第12回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門
『１万キロの約束』（台題＝一萬公里的約定）
今年のアジアン映画祭、台湾映画3本目。今回は台湾映画はこれで終了。来年は倍増を期待したいが、どうなんだろう、昨今の台湾映画事情は。『百日告別』、『牯嶺街少年殺人事件』は全国で順次上映が始まっているが、肝心の現地発の「胸アツ」な情報がほとんどないんだけど…。
さて、この『１万キロの約束』には、昨年は即完だった『私の少女時代』で、一躍人気スターの仲間入りを果たした王大陸(なんと雄大な名前なんだw)が出演。主役ではないが準主役とでもいうべき微妙なポジションを、どうこなすかと、意地悪な小生は手ぐすねひいて待っていたのである(笑)。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題 『一萬公里的約定』
英題 『10,000 Miles』
邦題 『１万キロの約束』
現地公開年 2016
製作地 台湾
言語 標準中国語
評価 ★★☆（★5つで満点 ☆は0.5点）
導演（監督）：洪昇揚（サイモン・ホン）
監制（プロデューサー）：周杰倫（ジェイ・チョウ）、林義傑（ケビン・リン）
主要演員（主演）：王大陸（ダレン・ワン）、黃遠（ホアン・ユエン）、賴雅妍（メーガン・ライ）
聯合演員（共演者）：龍劭華、廖俊、澎澎、樊光耀、蘆惠光、謝語恩（樂樂）、簡莉紋、李至正、郭秩嘉、沈昶宏
客串（ゲスト）：周杰倫（ジェイ・チョウ）
先に、王大陸のことを記したが、もうひとつの見どころというか話題は、この作品のプロデューサーが、中華圏で絶賛超絶人気腹筋割れまくり男歌手の周杰倫（ジェイ・チョウ）だということ。さらに言えば、そのジェイが実在のアジアを代表する鉄人ランナー・林義傑（ケヴィン・リン）の偉業を下地にした映画をプロデュースするに至ったという作品だということ。ちなみにジェイはこれが映画初プロデュース。
この林義傑という人、人類で初めてサハラ砂漠横断マラソンを完走したり、「世界四大極地マラソン」全大会で優勝したりなんていうとんでもない人で、周杰倫はこの人の大ファンだという。「ファンだから一緒にプロデューサーやってね」ってわけでもないだろうが、林義傑もプロデューサーに名を連ねている。
ジェイは、林義傑に応援の曲も提供しているほど御執心で、今回も実にうまい具合に（見様によってはあまりにもクサいw）スクリーンに現れ、自身の曲『蝸牛』を採りこんでいたりする。
まあ、我々のような中華芸能おたくは、ジェイが現れただけで「うぉ～！」とか「ぎゃはっ！」とか「ちぇっ！カッコつけやがって！」ってところなんだが、そうじゃない人にとっては「歌手の人」「歌手役の俳優さん」にすぎず、「ホンモノの歌手なのか？」と思う人がいても不思議じゃないわな。ま、ジェイの話はここらで置いといて。
監督の洪昇揚（サイモン・ホン）は、ハリウッドのSF映画「バトル・オブ・スカイアーク」で注目された、台湾映画界期待の人材。上映後に舞台挨拶に登場したが、すごく人のよさそうなお方。そういう背景のある監督だから、うまいことCG使ってたりする。CGは下手こくと取ってつけた感でストーリーも白けてしまうことがあるが、この作品ではCGという技法があったればこそ、この場面が生きたという使われ方で、よかったんじゃないですかね。
物語は…。
小学生並みのチビだが、鼻っ柱の強い方崇宇は、父の反対を押し切り、兄・阿軒が参加する陸上チーム入りを志願したが、女コーチ・周以晴とのレースに完敗。と言いつつも、才能を認められ、以晴の指導の下、最速ランナーを目指す。以晴への恋心、選手生命を左右しかねない負傷などなどの試練を乗り越え、シルクロード1万キロ走破に挑む…。
黃遠（ホアン・ユエン）を方崇宇役に登用した理由を聞かれ、洪監督は「ウルトラランナーの林義傑さんは背の低い人で、台湾の俳優で黃遠より背の低い俳優がいなかったから」と答え、客席を笑わせたが「もちろん、彼は上海国際映画祭で主演男優賞も獲得している優秀な俳優」とフォーローも忘れずに(笑)。
印象に残るのは、台湾は九份の美しい風景。九份に限らず雄大な自然は台湾のかけがえのない財産。スクリーン越しであっても、こうした風景に接することができるのは無上の幸せ。台湾での撮影場所に九份を選んだことについて洪監督は言う。「小さい頃から馴染みのある場所だし、非常に美しい山と海がありますからね。特に海は主人公の内心を象徴するものとして重要でした。彼は海を越えて、アメリカや中国に行くのですから」。確かに、幼い兄弟が、そして大人になった兄弟が海に向かって語り合うシーンは、この作品のひとつの象徴的シーンとして心に残る場面である。
陸上スポ根＆情愛ドラマで、いかにも台湾映画という雰囲気なのだが、どうも淡泊で、厳しい言い方をすると「凡作」に終わったのは残念。冒頭に記した王大陸だが、監督が期待した「自分の思いを素直に表現できない男子」という点では『私の少女時代』同様にうまく演じていたと思うが、扱いが中途半端に思え、勿体なく感じた。そういうことが重なって低い評価になってしまったが、監督はこれからの人。期待したい。
一萬公里的約定 正式預告
（平成29年3月9日 ABCホール）
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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