【上方芸能な日々 浪曲】浪曲名人会―あなた好みの十八番

浪曲
浪曲名人会あなた好みの十八番

今年もまた「浪曲名人会」の季節である。
世の中では、平昌五輪での日本人選手のメダルラッシュに沸き立っているが、文楽劇場は浪曲ファンの熱気で大盛り上がり(笑)。
今回は副題に「あなた好みの十八番」と銘打たれ、用意された三題のうちで、ご見物の要望の高かった演目を口演するという趣向。色々考えはる。

H3002rokyokumeijinkai<本日の演題>
京山小圓嬢 曲師・沢村さくら
「名刀稲荷丸」「直助誉れの国帰り」「サイコロ夫婦旅」

真山一郎 オペレーター・真山幸美
「大石妻子の別れ」「刃傷松の廊下」「日本の母」

天中軒雲月 曲師・沢村さくら
「中山安兵衛婿入り」「佐倉宗五郎妻子別れ」「男一匹天野屋利兵衛」

<仲入り>

松浦四郎若 曲師・虹友美
「太閤記 禁酒百石」「瞼の母」「勧進帳」

春野恵子 曲師・一風亭初月
「出世太閤記―秋風矢矧の橋」「天狗の女房」「おさん茂兵衛」

京山幸枝若 曲師・岡本貞子 ギター・京山幸光
「会津の小鉄」より「山崎迎え」「左甚五郎―千人坊主―」「六代目横綱阿武松緑之助」

赤字がリクエスト数が一番多かった演題。青字が小生がリクエストした演題。一郎師匠の「刃傷松の廊下」しかヒットしなかった(笑)。
で、リクエストをどんなやり方で集計するんかなと思っていたら…。
今回も進行役は、真山隼人&京山幸太の二人。「はやと・こうた」って昔の漫才さんコンビみたいでよいね(笑)。二人が持ち出したのが「拍手測定器」。拍手や掛け声の多さを計測するマシンだとのことだが、なんかへっぽこ博士が発明した機械みたいで、見てくれが怪しすぎて笑ってしまう。ま、でも、わりと正確に測定はできていた模様。ホンマ、あれこれ考えてはるわ。

本日のお座席からの眺め

今年もまた気が付けば、隅っこのお席しか残ってなかった。きれいに満員の文楽劇場。言うまでもなく、年齢層高いね。

トップバッターで、浪界最長老の小円嬢師匠が登場。まずは「ようけ来ていただきましたなぁ」と。とにかくお元気である。この元気のエキスをいただくべく、お見送りの師匠に握手してもらう、まだ50歳代そこそこの小生であった(笑)。
会場のリクエストは、『サイコロ夫婦旅』で決定。「実はこれだけお稽古してまへんねん(笑)」とおっしゃる。ま、そこはお稽古してないって言いながら、圧巻のひと節。半太郎のお仲を思う気持ちが、胸に痛く響いてくる。

二番手は、演歌浪曲の雄、一郎師匠で。相変わらずの、きらびやかな輝きを放つ袴が目に眩しい(笑)。ここは十八番中の十八番、松の廊下で満場一致というところ。小生も異論なし。吉良上野介の憎らしさと、浅野内匠頭の堪忍ならぬという気持ちが激しくぶつかる名場面を朗々と高らかに歌い上げ、客席を圧倒することこの上なし。さすがの第一人者。

佐知子師匠急病につき、雲月師匠が代演。実は数日前に「待機しとってください」とオファーがあり、直前に「出演してください」となって、慌てたようだが、そこはベテラン。見事に代演を果たす。全身でぶつけてくる、ソウルフルな浪曲がこのお姉さんの最大の魅力だと思う。124年もの間受け継がれてきた、渾身の天野屋利兵衛、男の生きざまを存分に聴かせてくれた。佐知子師匠の一日も早いご回復をお祈りする次第。

中入り後のトップは四郎若師匠。どなたもそうだったが、聴きたい演題を3つ並べられて、「さあ一つだけ選べ」と言われても、非常に困るのである(笑)。僅差で『瞼の母』に決まったが、たとえば10分後にリクエストを取っても同じ結果だったかというと、そういうもんでもないだろうと思った。『瞼の母』は名曲で素晴らしいんだけど、ここはやっぱり、『勧進帳』聴きたかったなぁ…。まあ、いつかそういう日が来るとは思うけど…。

同じくケイコ先生も悩ましい選択を迫ってくる。結果、二題が同点決勝となり、『天狗の女房』に僅差で決まる。決定まで、幕内でキャーキャーと大騒ぎしていたとか。やっぱ、女子ですな~、かわゆいね。民話調であり怪異譚であるこの作品。何が怪異で恐ろしいかって、まさに「天狗の女房」の180度の大転換であります。いやもう、女の人はホンマ怖い怖い…。

トリはもちろん、幸枝若会長で。こちらも二題が同点決勝の末、やはり僅差で「山崎迎え」に決定。時節柄、相撲ネタで聴かせてもらいたかったが、「会津の小鉄、強し!」を見せつけられた。ちょこちょことクスグリを入れ込みながら、軽妙に、聴かせるところは一気呵成に攻めてくる幸枝若節に酔いしれる幸福なひとときは、あっという間に過ぎ去り、おなじみの「ちょうど時間となりました」。この日はサービスで「インフルエンザに気を付けて」と、客席を労わって、幕が下りたのであった。

リクエストという新機軸は、なかなかおもろかった。ご見物衆よりも幕内がハラハラドキドキしたことだろう。ま、そこは、「パッと言われて、シャッとこなす」のだから、プロですわなぁ~。
進行役の隼人&幸太は年々、息が合わなくなってないか?(笑)。二人が「名人」の舞台に立つにはまだまだ修行してもらわんならんけど、去年も記したと思うが、数分でいいから、彼らにも喉を披露する機会を与えてあげてほしいなぁ、と思うのは、小生だけではないはずだと思うが…。

(平成30年2月24日 日本橋国立文楽劇場)



 


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