぎっているように見えたことに、ちょっとほっとした気分に。上述の通り、監督の自伝的小説を原作とした作品だから、主人公の羅穎詩(ロー・ウィンシー)も将来は映画の道に進むことになるのかもしれない。きっと明るい未来が待っているに違いない。羅穎詩の未来に幸あれ!

ごめん!監督、目つぶってる写真しかないの…。実際は、めっちゃ美しい人です!

撮影は2022年7月に始まったが、クランクアウトは翌23年の4月。その間、実際に撮影に費やした日数はわずか15日間。これについてプロデューサーの黃鐦(ウォン・ホイ)は「撮影の資金は、僕と監督で工面した。金持ちってわけじゃないから、お金を工面するのが大変だった。なので、撮影して休んで、働いて金を貯めてまた撮る、また稼ぎに行くを繰り返していた」と苦労話を明かす。

そういうことがあってかどうかは知らんけど、友情出演が非常に多い。上記した鄧麗欣(ステフィー・タン)や陳心遙(サヴィル・チャン)のほかにも、多数の友情出演者がいる。

「笑いの中に涙あり」のビターな青春物語。若い俳優を全面に押し出して、ベテランは後方支援的に専念しているのもいい。

《受賞》

■第60屆金馬獎
2部門にノミネート

■第30屆香港電影評論學會大獎
・推薦作品:『填詞L』
他1部門にノミネート

■2023年度香港電影編劇家協會大獎 
1部門にノミネート

■第42屆香港電影金像獎
3部門にノミネート
※3月15日時点、結果待ち

【正式預告】《填詞L》電影預告

(令和6年3月6日 ABCホール)

 

こちらのDVDは、リージョンコード: 3(日本製プレイヤーで再生不可)。また、台湾盤の為、日本語字幕・音声は収録されておりません。

 


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