【睇戲】不想一個人 <海外プレミア上映>

この日の2本目も台湾作品。これまた遅い時間。ま、土曜だからいいですけど。ここまで時間つぶし、大変でした。「一回家に帰ったろか」とも思ったけど、帰ったら帰ったで動かないしね(笑)。

特集企画《台湾:電影ルネッサンス2022》

不想一個人 邦題:一人にしないで <海外プレミア上映>

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題『不想一個人』 英題『Leave Me Alone』
邦題『一人にしないで』
公開年 2021年 製作地 台湾
言語:標準中国語
評価 ★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):范揚仲(ファン・ヤンジョン)
編 劇(脚本):范揚仲
監製(プロデューサー):黃江豐(ロジャー・ホワン)、雷建容(ジェニー・レイ)

主演(主演):范少勳(フェンディ・ファン)、莫允雯(クリスティーナ・モク)、温貞菱(ウェン・チェンリン)
聯合主演(共演):納豆(ナードウ)、陳以文(チェン・イーウェン)、王秀峰(ワン・ショウフォン)、虞金寶(ユー・カムポー)、王琄(ワン・チュアン)

<作品導入>

画廊のオーナーを務める乃文(ナイウェン)。スポンサーである財団理事長と不倫の関係にあるが、寂しさから他の男たちと刹那的な関係を結び続けている。ある日、理事長の子供を身ごもったことを知るが、そのことを告げる前に理事長は病に倒れてしまい、理事長の秘書からは子供を堕ろすように言われてしまう。一方、夜の街で売春の斡旋を生業にしている阿龍(ロン)は、盛り場で時折顔を合わせるナイウェンに憧れていた。ロンの車でナイウェンを自宅まで送るうち、2人の距離は徐々に近づいていき、ある日ついに一夜を共にする。寂しさからの体の関係から、次第に心も結びついていくナイウェンとロンだが、2人の世界は相容れないものだった。さらにロンは、再開発地区の違法な立ち退き行為にも手を染めていき…。<引用:「第17回大阪アジアン映画祭」作品紹介ページ

主役の一人、夜のオンナノコたちを斡旋する一方で、違法立ち退きの片棒を担いで儲けている阿龍を演じた范少勳(フェンディ・ファン)は、めきめき頭角を現している若手の注目株。「これ、やってほしいなぁ」と微かに期待していた『下半場(邦:運命のマッチアップ)』で主役を務めている。《アジアンパラダイス》さんの情報では、「6月24日よりシネマート新宿、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋、アップリンク京都ほか全国順次公開!」ってことなので楽しみである。

by “電影神捜”

本作は、その范少勳が演じる阿龍を軸に物語は展開する。范少勳の名前は聞いていたが、こうして初めてスクリーンで観てみると、なかなかいい俳優である。住む世界の違う男女がちょっとしたきっかけで急接近し、結局は別れてしまうという物語だが、「別れた」というよりは小生には「捨てられた」と映ったのだが、そんな男を表情豊かに演じていて、「ああ、これから伸びて行く人だな」と感じた。ま、「捨てられた」と言ったものの、捨てた女の方も苦しく哀しい思いはしているってのは、ラストあたりで見えてくる。どちらを観ていても切ないものがあった。

絵画のオークションなんかも一緒に行っちゃう Ⓒ『不想一個人』FB

阿龍とお近づきになった画廊オーナー・乃文を演じた莫允雯(クリスティーナ・モク)は、恐らく日本のスクリーンに登場するのは、これが初めてだと思う。この子もなかなかいい俳優で、阿龍を捨てざるを得なかった一方で、自分も財団理事との不倫の末に身ごもってしまい、堕胎を迫られるというつらい経験をしている。その頃の心のひだというか隙間にす~っと入って来たのが阿龍だったというわけで。そんな辛さ、苦しみ、悲しみを莫允雯はうまいこと演じていた。長編映画はこれが3作目と経験は浅いが、テレビドラマの出演数はキャリアの割には多く、そこで鍛えられたのかなと察するが、さてどうなんでしょう。映画の方にももっと出てきてほしい人材である。

阿龍が土地再開発、要は地上げ立ち退きを不法に迫る古びたアパート。阿龍が「管轄する」オンナノコたちも実はこの古びたアパートに住んでいる。ただ、住民の多くは老人たちで、いずれ誰もいなくなってしまう。その前に立ち退き同意のハンを押させ、さっさと立ち退いてもらおうというのが、阿龍に地上げを指示する議員の思惑。この議員を陳以文(チェン・イーウェン)。先日観た『修行』とは打って変わっていかにもワルな雰囲気。このへんはベテランの余裕すら感じた。

悪そうな議員 Ⓒ『不想一個人』FB

阿龍は結構な手間代をもらっていて「へ~、なんかちょろい仕事やな~」と思っていたが、ボロボロの旧式アパートとは言え、住民は愛着を感じているので一筋縄ではいかない。隣人のしをきっかけに、行くか留まるか心が揺れる長官と呼ばれている老人を虞金寶(ユー・カムポー)、亡くなった隣人の娘で長官と意気投合する李岩を王琄(ワン・チュアン)。この王琄って『牯嶺街少年殺人事件』で小四の兄弟姉妹の長女やってた人かぁ…。歳月を感じるなぁ…。

一人、そしてまた一人と住民がいなくなってゆく。ある者は引っ越し、ある者は死に…。それでも動かない長官だったが… Ⓒ『不想一個人』FB

阿龍の昔馴染みで今も夜の仕事の面倒を見てやっている金沙(演:温貞菱/ウェン・チェンリン)と、彼女を買った薬剤師の胖子(=おデブ-演:納豆/ナードウ)の不思議なベッド上の関係も面白い。晩熟なのか、セックスが苦手なのかわからないが、ふ~ん、こういうのを求める男子もいるんだなぁ~と、妙に得心した次第(笑)。小生には無理だし、ああいう発想には決して及ばない(笑)。納豆は脳出血かなんかで倒れて重態だとのニュースを2月に聞いたが、その後はどうなんだろう…。

彼もまた「一人にしないで」な人間なんだろうな… by “台湾電影網”
胖子と金沙の「特殊なベッドシーン」が印象深い… Ⓒ牽猴子股份有限公司

それにしてもラストシーンよ。男の側からすると、とてもむごいシーンで「乃文さん、あんた残酷なことするなぁ!」ってところなんだが、ギャラリーの絵画の後ろで彼女もまた、この姿だったのを観て、結局、住む世界が違ったのか…。いや、それは違うやろ…。などなど、色んな思いが渦巻いたのだ。一つ言えるのは、出てきた人たち、みんな「孤独」で「一人にしないで」と思っているんだなぁということ。

Ⓒ牽猴子股份有限公司

★2つは超辛口かもしれないけど、それは申し訳ないけど、途中で何度か激しい睡魔に襲われてしまったので。睡魔が襲うということは、ダレてしまった時間帯もあったということだと判断した次第。98分間ずっと釘付けにしてくれ!とは言わないが、せっかくの面白いハナシなのにメリハリが乏しかったのが★2つになった原因…。若い監督なので今後に期待。

<受賞など>

■第58屆金馬獎 2部門ノミネート

《不想一個人》正式預告

(令和4年3月19日 梅田ブルク7)


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