【上方芸能な日々 文楽】令和3年初春文楽公演<2>

人形浄瑠璃文楽
鶴澤清治文化功労者顕彰記念
和3年初春文楽公演 <2

正月公演も開始早々に大阪府に「緊急事態宣言」。COVID-19のいわゆる「第三波」となり、もうこればかりはどうにならない。飲食店はじめ劇場なども午後8時には幕を引かねばならなくなり、第三部も上演時間の調整が行われた。そのため、「金殿の段」が10分前後圧縮されたようだが、小生にはどこをどう端折ったのかはわからず。何十年文楽通ってることやら…。そんなくらい「あそことあそこやな」とピピっときてよいようなもんだが、わからんのや、それが(笑)。まことにお恥ずかしい限りである。ということで、手短に感想などを。手短に、と言いつつ、秋公演の「感想」もダラダラとクソ長いものになってしまったが(笑)。

1月9日第1部

菅原伝授手習鑑 三段目

『車引の段』

松王丸 藤 梅王丸 睦 桜丸 芳穂 杉王丸 碩 時平 津國 清友

記憶に間違いがなければ、高2のときに「芸能鑑賞」で朝日座で観たのが「車引」で、「おお、なんときれいな舞台!」と感心して以来、文楽との永い永い付き合いが始まったのだ。さて、何年前でしょうね(笑)。朝日座っていうのがもうねぇ(笑)。と、いう次第で、文楽でも歌舞伎でもこの場は好きで、つい前のめりになって観てしまう。今回もそう。清友はんの三味線に、太夫陣がうまいこと転がされていた感あり。藤太夫の松王は出だしからしてOK。津國はんの時平はぴったりながらも、人形を大きく見せるという点ではもうひとつ。大笑いもややしんどそうだったかな。梅王・睦、桜丸・芳穂はとてもよかったし、杉王・碩も適役ではあった。人形は、ここはなんと言っても時平。梅王、桜丸を「レーザービーム」的な圧力で「どうや!」とばかりに圧するのが小生は好きで、そういう大きさ、威圧感を期待するんだが、玉輝はんは十分威圧感あるんだが、肝心の人形がそこまでには見えなかった。そこは太夫との兼ね合いもあるのかなと。

『茶筅酒の段』

三輪 團七

田舎村、という感じの佐太の雰囲気がよく伝わる。こういうのは、若い人ではなかなかむつかしいと思う。悲劇の前ののどかさ。メリヤスに乗って動く三人の嫁が楽しいのだが、「ああ、つかの間やなぁ、これも」と、知っているだけに観ててつらいものもある。

喧嘩の段』

公演前半:小住 寛太郎  公演後半:亘 友之助 

どっちのコンビもそれなりにやってたが、共通点は「平板」であるという点。4人とも、今までに喧嘩したことないんかえ?と聞くは野暮かな?太夫が平板なんだから、三味線がもっとガッツンガッツン引っ張らなあかんやん…と思ってるうちに終わった。

『訴訟の段』

靖 錦糸

小生期待の靖太夫が登場し、物語もクライマックスへと進んでゆく。まあ、言い出せば色々としんどい部分も多いけど、靖は持てるものをいっぱいいっぱい出して聴かせるので、好感が持てる。もちろん、それを引き出させているのは錦糸はんなんだが。次回、「佐太村」がかかる時には、靖には訴訟から桜丸切腹まで、一気にやらせてみてほしいなぁ。もう、靖はそこまで来ているし、逆に言うと、そこまでのことをやらせなければならない段階だと思う。白太夫を語るには、まだまだ経験が必要とみたが、そこを次はクリアしていそうなワクワク感がある。

桜丸切腹の段

千歳 富助

実質切場。切の太夫が咲さんしかいない現状、ここを任せられるのは、千歳か呂さん。というわけで、千歳が締める。そりゃもう圧巻の桜丸切腹だった。八重のクドキもしっかり聴かせてくれた。あそこはやっぱりこの段では一番の聴かせどころで、あそこの八重と白太夫のやりとりを聴いてこその、桜丸切腹の悲劇だろう。千歳はんは公演中盤から声がガラガラになってしまう難点がかつては残念だったんだが、今回、千秋楽でもクオリティーは維持されており、安心した。さて、やはりここは桜丸。蓑助師匠である。美しく、切なく、哀しく、格調高く、桜丸の切腹を遣う。もはや聖域である。千歳の語りだけでも十分涙を誘う上に、この人形を見せられてはもう、ほんまたまりませんな…。

ところでこの桜丸、「につこと笑ひ」現れるのだが、「につこと笑ひ」と言えば、「寺子屋」での菅秀才の身代わりとなった松王丸の息子、小太郎の最期である。ここで松王丸は「思ひ出だせば桜丸ぅ~~」とか言って桜丸のことを悲しむけど、あれって、やっぱここの「につこと笑ひ」とリンクしてるんですかね?伏線~回収ってやつですかね?どなたかお賢い方、教えて!

1月23日第1部

第一部だけで随分長くなってしまったんで、第二部、三部はまた今度(笑)。結局、こうなってしまう(笑)。

(令和3年1月9日、23日 日本橋国立文楽劇場)



 


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