【睇戲】『大いなる餓え』(台題=大餓)<日本プレミア上映>

第15回大阪アジアン映画祭

平日のデータイムに、観たい作品がずらっと並んでいて、この時に観ておけば、わざわざ土日に一気見する労苦を負う必要もないし、ずーっと課題にしている「インディ作品」や、中華圏以外の国々の作品を観る機会も増すのだが、そうはいかないのが、労働者の悲しいところ。月曜から水曜の3日間は、小休止し、3月12日の木曜日から復帰と相成った、大阪アジアン映画祭。

本来ならこの日は「TAIWAN NIGHT」として、ステージ上に台湾から出品された作品の監督や俳優がズラッと並んで、華やかに開催されるのだが、以前にも記したように、舞台挨拶や上映前後のサイン会はすべて中止。それ以前に、各国とも出入国に関して厳しい規制や、行動の規制(要は隔離)をとっているので、来阪は叶わない。そんなわけで、お客さんも満員とはならず、看板だけの「TAIWAN NIGHT」となった…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

コンペティション部門/TAIWAN NIGHT/台湾:電影ルネッサンス2020
大いなる餓え 台題=大餓 <日本プレミア上映>

台題『大餓』 英題『Heavy Craving』
邦題『大いなる餓え』
公開年:2019年
製作地:台湾
言語:標準中国語
評価:★★★☆
導演(監督):謝沛如(シエ・ペイルー)
領銜主演(主演):蔡嘉茵(ツァイ・ジャーイン)、柯淑勤(クー・シュウチン)、張耀仁(チャン・ヤオレン)、張恩瑋(チャン・エンウェイ)
特別演出(特別出演):謝祖武(ウイリアム・シェ)、賴琳恩(レネ・ライ)

上映前に謝沛如(シエ・ペイルー)監督と、主役の蔡嘉茵(ツァイ・ジャーイン)、張耀仁(チャン・ヤオレン)の3人からのメッセージ映像。「ああ、多分、この3人が来阪する予定やったんやろな…」と思うと、つくづく残念。ほんの一瞬だけの「TAIWAN NIGHT」だった。

105キロの女性が主役。おデブな主役、蔡嘉茵(ツァイ・ジャーイン)は経験豊富な舞台俳優ということだが、映画は初出演にして初主役。この映画は、この人の熱演に尽きる。ダイエットものは小生これまでに、劉徳華(アンディ・ラウ)と鄭秀文(サミー・チェン)主役の『ダイエット・ラブ(港=瘦身男女)』、第13回大阪アジアン映画祭での『大大ダイエット(馬・簡=大大哒)』を観たが、どちらも太った主人公が頑張ってダイエットし、理想のボディを手に入れるという、サクセス・ストーリーなんだが、本作では結局、太ったまんまで終わりという結末を迎える。そこが、とても現実的で好感を持てる。

【あらすじ】

30歳独身彼氏なし体重105キロの姜映娟は、母親の経営する保育園で給食を作っている。そのストレートな性格と美味しい料理は園児にも人気だが、彼女の身体を心配する母の勧めもあって、映娟はダイエット・プログラムに参加することに。当初は気乗りしない映娟だったが、宅配便の配達人・吳浩仁への淡い恋心も重なって、徐々にダイエット作戦は過熱していく。しかし、…。<引用:第15回大阪アジアン映画祭「大いなる餓え」作品解説

「保育園」とあるが、結構大きな子もいたらから、「学童保育所」という感じかな?「女装趣味」の男子(演:張恩瑋/チャン・エンウェイ)なんて、明らかに小学生に見えたし…。あの子もいい子役やなと思った。台本、役の「肚(はら)」をあんな小さいのに、よくわきまえていた。偉いもんだ。

その保育園なのか学童保育なのか、いまひとつわからん施設の子供たちから「ゴジラ先生」とからかわれながらも、親しまれている姜映娟先生(演:蔡嘉茵/ツァイ・ジャーイン)、配達に来た宅配便の兄ちゃん(演:張耀仁/チャン・ヤオレン)に一目ぼれ?いつの間にか、カップルになってるし(笑)。

この兄ちゃん、やけに明るくて前向き。「はは~ん、こいつは肥満児やったんやな?」って思ってたら、ズバリそうだった。その明るさで、映娟のダイエットを応援するのだが、彼自身、今なお無理なダイエットを続け、悩んでいる最中でもあった…。その「無理なダイエット」の場面があったけど、めっちゃ可愛そうだった。「そこまでせなあきませんか?」というもんで…。ちなみに、この兄ちゃんも舞台俳優。なるほど、あの大げさな演技は、舞台向きだわな(笑)。かなりイケメンなので、映画の出演本数が増えれば、日本でも人気が出るんじゃないかな…。

小生、子供のころから50歳代半ばの今まで、ずーーーっとガリガリなんで、肥えてる人の悩みがわからない。「しんどいんかな?」程度は想像できるが…。痩せてる人間には痩せてるからこその悩みがあるのだが、最近は服のサイズなんて、総じて細身主流なんで、普通に着ることができる。昔は、どんだけ腰詰めてもらったことか…。デブと痩せ、どっちが体型の悩みが大きいのかな?そこは、人それぞれなんだろうけど…。

感動したのはこのシーン。園の学習発表会で、上述の女装趣味の男子が披露したのは、女装でのダンス。容姿、趣味を周囲から認めてもらえないゴジラ先生と男子は、いつしか心を通い合わせるようになり、ついに男子、「禁断」の姿を父兄や友達に披露するのだが、彼の母親はカンカンになり…。男子、勇気あったなぁ、それを後押ししたことで、映娟自身にも心の変化が訪れるのだが、その前にまさにゴジラ並みのことをやらかしてしまう…(笑)。

作品が訴えるのは、「愛されるためには、社会の美的枠組みの中で生活する必要があるのか?」ということだろう。(作品Facebook参照)

コメディタッチで進んでいくが、常にそれを問いかけており、スクリーンで繰り広げられる可笑しみのあるシーンとは違うものを、常に感じながら観る、そんな90分間だった。してやられた、ってところかな。

第21屆臺北電影節國際新導演競賽
「観客賞」受賞
第21屆臺北電影獎
「最優秀新人賞」受賞=蔡嘉茵
「最優秀メークアップ&衣装デザイン賞」(ノミネート)
第26回モスクワ国際映画祭
2部門にノミネート
第56屆金馬獎
「最優秀新人賞」蔡嘉茵(ノミネート)
「国際映画批評家連盟賞」受賞=『大餓』
第14屆五味亞洲電影節(Five Flavours Asian Film Festival)
「ニューアジアン映画コンペティション」『大餓』(ノミネート)
第1屆台灣影評人協會獎
「最優秀女優」受賞=蔡嘉茵
「最優秀脚本」受賞=謝沛如

《大餓》正式預告

(令和2年3月12日 ABCホール)




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