【睇戲】『隠し味は愛』(台題=紅酒敦牛肉)

1週間の台湾とのランデブーもこの日が最終。名残惜しいが、次は現地で!

ってわけで、シネ・ヌーヴォXでこの日も「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」のダブルヘッダー。

ここまで観たシリーズの3本とは違い、かなり大人な雰囲気の作品。ま、一言で言えば、不倫の物語。相当な気合が入ってるんだろうけど、小生には合わないと言うか、まるでピンと来ない世界のハナシ。「このシリーズはこういうのもやりますよ」ってところかな。それはそれでアリかもしれないけど…。

駅は中正紀念堂松山新店線淡水信義線がクロスする駅で、駅名の指す通り、地下を出れば、衛兵の交代儀式で有名な中正紀念堂前の広場が目の前にある。駅のシンボルカラーも緑と赤の二色使いで、わかりやすい。陳水扁総統時代には一時期「台湾正名運動」の流れから「台湾民主紀念館」と名称変更されていたが、2009年にまた元に戻された。まあ、どっちにせよ、そのスケールの大きさったらもう!ってところだ。

2008年4月当時の中正紀念堂。蒋介石も驚くばかりに「台湾正名運動」関連のパネルが並んでいた。陳水扁総統の独りよがりみたいな感じがして、あまり気分のよいものではなかった(筆者撮影)
いかに陳水扁と言えども、天井の青天白日は撤去できなかったか(笑)(筆者撮影)

その中正紀念堂駅とこの物語がどうリンクするのか、あるいは何を暗示しているかは、観れば「あ、なるほどな」ということになる。なかなかそれは、この場所に行ったことがないとわかりにくいかもしれない…。

台北愛情捷運系列 中正紀念堂站
隠し味は愛(台題=紅酒敦牛肉)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『紅酒敦牛肉』(放映時タイトル『傻瓜與睡美人』
英題 『Boeuf Bourguignon Taipei』
邦題 『隠し味は愛』
テレビ放映年 2016年4月9日(衛視電視台)
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):倫葉天(ガオ・ピンチュアン)

領銜主演(主演):白歆惠(ビアンカ・バイ)、鍾承翰(ハンズ・チョン)、嚴藝文(イェンイー・ウェン)、張永智(チャン・ヨンチー)

海外を飛び回るピアニストのヨンジェーを夫に持つチェンチーは、一人寂しく台北で暮らしている。夫はそんな妻を案じて料理教室を始めさせる。ある日、冷えかけたキャリア妻との関係を修復するため牛肉の赤ワイン煮を習いたいというリー・フォンが料理教室にやってくる。同じような寂しさを抱える二人は次第に心惹かれていくのだが…。 引用元:シネ・ヌーヴォ「台湾巨匠傑作選二〇一九」サイト

かなりハイソな世界に生きる二組の冷えた夫婦のすれ違いが発端となる不倫物語。ま、不倫の真似事、不倫の寸前というところかな、この展開は。二人が住む部屋も、外の風景も、無国籍感と言うか、無菌室的と言うか「あれ?台北って、こないにきれいな街だったっけ」と言う感じ。これも小生が入り込めなかった一因かと思う。

片や、夫婦関係がより強固なものとなり、片や、離婚。この差は何が原因だろうと、ちょっと考えてみたくもなる。思うに、男と女の「夫婦観」の違いだろうな。不倫した者同士がそれぞれの現在の夫婦生活を捨て、新たにカップルになる、なんて目出度いハナシって、そうそうあるもんじゃないだろう。この映画で、唯一「そりゃそうだ、これでいいのだ」と思ったのは、この結末だった。

何気に「寂しいのね…」と白歆惠(ビアンカ・バイ)演じる晨曦(チェンイー)にMRT車内で声を掛けたミステリアスな女性、前に観た『振り向いたらそこに』も登場した紀培慧(テレサ・チー)。またある日は、駅で幼稚園児に読み聞かせをしているところに、偶然出くわした晨曦(チェンイー)と鍾承翰(ハンズ・チョン演じる李峰(リーホン)の二人に、「あ、あそこの王子様とお姫様がいるわよ~」と園児たちに注目させる場面。あの場面でも、戸惑いながらも満更でもなさそうな李峰と、「そんな風に言われちゃ困るし…」って感じの晨曦、もうこの辺りで、この二人の行く末がわかったような…。

その晨曦の旦那、世界的ピアニストの趙永傑(ヨンジェー)を演じた張永智(チャン・ヨンチー)は、実際に世界的なピアニスト。通りで、あまり芝居が上手くないと思った(笑)。そして李峰を演じた鍾承翰(ハンズ・チョン)は、イケメンなんだが、これまたあんまり芝居が上手くない。本業はモデルだってことで、これもまた納得(笑)。

上述の中正紀念堂の前の広大な広場「台北自由廣場」。正式には中央藝文廣場。その名の通り中正紀念堂に向かって右側に国家戯藝院、左には国家音楽廰が建つ。どちらも立派な劇場。世界的ピアニストである永傑は、世界を飛び回り、ようやくホームグラウンドの国家音楽廰でのコンサートの日を迎える。最寄り駅は、もちろん中正紀念堂(笑)。でも昔は大中至正って言ってなかったっけ?

話はそれるが、第二期陳水扁政権がスタートした直後、対立候補だった国民党連戦が、土砂降りの中、この広場で「負け犬の遠吠え」大集会を開いていたが、偶然、その時に台北に滞在しており、まったく興味を示さない同行の香港人を強引に連れて見に行ったものだ。「負けてこの熱気かよ!」と驚いたもんだ。

シリーズで最初に観た『淡水河の奇跡』で、主人公の阿給一家を気に掛ける酷龍をじた曹西平(デニーズ・ソウ)が、晨曦の料理教室へ「料理を教えてくれ」といきなり押しかける。丁度、晨曦と李峰がイイ感じになっているところだっただけに、二人にすれば「ムードぶっ壊しやがって」ってところかな(笑)。PCが故障していて申し込みを確認できていないという晨曦に、「PCが壊れてるとは阿給の店と一緒だな」と言う酷龍。「あ、こういう感じで同時進行でこのシリーズのお話は進んでるのね」と確認。

「PCが壊れているなら、スマホを持てばいい」と李峰が言う。で、晨曦と李峰がスマホを物色に行った携帯ショップは、『振り向いたらそこに』で蔡淑臻(ジャネル・ツァイ)演じる小嫻の勤め先かも。制服が一緒だ(笑)。

李峰の奥さん役の嚴藝文(イェンイー・ウェン)はイイね!小生、あの手の顔が大好きだ。泣けてくるほど大好きだ。なぜか…。ま、ご想像におまかせする(笑)。

中文タイトルが『傻瓜與睡美人』。「おバカと眠れる美女」。アハハ!うまいことタイトル付けたな。『紅酒敦牛肉』よりこっちの方が絶対いい。

「ドラマ、電視電影部門主演男優賞」ノミネート:嚴藝文(イェンイー・ウェン)

衛視電影台 傻瓜與睡美人 4/9(六)晚上九點 全台首播

(令和元年10月26日 シネ・ヌーヴォX)



 


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