【睇戲】『激戦 ハート・オブ・ファイト』(港題=激戰 Unbeatable)

『激戦 ハート・オブ・ファイト』
(港題=激戰)

何年前だか忘れたが、香港紙『蘋果日報』の娯楽版(芸能分冊)のサイトを眺めていたら、いきなり筋骨隆々の男の写真がドカーンと。

「うん、見たことある顔やけど…」と記事を読むと、俳優の張家輝(ニック・チョン)だった。出演映画の役作りのために肉体改造を行ったという内容だったが、人間の身体って、こんなにまで改造できるのか?と疑問には感じたが、「どうせそんな映画、日本では公開されないだろうから、観ることも無いだろうし…」と思っていたら、その『激戰』が今回、めでたく日本で公開されてなかなか高い評価を得ているという。

小生の張家輝の印象は、TVB(無線電視台)の連続ドラマ、とりわけ警察、弁護士もので主役ではなくて三番手くらいのちょっとワケありの過去を背負う役どころというものだったが、映画に活動の軸足を置いてからは、けっこうヒット作に出演し、主役、準主役をこなすようになり、いまでは香港映画に欠かせない俳優になっているようだ。本作でもニックは第33回香港電影金像奨で最優秀主演男優賞を受賞している。TVB連続ドラマの三番手だったニックが、どんな俳優になってどこまでの肉体改造ぶりを見せてくれているのか?MMA(総合格闘技)の場面と合わせて、じっくり拝見しよう。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

Unbeatable港題 『激戰』
英題
 『 Unbeatable』
邦題 『激戦 ハート・オブ・ファイト』
製作年 2013年
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 林超賢(ダンテ・ラム)

領銜主演(主演):張家輝(ニック・チョン)、彭于晏(エディ・ポン)、梅婷(メイ・ティン)、李馨巧(クリスタル・リー)
主演(出演):安志杰(アンディ・オン)、王寶強(ワン・バオチァン)、高揵(ジャック・カオ)、陳嘉輝(チャン・カーファイ)

映画の舞台はマカオ。昨年からどうも個人的にマカオづいている気がする。昨年は「マカオ映画祭」が大阪で開催されて6作品を観たし、その余韻が冷めた頃に年明け早々、返還前のリスボアのカジノが舞台の沢木耕太郎『波の音が消えるまで』を一気に読破。「ああ~~、マカオ行きた~い!」「リスボアのカジノで夜通し博打した~い!」「極楽サウナで男子に生まれた快楽を~!」なんて思ってたら、またもやマカオ。いやはやどういうめぐりあわせか…。

【甘口評】
張家輝の「肉体改造ぶり」はなるほどただ事ではなかった。若手の意気のイイ彭于晏、安志杰の肉体も相当なものだったが、この二人と遜色ないかそれ以上に鍛え上げてきた張家輝の役作りにまずは敬服。総合格闘技の対戦シーンや試合に至るまでの激しいトレーニング風景などは、役者とは言え、ここまでのことをやり遂げたことに拍手したい。と、以上はプロレスおたく見地からの「甘口評」。

「香港映画おたく」としては、上述した点ももちろんだが、張家輝しかり彭于晏しかり、才のある性格俳優としての姿を大いに発揮できた作品ではなかったかと思う。

また、子役の李馨巧が非常に上手い。香港映画の子役と言えば、『過ぎゆく時の中で(原題・阿郎的故事)』などに出演した黄坤玄(ウォン・コンユン)、『リトル・チュン(原題・細路祥)』で主役を勤めた姚月明(ユイ・ユエミン)に匹敵するくらい気に入った。彼女の存在や演技が全編を通して大きく輝いている。金像奨で助演女優賞にノミネートされたのも納得。マレーシア生まれの10歳。マレー語、英語、広東語、北京語を自在に操る才女。その母親役の梅婷が実にイイ女。精神に傷を負った母親を好演していた。

【辛口評】
雲南、北京、マカオ、香港での4つの物語が発端となって、終盤の格闘シーンなどへ展開するわけだけど、ここの導入部がちょっとあっさりしすぎてたかな。延々見せるものでもないだろうけど。ここらの匙加減って難しいと思った。

ストーリー全般として、やや淡泊。その分をトレーニングシーンや格闘シーンで補って余りあるかと言えばそうでもない。CG、ワイヤーワークは一切使用せず生身の俳優同士が肉を斬り骨を断つ場面であったのだと思うが、それゆえにストーリー展開にもうひとつ「押し」が欲しかった。この作品がなぜにここまで評価が高く、日本でも公開直後から大きな反響を呼んでいるのか、いまひとつ理解に苦しんだのは事実。まあ、「娯楽」という視点で言えば、及第点以上ではあるのだろうけど…。今、香港映画ってこういう感じなのかな…。ちょっと辛口すぎるか(笑)。そんな次第で、★3つ。

【激戰Unbeatable】 香港預告

(平成27年1月31日 シネマート心斎橋)




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