第11回大阪アジアン映画祭
《台湾:電影ルネッサンス2016》
『The Kids』
(台題=小孩)
台湾の若き女性監督、于瑋珊(サニー・ユイ)の監督デビュー作である。
上映後、ステージ現れた于監督。ほとばしる才能を感じさせる31歳である。大学卒業後、張作驥(チャン・ツォーチ)監督のもとで学び、09年から創作活動を開始したという。ま、張作驥自身もそれほど多くの監督作品があるわけでもないので、今後はよいライバル関係が生まれるんじゃないかと思う。ぜひそうやって台湾映画を盛り上げていってもらいたいものである。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題 『小孩』
英題 『The Kids』
邦題 『The Kids』
現地公開年 2015年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督): 于瑋珊(サニー・ユイ)
領銜主演(主演):巫建和(ウー・チエンホー)、温貞菱(ウェン・チェンリン)
主演(出演):柯宇綸(クー・ユールン)、高盟傑(カオ・モンチエ)、洪群釣(ホン・チュンチュン)
主演の巫建和と温貞菱は、昨年観た『共犯』でも主役級で出演しており、今では台湾映画の次代を担う有望株として、期待されている若手である。巫建和は『共犯』のときとは違って短髪でちょっとふっくらしたかな? 「え? あの子なんか!」って感じだ。温貞菱も今回はオープニングこそ中学生という設定だが、その後の展開の中では完全に大人の女だった。上映後、于瑋珊監督が言っていたが、温貞菱は非常に熱心に役作りに取り組む子だとのこと。今作、その成果が出ていると言える。巫建和もミステリアスな雰囲気がこの作品の空気感を作り上げていて、二人ともいい感じで成長していっているなあというところか。
作品は、「青春の残酷な結末」とでも言うべきか。しかし、ラストシーンに据えた、二人が付き合い始めたころの回想シーンが、「残酷な結末」のままで物語を終わらせない救いを主人公の二人に与えている。観客も救われた思いだろう。もし、あのシーンが無いまま終わっていたら、すごい後味悪い気分で家路につかねばならない…。観客自身が明日に希望を持てなくなってしまう。それはすごく嫌だな…。そうさせなかったことが、この作品が世界各地で高い評価を受けている要因なのかもしれない。
10代で子供を持った二人を取り巻く環境は、様々な問題をはらんでいる。貧困はもちろんのこと、不倫、ギャンブルに狂う親、DV、不法薬物の売買…。社会の暗部をこれでもかと見せる展開に、重い気分になるが、そこで高盟傑が演じる弁当屋の大将の存在が、これを救ってくれたような気がする。巫建和のバイト先のこの大将、やたらと怒鳴りつける荒っぽいおっさんだが、それでも巫建和演じる寶力(バオリー)のことを気にかけてくれている。この存在は、作中の寶力はもちろんのこと、作品自体にとっても重要なポジションだったと思う。
午後9時10分からの上映という、人によっては終電を気にしながらの遅い時間にもかかわらず、ほぼ満員の観客。期待値の高さがうかがわれた。秋にはシネマート心斎橋で上映が決定しているので、もう一度「早い時間帯(笑)」にたっぷりと堪能したいと思わせるよい作品だった。
それにしてもこの色彩、空気、香港映画には無いものだな…。こういう発見があるから、この大阪アジアン映画祭はおもしろいのだ。
(映画祭出品作品につき、甘口評、辛口評は無し)
電影【小孩 / The Kids 】60″預告
(平成28年3月6日 シネ・リーブル梅田)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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