【上方芸能な日々 文楽】平成30年夏休み特別公演<2>

人形浄瑠璃文楽
平成三十年夏休み特別公演 第三部

第二部に続いて、三部の「サマーレイトショー」を観る。毎年記しているが、「レイトショー」と言っても18時15分開演だから、労働者でこの時間に席についていられる人は、ほぼいないだろう。さすが国立劇場、すべては役所感覚。そりゃ国家公務員なら、余裕のよっちゃんで着席できるだろうけど、世間はそうではない。もうあっさりと「夕方の部」とでも改称したほうがいいんじゃないかと思うな。

この日は日曜日。でも客席は寂しいもんだった。まあ、公演2日目、こんな感じかな…。外出をためらうほどの暑さも災いしているんだろう。道中は暑いけど、涼みに来なはれ。

<第三部 サマーレイトショー>

新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)

「野崎村の段」

ホンマのつまみ食い。第三部の性質から仕方ないかもしれないが、それならもっと丁寧に、それこそ「レイトショー」だから足を運んだ一見さんにもわかるような、野崎に至るまでの説明をしてほしいところ。「鑑賞教室」でやっているような「前説」みたいなんをやるべきやね、ここは。

中:文字久、清志郎
印象薄かった。文字久はんには、勇壮な時代物が合うと思う。狂言建てで割を食ったのかな。とは言え、あちこちに住さんの面影を感じさせる巧者ぶりも発揮されており、「ああ、こうやって伝承されていくんやな」と感じ入る場面もあった。とりわけ、久作の表現にそれを感じた。

前:津駒、寛治
まあ「寛治師匠を聴く場」ということで…。

後:三輪、團七
珍しく、三輪さんが切を勤める。かねてより、この人は並びものではもったいないと思っているし、それだけのものを聴かせる力量のある人なんだろうとも思うので、こういう配置は、これからもどんどん増やしてほしいなぁ。一方でそうなると、並びものでシンを取れる人材がおらんという、現有太夫チームの窮状もあるわけで、難しいとこやよな。声質もニンも、オールマイティーに行ける人と思うから、もっと色々聴いてみたい。

人形は、蓑助師匠の登場で浄瑠璃をかき消すような大拍手が沸き起こったけど、ほとんど「顔見せ」程度のものだった。この暑い時期くらい、大功労者を休ませてあげなはれ。
一輔は相も変わらず、立ち姿が美しく、それゆえにお染も際立つ。久松のダメ男ぶりを文昇がうまく遣っていた。清十郎もやはり立ち姿が美しいので、髪を下ろしてからのおみつの健気さが、素晴らしかった。船頭の紋秀も今や十八番か? 「レイトショー」らしく? いつもより動きにサービス精神を感じたのは、小生だけ?

本日のお座席からの眺め。これ以上ない「特等席」なのに、浄瑠璃が響いてこないのはなぜか?

以前、「5月をもって1階のレストラン「文楽茶寮」と「お茶席」、2階ロビーの売店が営業終了ってことで、不便この上なし。」とぼやいていたが、1階の「文楽茶寮」前に、休憩用の長椅子が並んでいた所で、弁当を売っていた。どこかどんな経路で売りに来ていたのかは知らないが、そんなんどっかで告知してた? 前もって教えといてや、こういうのは。

日本振袖始(にほんふりそではじめ)

二度目の見物。前回は8年前で、やはり「夏休み公演」の「サマーレイトショー」でのこと。要するに、文楽劇場で上演された2回とも見物しているという、ある意味で「歴史証人」であります(笑)。

前回は藤間勘吉郎の振付だったが、今回は尾上墨雪による振付。さあ、何がどう違うのかさっぱりわからんが(笑)。

『大蛇退治の段(おろちたいじのだん)

岩長姫:織 稲田姫:希 素戔嗚尊:南都 ツレ:亘
藤蔵、清丈、寛太郎、錦吾、燕二郎

床は織、藤蔵の骨太な運びで。このメンバーに並ぶと、どうしても希の線の細さが気になってしまう。決して悪いことはなかったのに、損したような印象。三味線は藤蔵を筆頭にバシバシ系が並ぶので、演目にピッタリ。

人形はもちろん、玉助の素戔嗚尊と勘十郎の岩長姫の一騎打ち。見せる要素という点では、申し分なし。

「こういうのも、文楽にはありますよ」という演目としては、大いにアリな演目。高校生グループ(日曜の夜にごくろうさん!)なんかは、楽しんでいた様子。そりゃ、「野崎村」より断然オモロイわな、若いお客には。そう言う意味では、意外と朝の「親子劇場」でやってもお子さんたちにもウケるかもよ。

 ☀☀☀

なんか今公演はあんまり面白くなかった。

って言うか、ここ数公演、襲名披露狂言はそれなりの高揚感があって楽しめたが、それ以外は、面白くない。なぜか? 答えは明白だ。浄瑠璃が面白くない のだ。

演目も悪くはないし、下手くそではなく、みんな上手いと思うけど、なぜか響いてこないのだ。これはひとえに小生自身の「嶋太夫ロス、住太夫ロス、源太夫ロス」によるものだ。その「ロスの三連発」を咲さん一人に負わせてしまっている、しまわざるを得ない太夫陣の奮闘が、小生には伝わってこないのだ。幸い、呂勢、織、靖に明るい未来を感じているので、彼らがトップ集団に躍り出る日を、気長に待ちたい。咲寿や小住、新弟子の碩あたりも期待大だが、まだまだ時間はかかる。それまでは、ちょっと見物の回数を減らしてもいいかな、まったく見物に行かない公演もあってもいいのかな、なんて思ってしまう、今日この頃の文楽の現状である。

そんなん思うの小生だけかも知らんけど、たとえ一人でも、40年近く通ってる人間にそんなこと思わせるなんて、これは、危機ですよ! 今さら言うてもしゃーないけどな。

(平成30年7月22日 日本橋国立文楽劇場)



 


コメントを残す