【上方芸能な日々 歌舞伎】第23回上方歌舞伎会

降るのか降らんのか、暑いのか涼しいなったんか…。なんやようわからん週末の午後、今月はよく通った、日本橋は国立文楽劇場へ。文楽ちゃいますよ、今日は歌舞伎です。久しぶりに歌舞伎観ました。

歌舞伎俳優既成者研修発表会

第二十三回 上方歌舞伎会

?????「歌舞伎俳優既成者研修発表会」などと、小難しいことを言うておりますが、要するに、発展途上にある若い歌舞伎俳優や、日頃は脇から舞台を支えている俳優の、日頃の研鑽の成果をファンの皆さんにご覧いただこう、という公演。「上方歌舞伎」と謳っていることからも察せられると思うが、松嶋屋の三兄弟(片岡我當、秀太郎、仁左衛門)が指導に当たっている。上方の演技法や演出などを若い人たちに継承してゆく意味合いも強い公演で、単に、若手や脇役が年に1回、大きな役どころにチャレンジさせてもらえる、それだけの舞台ではない。そんな背景もあって、出演者たちは、このチャンスをなんとかモノにして、飛躍のきっかけにしようと、張り切って舞台に臨むので、その姿がなかなか頼もしい。

そんな彼らを応援しようと、文楽劇場は満員のお客さん。これって、テレビドラマ『ぴんとこな』効果? ああやって歌舞伎の世界をドラマにしてくれるのはうれしいけど、やっぱり「ジャニーズ仕様」なのは仕方ないか…。いずれにしろ、満員と言うのは活気があってよろしいな。客層も実に様々で、歌舞伎公演でよく見かける御着物姿の御婦人方はもちろん、若いカップル、お子さん、高校生くらいの少年、苦虫かみつぶしたような表情のおっちゃん達、噺家さん…などなど、文楽公演とはまた違う、そして通常の歌舞伎公演とも一味違うメンツが客席を埋めておりました。嬉しいのは、大歌舞伎同様に、彼らにも大向こうから掛け声がかかるのですよ、「松嶋屋!」とかね。きっと励みになったことと思いますね。

『菅原伝授手習鑑』(すがわらでんじゅてならいかがみ)

車引きの場

■文楽、歌舞伎ともどもに、人気の演目。竹田出雲、並木千柳、三好松洛のゴールデントリオの合作。延享3年(1746)8月、大坂・竹本座にて、人形浄瑠璃として初演以来、8か月のロングラン興行となる大当たりで、初演翌月には、歌舞伎化され、京都、江戸でも人気を呼ぶ。

指導=片岡我當、片岡秀太郎  梅王に當吉郎、松王に松太朗、桜丸に鴈洋、時平に鴈大。それぞれ、役どころを理解した、いい芝居をしていたかと。

公演の趣旨を鑑みるに、あれこれと劇評を申すのは無粋と言うもので、ここでは、小生の注目株のひとり、松太朗丈の名前を知ってもらいたいと。元は前進座の俳優であったけど、入座から5年後に歌舞伎に転身。仁左衛門門下として活躍中。昨年は平成中村座にも出演の機会に恵まれる。「見る人は、ちゃんと見ている」ということだろう。関東の出身ながらも、上方の大看板・仁左衛門丈のもとで、みっちりと上方の芸風の指導も受ける一方、今回の松王のようなスケールの大きな芸も、気持ちよく見せてくれる。もし、歌舞伎を見に行くようなことがあれば、「ああ」と思い出してみてください。それは何も松太朗丈に限った話ではありません。この日の出演者全てに対して…。こういう連中がおればこその、歌舞伎の舞台なのでありまする。そして大きな収穫!今回出演者最年少・吉太朗が、杉王をあそこまで安定感たっぷり演じるとは、ちょいとびっくり&将来が頼もしい!上方では愛之助丈以来の部屋子、がんばれ!

『伊勢音頭恋寝刃』(いせおんどこいのねたば)

序幕 野道追駆けの場、野原地蔵前の場、伊勢二見ヶ浦の場

二幕目 古市油屋店先の場、同奥庭の場

■これまた、歌舞伎、人形浄瑠璃ともに人気の高い演目で、「夏芝居」のひとつとして、この時期に公演されることが多い。通称「伊勢音頭」。寛政8年(1796)7月、大坂・角の芝居で初演、近松徳三(徳叟とも)作の歌舞伎劇でその年の5月に起きた事件をベースに劇化される。一説に、徳三は三日でこの作品を書き上げたとか…。

主役の福岡貢に佑次郎、お紺にりき彌、お鹿ちゃんが松四朗、料理人喜助を翫政、そして伊勢音頭には欠かせないこの人、仲居の万野を千壽というのが主な顔ぶれ。

この芝居、難しい役どころが並ぶだけに、役者の力量が問われるというものだが、それぞれ、目いっぱい演じていたかと。中でも、お鹿の松四朗の好演が光っていたかな。時に笑いも誘うお鹿であるが、あれは結構難しい役だろうなと、いつも感心しながら観ているわけだが、今回もまた、お鹿にちょっと釘付け。とは言え、まだまだキャラ不足は否めないが、そこはそれやね…。また、「車引き」で紹介した松太朗も、徳島岩次実は藍玉屋北六で登場。やっぱり目がそこに行ってしまう(笑)。昨年の南座顔見世にて、名題に昇進した千壽が万野を見事にやりきったのは立派。貢の佑次郎も、「辛抱立役」がはまり役かもしれないし、総体的には、チームワークよく芝居が進行していたと思いまする。

『車引き』、『伊勢音頭』通じて痛感したのは、上方の総合的な実力の高さでしょうか。と言って、お江戸の方がどれほどの力があるのかは、いまひとつ知りえないわけですが、こうして4公演いずれも満席にするのは、けっして、松嶋屋三兄弟の名前で呼んだというわけではないでしょう~そうは言いつつ、ちらりとお姿を拝見した仁左衛門丈にクラクラしてしまったミーハーでもありますw。普段は表に見えてこないことが多い役者さん達でありますが、一人一人にはちゃんとファンがいて、応援しています。公演を見たファンが、彼らがきちんと上方の芸風を引き継ぎ、精進し、またひとつ成長した姿を、大歌舞伎や来年の上方歌舞伎界で見せてくれることに期待を持たせてくれた、よき公演でありました。

??????????

あ、千秋楽の締めには、松嶋屋のお三方も舞台から挨拶されますとかで、来年は千秋楽に参ります、と、どこまでもミーハーな小生でござりまする。

(平成25年8月24日 国立文楽劇場にて午後の部観劇)

コメントを残す