【上方芸能な日々 文楽】令和3年初春文楽公演 <3>

人形浄瑠璃文楽
鶴澤清治文化功労者顕彰記念
和3年初春文楽公演 <3

では、ウダウダ抜かさず、さっさと初春公演第二部のあれこれ思うところを記しておこう。

1月9日第二部

碁太平記白石噺 ごたいへいきしらいしばなし

浅草雷門の段

口:南都 團吾

流行語なんかを取り入れて自由が利くチャリ場。南都はんは、鬼滅の「あの呼吸法」やら「疫病退散のあれ」やらを入れて、一生懸命だったけど、哀しいかな、お客が少ないと反応も鈍く、ややスベリ気味だったかな。となると、入れ事無しでやったほうがよかったんちゃうかー、などと素人は勝手に思うのだが…。

奥:咲 燕三

う~ん、ここに咲さんかぁ…。確かにここは咲さん以外に考えられんと言えば、そうやけど、であるなら、この段はぶっ通しで咲さんではないかなと思う。ならばある程度は納得できる。とは言え、咲さんは唯一の「切語り」の太夫。もっとやってもらうべき場はあったはず。勿体ないことするなぁと、残念に思う。ただもうそればかり。ほんま「すかーんぴーん」やで。

新吉原揚屋の段

呂 清介

この人は声量不足気味だが、節というか義太夫の流れというか、そういうのがすごくいい。だから「情」もよく伝わってくる。この段はおのぶちゃんの東北訛りと宮城野の花魁の言葉を、しつこくないほど良い濃度で語ることで、詞章を大切にして伝えてくれていると感じた。この段は「情」と「義」が旨い塩梅に絡み合って、姉妹の再会とその意味、さらには一役買おうと言う惣六の姉妹を包み込む温情が鮮明に描かれている。床本や字幕を追うのをやめて、呂さんの詞に集中すれば、三人の心持が伝わる。そこをさらに、和生はんの宮城野、蓑紫郎(文昇の代演)のおのぶ、玉也の惣六で完成度の極めて高い舞台を堪能できた。

1月23日第二部

義経千本桜 道行初音旅

「そう言えば、本来なら去年の4月公演は千本桜の通しやったはず…」と、最初の緊急事態宣言で公演中止となった1年前を思い出す。今公演では鶴澤清治文化功労者顕彰記念としての清治師匠の出番が「道行」か…。どうなんやろな、それってと、さっきの咲さんの出番同様に「勿体なくないか?」という気分に。色んな思いが往来する道行である。

静御前  呂勢 狐忠信  織 ツレ  靖 咲寿 亘
清治 清志郎 清馗 友之助 清公 清允

太夫、三味線が素晴らしかった。呂勢、織は申すまでもないが、ツレの3人もピタッと揃っていて、息の合うところを聴かせてくれた。三味線は、とにかく清治師匠が鮮烈で、清志郎以下のツレ陣もしっかりと牽引されていて、実に華やかな床の競演だった。浅葱幕がさっと引かれて見渡す限りの桜花爛漫の舞台に、立ち姿の美しい一輔の静御前。客席が満員ならため息と拍手で波動が起きるような場面だが、限られた入場者数ながら客席からは精一杯の拍手が起きていた。狐~忠信早変わりの玉助は今や当たり役となった忠信だが、まだまだ発展の余地ありという感じ。手摺は床に比して「もうひと頑張り!」という感じだったけど、とにかく豪華で華やかな一幕を堪能できた。

(令和3年1月9日、23日 日本橋国立文楽劇場)





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