【睇戲】『目撃者 闇の中の瞳』(台題=目撃者)

『目撃者 闇の中の瞳』
(台題=目撃者)

今年最初の中華電影は、話題の台湾映画から。

鑑賞日の数日前に、台湾東部で台湾式震度7の地震が発生し、花蓮では数棟のビルが傾き、死傷者多数。今のところ、被災したビル以外での目立った被害はない模様で、すでに旧正月前の慌ただしい日々が始まっている。現地では、特に必要な物資があるわけでもなく、あったとしても台湾だけで十分まかなえるということなので、どうしても募金や物資を送りたい人がいるなら、現地へ観光旅行に行って差し上げるのが、一番よろしい。或いは、台湾映画を観て、微力ながら興行成績に寄与するのも、一手かなと。

小生は、そんな温かな心の持ち主ってわけでもなく、単に気が付けば上映最終日だったので、あわててシネマートへ駆けつけたという次第(笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

英語タイトルを見て、『パタリロ!』の『クックロビン音頭』が頭の中で繰り返されるという、年代である(笑)。ただし、映画自体は濃密なサスペンスである。

17159334_1555658447795651_2950929663683362927_o台題 『目撃者』
英題 Who Killed Cock Robin
邦題 『目撃者 闇の中の瞳』
製作年 2017年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):程偉豪(チェン・ウェイハオ)

領銜主演(主演):莊凱勛(カイザー・チュアン)、許瑋甯(シュー・ウェイニン)、柯佳嬿(アリス・クー)、李銘順(クリストファー・リー)、李淳(メイソン・リー)

台湾映画としては、非常に珍しい傾向の作品。こういうのを好まない国民性なのか? しかし本作は大ヒットし、リピーターも続出したというから、わからんもんである。小生的には「リピートするほどでもないやろ~」ってところだが、2017年の「金馬」では、6部門でノミネートされたということだから、話題作だったことには違いない。「へぇ~」って感じだが(笑)。

主人公の若手記者を演じた莊凱勛(カイザー・チュアン)は、多分これが日本での初お目見えの作品だろう。けっこうミステリアスな空気をよく表していたと思うが、ちょっと日本で人気が出るようなタイプでないと見た。役柄で損したか? そこらへんは、もう数作観てみないとなんとも言えないなぁ。一方で、彼の先輩記者・マギーを演じた許瑋甯(シュー・ウェイニン)は魔性目線でグイグイ迫って来るし、事件の大きなカギを握る女性・アイティン役の柯佳嬿(アリス・クー)は、『モンガに散る』(2012・台)、『共犯』(2014・台)、『百日告別』(2015・台)と、経験を積んできているのがよくわかる演技だった。

もう一人見逃せないのは、下っ端交通警官、実は事件の核心に位置していたウェイ役の李淳(メイソン・リー)。金馬獎では最優秀助演男優賞にノミネートされた。「制服を着た狂気」は、主役の莊凱勛(カイザー・チュアン)を食ってしまうほどだった。うん、彼はイイねぇ~。

監督の程偉豪(チェン・ウェイハオ)は、長編ホラー『紅衣小女孩』(2015・台=日本未公開)でデビューした33歳の新進気鋭。

♪だ~れが殺したクックロビン~っていう『クックロビン音頭』が、頭から離れないと記したが、この映画の見せどころは、まさにそこ。英語タイトルとしては、これ以上ないだろう。最終的には「お前が殺した。が、俺も殺した」みたいな。

程監督が描きたかったのは、恐らくそこで、思惑や嘘がいくつもの真実を作り上げてゆき、その都度、観客は裏切られてゆくという展開で、ちょいとばかりクドさも感じるが、場面場面に散りばめられた伏線を、自分なりに回収してゆく面白さは感じた。後から思い出せば、「ああ、あれはそういう意味やったわけね」ってのがいくつもあるから…。

で、正真正銘の「回収」となった場面の、柯佳嬿(アリス・クー)が演じるアイティンの姿にはびっくらこいてしまった…。どうびっくらこいたかに興味がある人は、まだまだ「近日公開」のシアターが全国各地にあるようなので、自分の目でお確かめを(笑)。ひとつ言っておくと、最初から最後まで常に緊張感と向き合わなければならないので、けっこう疲れる映画ではある(笑)。

《目擊者》正式預告

いつもなら、「甘辛」の評価を記すのだけど、なんかこの作品はそれが難しいので、やめとくわ(笑)。

そうそう、この日に、「第13回大阪アジアン映画祭」の上映作品ラインナップが発表された。香港映画は、「あれ観たい」、「これやらないとウソでしょ?」と思っていた作品がずらっと揃って大満足。全部観られたらうれしいけど、こればかりは勤労者には至難の業…。実に悩ましい。

<香港映画>
『空手道』、『以青春的名義』、『春嬌救志明』、『中英街一號』(世界初上映)、『藍天白雲』
『香港製造』(デジタル・リマスター版)
<台湾映画>
『亮亮與噴子』、『血觀音』、『狗狗傷心誌』、『川流之島』、『紫色紐約』、『帯我去月球』
そして、我らが林家威(リム・カーワイ)監督による久々の一本。『どこでもない、ここしかない』(世界初上映)

(平成30年2月9日 シネマート心斎橋)



 


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