【睇戲】『敗け犬の大いなる煩悩』(中題=令伯特烦恼) <ワールドプレミア上映>

第12回大阪アジアン映画祭
特集企画《ニューアクション! サウスイースト》

『敗け犬の大いなる煩悩』(中題=令伯特烦恼)

poster今年の大阪アジアン映画祭、例年にも増してマレーシア映画が元気だ。多民族国家にして多言語国家。今回観ただけでも、『ミセスK』(香港と合作、広東語)、『うちのおバカ社長』(インドネシアと合作、インドネシア語・マレー語)、『インターチェンジ』(インドネシアと合作、マレー語・英語)、そしてこの『敗け犬の大いなる煩悩』(標準中国語)とまさに多民族多言語国家ならでは。そして小生自身、気が付いてみれば、鑑賞した16作品中4作品がマレーシア映画もしくは合作作品だったわけで、香港映画に次ぐ本数となっていたことからも、その盛況ぶりがうかがわれる。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

15994891_671690833008782_2731246084709242993_o中題 『令伯特烦恼』
英題
 『GOODBYE MR LOSER』

邦題 『敗け犬の大いなる煩悩』
現地公開年 2017年3月23日(予定)
製作地 マレーシア
言語 標準中国語

評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 鄭建國(アドリアン・テイ)

領銜主演(主演):方偉傑(ファン・イアン)、雲鎂鑫(フーン・メイシム)、林一心(リム・イーシン)、許愫恩(アンジョー・コー)
主演(出演):林德榮(ジャック・リン)、葉朝明(ジャック・ヤップ)、方賈爲(レックス・プン)、陳立揚(チェン・リー)
特別演出(特別出演):黃嘉千(フィービー・フアン)、陳炳順(チャン・ペンソン)、吳柳螢(ゴー・リューイン)、劉謙益(リチャード・ロウ)、何文輝(ホー・マンファイ)、吳蔚昇(ゴー・Vシェム)

2015年、中国の人気劇団「开心麻花(開心麻花)」が、オリジナルの舞台劇『夏洛特烦恼(夏洛特煩悩)』を映画にセルフリメイクして、興行収入14.4億人民元の大ヒットを記録したのだが、たまたま飛行機でこの映画を観た鄭建國(アドリアン・テイ)監督が、「これはマレーシアでも絶対イケる!」と直感し、制作されたのがこの『敗け犬の大いなる煩悩』こと『令伯特烦恼』。

今回はもちろん過去にも、映画祭期間中に2回観たのはこの作品だけ。超お気に入り。こいつはとんだ拾いもんだと思った。おそらくこの先日本で、もう目にすることはない作品だろうなと思うと、拾いもんどころの話じゃない。人生大いに得したような気分。

まあとにもかくにもおもろいのだ、楽しいのだ、愉快なのだ。主役の方偉傑(ファン・イアン)がいい。彼はシンガポールでは歌手として俳優として超売れっ子ということだから、当然マレーシアでも人気超絶なのだろうが、日本で知ってる人はほとんどいなかっただろうし、今後も知ってもらえるかどうか…。しかしこいつは逸材よ、いやマジで。

上映終了後、舞台あいさつに出てきた方偉傑は「実は今日、初めて完成した映画を観ました」(3月9日 阪急うめだホール)

台湾の人気バンド五月天(メーデー)の『戀愛ING』が象徴的に使われている。

高校時代のクラスメートで主人公の林一白が激しくアタックした曉薇がこともあろうか、まったくイケてない男と結婚するその式の場で、泥酔。そして偶然式会場でアルバイトしていた、同じくクラスメートだった、今の恐妻と衝突。大暴れして式を台無しにした挙句、逃げ込んだトイレでへたり込んでしまう。気が付いたら高校時代にタイムスリップしてたことから、彼の「人生やり直し」の日々が始まる。

その時、曉薇に愛を告白するために校内放送で「自作曲」として弾き語りを流したのが、『戀愛ING』。当然ながらタイムスリップした昔、まだこの曲は世に出ていなかった(笑)ものだから、やり直し人生は思わぬ方向に…。

とまあ、こういうストーリーで、オチも想像通りなんだが、それがなんかもう小生のツボにはまってしまったのだろう、おかしくておかしくて、結局2回観てしまったという次第だ。ツボはやっぱり劇中流れるその楽曲の数々だな。

戀愛ING』もさることながら、「俺、ホンマにタイムスリップしたんだ!」と林一白が気づいたときに流れた謝霆鋒(ニコラス・チェ)の『活着VIVA』が、マジで時代が1999年に逆戻りしたことをよく表していて、ウケた。これは当時香港アイドル道まっしぐらだったニコラスの代表曲だから、中華系で当時中高生、今は30歳代の人にはど真ん中直球だったと思う。

さらにその少し前にテレビで爆発的人気となった勧善懲悪時代劇『包青天』の主題歌で黄安が歌う『新鴛鴦蝴蝶夢』がたびたび流れたりして、胸キュンもの。選曲は監督自身によるものだそうで「もちろん著作権料も払ってます(笑)」。

また、劉德華(アンディ・ラウ)、周杰倫(ジェイ・チョウ)、アーメイこと張惠妹ら中華圏で絶大な人気を誇る歌手たちとの絡みも楽しい。こうした有名人はそっくりさん俳優なのだが、鄭建國監督曰く「キャスティングチームが大変苦労した。似ている人を探すのは時間のかかる作業だ」。その苦労の甲斐があったと思うな、特にアーメイはてっきり本人だと思ったもん!

なかなかの中華系イケメン監督でありました(3月9日 阪急うめだホール)

また、バドミントン強豪国のマレーシアらしく、五輪メダリストなどバドミントンの世界的な選手3人が特別出演している。ってのを現地中文メディアを漁っていたら発見した。陳炳順(チャン・ペンソン)、吳柳螢(ゴー・リューイン)、吳蔚昇(ゴー・Vシェム)の3人がどれだけすごい選手かは各自お調べください(笑)。

この作品が今後、マレーシア以外で上映の機会があるのかどうかは、今回がワールドプレミア上映だったこともあり、わからないけど、この内容なら全中華圏でウケると思う。特に隣国のシンガポールではかなりの線いくんじゃないかなと。まずは本国マレーシアでの大ヒットを願う。

上映会場には最新? のポスターも掲出されていた。見るからに楽しそうな映画だということが伝わる。宙に舞う携帯電話が「あの当時」のNOKIAの人気機種っぽいのがもう、それだけでウキウキさせてくれる(笑)。

《令伯特烦恼》GOODBYE MR LOSER Official Trailer

(平成29年3月6日・梅田ブルク7、9日・阪急うめだホール)


 


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