【睇戲】『KANO 1931海の向こうの甲子園』(台題=KANO)

『KANO 1931海の向こうの甲子園』
(台題=KANO)

昨年の「大阪アジアン映画祭」でオープニング作として上映され、その1回限りで同祭の観客賞を受賞。なんとかその「1回限り」の上映を見逃すまいと、チケット発売当日には開始時間にPCをスタンバイして待機していてのだが、つながったその時点ですでに「完売」。見事に瞬殺の憂き目に。その日から待つことおよそ1年。ようやく念願かなって、「嘉義農林学校ナイン」と会うことができた。感無量。

Kano-2014-film-poster

台題 『KANO』
英題 『KANO』
邦題
 『KANO 1931海の向こうの甲子園』
製作年:2014年
製作地:台湾
言語:台湾語、客家語、アミ族語、日本語

評価:★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 馬志翔 (マー・ジーシアン)
監制(プロデューサー):黃志明(ジミー・ファン)、魏德聖(ウェイ・ダージョン)
編劇(脚本):陳嘉蔚(チェン・チャウェイ)、魏徳聖(ウェイ・ダージョン)
摄影(撮影):秦鼎昌(チン・ディンチャン)

領銜主演(主演):永瀬正敏、坂井真紀、曹佑寧
演出(出演):伊川東吾、張弘邑(ヂャン・ホンイー)、陳勁宏(チェン・チンホン)、鐘硯誠(ゾォン・イェンチェン)、謝竣倢(シエ・ジュンジエ)、大倉裕真、飯田のえる、山室光太郎、鄭秉宏(ェン・ビンホン)、蔡佑梵(ツァイ・ヨウファン)、陳永欣(チェン・ヨンシン)、周竣豪(チョウ・シュンハオ)、魏祈安(ウェイ・チーアン)、青木健、葉星辰(スター・イエ)、吉岡そんれい
特別演出(特別出演):大沢たかお

栄誉顧問:王貞治、郭源治

まだ映画は絶賛公開中なので、あれこれと劇評は控えるが…。

台湾大好きな人も大嫌いな人も、野球好きも野球に興味ない人も、戦前の日本の台湾統治に一定の評価をする人も、植民地主義の悪政と断罪する人も、右旋回な人も左巻きな人も、男も女もどっちでもない人も…。とりあえずはその立場は家に置いて来て、『KANO』を観てみるといいよ。きっと、いいよ。そんな映画。ここ数年の自分の映画鑑賞の記憶で、ダントツの作品。多分、生涯の記憶に残る数作品のひとつになったはず。それは、多くの映画祭で「観客賞」という栄誉が与えられたことが実証している。

嘉義農林学校ナインを演じた面々はもちろん、主演の永瀬正敏にしても、作品への熱い思いは同じだったはず。画面からそれが充分に伝わってきたからこそ、小生は上演時間3時間5分のうち2時間50分は涙流しながら観ていたんだ。それは恐らく、右の席の兄ちゃんも、左の席の仕事サボってるサラリーマンも、前の席の夫婦も同じこと。いや~、こんなに泣いた映画、久しぶりだな…。そして、いい涙を流させてもらったと思っている。

永瀬正敏は言うこと無しの役者ぶりだったけど、オーディションで選ばれたという野球部選手、とくにエースの呉明捷を演じた曹佑寧はさすがに現役の選手だけあって、説得力のある演技だった。彼は昨年、台湾で開催された「第1回IBAF 21Uワールドカップ」に台湾代表の外野手として出場していた。実況の島村アナウンサー曰く「今どきのお洒落な髪型をした若者です。映画の演技よし、野球をやってもよし、女の子たちにモテモテでしょう」とか言ってたのを思い出す。もちろん、映画の中では丸坊主だけど。

烏山頭ダム建設に多大な尽力をし、台湾の農業を飛躍的に発展させた八田與一を演じた大沢たかおは、泥まみれシーンの多いこの作品の中では、それはもう一陣の風のごとき存在感であった。ああいう爽やかな男になりたいもんやわな。もう手遅れやけど(笑)。

そして。なんと言っても、やっぱり自分がどれだけ台湾の人が、土が、空が、風が、水が好きかということも、改めて確認できた。ホント、台湾はなぜここまで小生をひきつけてくれるんだろうか…。

とまあ、これくらい台湾を誉めちぎっておけば、何かいいことがあるだろう(笑)。

KANO 正式預告

余談ながら、『KANO』に1年越しで会えたこの日、偶然にも今年の「第10回大阪アジアン映画祭」のラインナップが発表された。早いねぇ、1年がたつのは…。主要作品は下記の通り。

オープニング『白河夜船』(日) クロージング『国際市場』(韓)
台湾作品
『行動代號:孫中山(=コードネームは孫中山)』、『軍中樂園(=軍中楽園)』、『沙西米(=サシミ)』、『逆轉勝(=逆転勝ち)』、『光陰的故事(=光陰的故事)』、『恐怖份子(=恐怖分子)』、『光陰的故事-台灣新電影(=光と陰の物語:台湾新電影)』
香港作品
『香港仔(=アバディーン)』、『單身男女2(=単身男女2)』、『點對點(=点対点)』、『全力扣殺(=全力スマッシュ)』、『黃金時代(=黄金時代)』、『雛妓(=セーラ)』
大陸作品
『唐山大地震(=唐山大地震)』

かつて自分が住んでいた漁村がタイトルになってる『香港仔』は見逃せないのは、言うまでもないこと。日本公開を待っていた一作。台湾作品では、エドワード・ヤンの2作品はちょっと昔の作品だけど見ておきたい。そして満を持してというか、東日本大震災が起きていなければあの年の春に公開されていたはずの『唐山大地震』がいよいよ公開。これも見逃せない。また香港&台湾映画の日々が続く3月が来る…。けっこう懐にこたえる恐怖の日々。さあ、宝くじ売り場へ急ぎませう!!(笑)。

(平成27年2月6日 TOHOシネマズなんば別館)

*「TOHOシネマズなんば別館」ってどこやねん?って思ってたら、昔の東宝敷島のことだったのね…。



 


8件のコメント

  1. 監督・馬志翔の本名はUmin Boyaでセデック族ですね。シナ語名はたぶん<magician>の語呂合わせではないかと思うのですが、レスリーさんのご意見や如何?
    <唐山大地震>は2011年1月に父の49日で一時帰国するフライト中に見ました。その年に311があった時は「あの映画のせいだ」となぜか思いました。しかしその後忘れがたい映画なので香港からDVDを取り寄せました。という6作品がパッケージされたものです。<集結號>という一篇もよかったです。大阪アジアン映画祭って旧作も上映するんですね、初めて知りました凹

    1. 馬志翔はそういう背景もあって、「日本人、漢人、蛮族の三民族による団結、友情の物語」として仕上げたかったのかもしれません。その辺は、馬志翔よりも脚本の魏徳聖(セデック・バレの監督、脚本)の方が意識したかもしれませんが。まあ、左な人たちには、やたらとこの映画にケチをつける人が目につきますが、「そこはアナタ、娯楽ですョ。皆で泣き笑いを楽しみましょうよ」と(笑)。
      「大阪アジアン映画祭」は旧作上映も見どころです。昨年はランラン・ショウの逝去を悼み、ショウブラザーズ時代の作品が上映されましたが、さすがにその時代には興味がわきませんでした(笑)。

  2. 変だなあ~、シナ語のインプットができないようです。<冯小刚电影集>(Feng Xiaogang Dianzingji) と書きたかったのですが・・・・

  3. 4月26日、こちらでもやっと<KANO>が映画館でプレミアム上映されました。エンデイングタイトルには監督として魏徳聖が馬志翔と並んでちゃんとでてました。共同監督だったのです。このイベントに合わせて魏徳聖監督とプロデューサーの黃志明氏が来独されました。お二人と私的に会話する機会もありましたよ♪ しかしまだよく消化していないので、うまくこなれたらいずれブログ(変容する世界)にその内容をエントリーしたいと思います。

    1. そちらの観客の反応はどんな感じだったでしょうか?
      魏徳聖と黃志明と会話できたとは、これは大変よい経験をされ、羨ましい限りです。
      ブログが書き上がるのを、楽しみに待つことといたします!

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