【SARS10年を回顧-10】*旧ブログ

2003年のSARSから10年。当時の香港のありさまを振り返っています。

4月上旬。いよいよ在住邦人のうち、主婦や子供の帰国ラッシュがピークとなります。旦那さん一人を残してね…。

で、おとなしくしてりゃいいのに、成田や関空で待ち受ける報道陣に、あることないことしゃべる人がいるんですよね…。あることだけならまだしも、「ないこと」までしゃべっちゃうから困ります。

某日、日本の民放のサイトを見ていたら、こんな映像が目に留まりました。

香港から疎開してきたある主婦は、「自分の住まいは山の上にあるのだけど、そりゃもう、「下界」はみんなマスクしているし感染が増え続けるし、危険で「下界」になんて下りてゆけない」、なんておっしゃる。

あのね、あんた、神さんかなんかですか?「下界」って言い方、あんまりやないですか…。そりゃまあ、日系企業の駐在員サマですから、「山の上」に住まう大層ご立派なご家庭なんでしょう。そして、そういう人たちには「下界」で起きていることが、世にもおぞましい出来事に思えるんでしょう。でも、そんな「下界」で、ひとり取り残されたあんたの旦那は、今日も一生懸命働いてます。いや、意外にもそんなチンプンカンプンな嫁さんから解放されて、羽伸ばしているかも…。

いずれにしろ、こうした「えええ???」っていう発言の蓄積で、香港のイメージは現実から乖離してゆく一方だったのであります。

こういう一部の「物知らず」な人を除いて、ほとんどの在住邦人は、気分が滅入りながらも、割としれーっと生きてました。そうは言っても、母国の皆さん方は、こういう「物知らず」な帰国者の発言を真に受けちゃうからねぇ…。

「おばはん、黙っとれ!」と。

夜の銅鑼灣も、出歩く人少なく…

【4月7日】
■香港ではきょう新たに41人がSARS感染者と判明。累計883人。衛生署では、淘大花園ブロックE住民がウイルス検査を受け、感染がないと証明されれば、隔離命令終了前に帰宅することができると発表。そうでない場合は継続して服薬と隔離をする。現在、16名の淘大花園住民の喉と大便からコロナウイルスが見つかっている。

衛生署は、あす8日より淘大花園ブロックEの消毒を開始すると発表。食環署職員がキッチン、トイレ、とくに洗面所、バスタブ、下水管などウイルスが長時間生存しそうなところを重点的に消毒する。現在隔離されている住民は、家の鍵を当局に渡すか、1名代表を出して消毒に立ち会うことができる。隔離条例前に引っ越した住民の家は、明日の午後からあさっての午前にかけての指定時間に消毒する。またブロックEのエレベータなどは、管理会社が既に消毒している。

■情報筋によると、淘大花園ブロックEの大規模な感染の原因となったウイルスは、建物の下水管を通して伝播して、短期間に多くが感染したのではないかとのこと。一部の住宅ではパイプが詰まって本来の耐菌機能が働かず、こうした事態がもたらされた模様。

■衛生署・梁柏賢副署長は、「本日新たに発見された41の病例のうち、感染ルートが明らかになっていないのが24人。これが高い感染力を持つものであるなら、香港では再度SARSの大流行が起こるかもしれない」と語る。また、淘大花園で感染した住民はこれまでに278人で、その半分は問題のブロックEの住人とのこと。梁副署長は、「皆が自分で細心の注意を払わないと、小さな病例が新たな大流行を産む原因ともなりかねない。引き続きの注意をお願いしたい」と語った。

■4月7日付英字紙「サウスチャイナモーニングポスト」のQ&Aから(回答は衛生署・陳馮富珍(マーガレット・チャン)署長)

Q:飛行機内で感染した人は何人くらいか?
A:WHOもまだ分析中で正確な数字は発表していない。感染者の座席の前列と前々列に座っていた人が感染したケースが報告されている。当然ながらこれは咳やくしゃみをしたときの飛沫が前方に飛ぶため、と見られる。
Q:子供の患者の間には死者がでていないようだが?
A:これまでのところ死亡者はほとんどが40歳以上で、心臓病、糖尿病などの持病があるか、喫煙者である。子供に関する情報は、全症例の分析が終了するまで詳細は不明。
Q:子供が友達の誕生日会に招待されたが断るべきか?
A:家で10日も遊ばせるのは大変なことだが、他の子供との接触は避けるのが望ましい。物や顔をいじるし、風邪や水疱瘡が感染する時も、「そういえば一緒に遊んでいた何々ちゃんが鼻をグスグスいわせていた」というケースが多いではないか。
Q:感染した人が触れた場所でウイルスは何時間くらい生き続けるのか?
A:確認待ちだが、この種のウイルスでは約3時間と推定される。したがって自分の手や、感染者が触れたと思しきところを頻繁に洗うのが最も有効な感染防止となる。

■同上陳馮富珍署長のアドバイス:とにかく手をよく洗うこと。そして手で目、鼻、口をいじらないことが一番だ。呼吸器系疾患を起すウイルスは、涙管に侵入してそこから繁殖に適した鼻に向かいやすいからだ。幸い、このウイルスは、脂質でできた袋で自分を包み込んで保護しているので単純な洗浄用の薬品、つまりアルコール、ブリーチ、石鹸などで簡単にウイルスを殺せる。

■7日、香港の空港では120便が欠航。普段の24%にあたる。香港空港管理局は、SARSに関するWHOの勧告の影響で、キャンセルが増加しているとコメント。現時点で航空会社が連絡している申請では、今月の便はすでに17%が欠航となっている。

■WHOの専門家は、SARSの発生地とされる中国広東省では、感染数の増加ペースが減速しており、ウイルスの力が弱まっている兆候がある、と述べた。SARSの調査のため広東省入りしたWHO調査団を率いるロバート・ブレイマン氏が、ロイター通信との電話インタビューで述べた。同氏は、「中国広東省では感染数の増加ペースが減速している。極めて減速している」と指摘。「問題が解決したわけではないが、2月のピークと比べると下火になっている」との見方を示した。また、「ウイルスが自然消滅し感染力が弱まる可能性を排除していない」とも述べた。

■台湾衛生当局は、SARS感染者(香港・アモイガーデン住民)が3月末ごろ台湾の親戚を訪ね、弟がSARS感染していたことを確認した。患者は現在隔離治療中。

シンガポール政府は新たに2名のSARS感染者を確認した。1名はKK病院の職員、もう一人はSARS感染者の母親。この母親は国立大学病院に土曜日入院している。看護婦はKK婦女児童病院に勤務し、Tan Tock Seng病院の職員から感染したもの。

シンガポール保健省は7日、SARSによる死者が2人増え、 累計で8人に達したと発表した。新たな死者のうち1人は医師で、同国の医療関係者で初の犠牲者。看護師6人も新たに感染したことが判明、感染者は計112人に達した。同国はこれまで、すべての感染者を1カ所の病院に隔離してきたが、別の病院でも看護師らが次々と感染しており、感染経路の特定を急いでいる。

■ポルトガル国内で初のSARS患者が確認された。香港渡航歴あり。入院中だが病状は回復中。

■SARS蔓延を防ぐため、オーストラリアはSARSを法定伝染病に指定。危険度はコレラ、天然痘と同列に扱う。新条例により、当局は感染の疑いのある人を強制的に隔離することができる。豪州ではきょう新たに1名のSARS感染者を確認。累計40名。

【4月8日】
■大富豪・李嘉誠(リー・カーシン)氏の慈善団体が、第一線でSARSと戦う医療関係者にオレンジ100万個を贈呈する。1980年設立以降、氏は48億香港ドルを寄贈している。

屯門(Tuen Mun)の陳雲生議員は、衛生署が同地区の14カ所のマンション群でSARS感染者が出ていることを確認しているとコメントした。うち12カ所は私営マンション、残りは郊外の村と公営団地。陳議員は、屯門地区のSARS感染例は1週間で9件も増加しており、注意が必要だとし、衛生署が積極的に各地区のSARS状況を伝え、住民の警戒を促すことが必要だと訴えている。しかし衛生署スポークスマンは、SARS患者の住所は、その地区の住民が差別を受ける恐れがあるので公開しないが、そのマンションの管理会社、房屋署、民政署へ通知し、消毒などを要求するという。

■SARSの主因とみられるウイルスが新種のコロナウイルスであることを、日本など9カ国の11機関が参加しているWHOの研究協力ネットワークが確認し「SARSウイルス」と命名した。サルの培養細胞にこのウイルスを感染させると、ウイルスが増殖して細胞が変形するが、SARSから回復して体内に免疫のできた患者の血清が、この変形を抑制することなども確認した。この血清が治療に使える可能性も出ている。

■衛生署・梁柏賢副署長は、淘大花園ブロックEの感染拡大にゴキブリが関与している疑いがあるとして調査中であることを明らかにした。「汚物に付着したウイルスを、ゴキブリが下水管を通して家庭に持ち込んだ可能性がある」と同副署長はラジオ番組で述べた。

■観塘(Kwun Tong)区議会・陳国華上区議員は、房屋署からの報告を受けて、淘大花園とは道一本隔てただけの牛頭角下邨第8座14座にかけてでも、SARSに感染した人が確認されたことを明らかにした。消毒作業は既に完了しているが、何人の感染者が出たのかは不明。同区議会は特別会議を開催し、SARS問題を討論。ある議員は、SARS感染者の住むマンション群の名前を公表しても、差別問題にはならないだろうとの意見。李小苑・九龍区首席社会医学医師は、マンション群の名前を公表する必要はないとの見解。理由はひとつにその地区住民への差別問題が起きることと、ふたつに自分の住むマンションは大丈夫だという意識が生まれると、病気予防意識が薄れる心配から。

新たに集団感染が発覚した牛頭角邨の消毒。 見ての通り、元来があんまり清潔な団地じゃありません

集団発生エリアの空撮
最初の集団発生「淘大花園=アモイガーデン」から拡散しちゃった
「団地マニア」な小生は、この界隈は熟知しております(笑)

■SARSの問題を受け、長崎県観光連盟は8日朝、香港経由で長崎港に入港したオランダの国際観光船「プリンセンダム」(37,845㌧、乗員乗客1240人)の船内で行う予定だった歓迎行事を中止。同連盟は「SARSに対する(市民の)不安があるため」としている。同船は3月28日に香港を出港後、中国各地を経て4月8日朝、長崎港に接岸。当初、船内で日本舞踊などの催しを予定していたが、岸壁で船長らに記念品などを贈る内容に変更。接岸前には、厚生労働省福岡検疫所長崎検疫所支所の検疫官が、港外に停泊の同船で検疫を実施。同船は8日午後、長崎港を出港し、関西方面へ。

■WHOは8日、SARSについて、コロナウイルスの新種が感染にかかわっていると判断し、診断のための有効な検査方法を発表。コロナウイルスに対する抗体の有無やDNAを調べるとともに、ウイルスを培養する方法で、抗体は、感染後、20日ほどで血清中に見られるようになるという。DNAからウイルスを同定するための検査材料も、ほぼ特定できたとしている。ただ、ほかに病原体があることも考えられ、「これらの検査が陰性でも、SARSに感染していないとは断定できない」としている。

SARSによる中国での被害が、当局発表を大きく上回っているとする文書を、北京市の人民解放軍病院の医師(72)が米タイム誌に寄せた。8日、同誌電子版が速報した。医師によると、北京市内の別の人民解放軍病院1カ所だけで60人の患者がおり、死者は7人に上っているという。これに対し、中国の張文康衛生相は3日の記者会見で、北京市全体の患者は12人、死者3人と発表していた。医師は、文書を寄せた理由について「正確な数字を明らかにしないと、より多くの死者を出すことになる」と同誌に語った。

■4月1日に自殺した張國榮(レスリー・チャン)の出棺に、内外から約1万人が参列。日本人も多数。

再見!張國榮…

SARSもなんのその! 葬儀場横のグラウンドを埋め尽くす、レスリーファンの皆さん

【4月9日】
■香港衛生署は、3月30日にキャセイ航空CX402便で香港から台北へ行った乗客は、速やかに連絡するように呼びかけている。台湾住民1名がSARS感染して現在台湾で入院中だが、この人は上記の便に乗っていた。

■前日のタイムの記事に関して、告発者がロイターと会見した内容は次の通り。
(1)初めは国営テレビへの投書。それをロイターが入手。この記事は本人との水曜日(4月9日)の会見より。
(2)先週の木曜(4月3日)までに、「309人民解放軍病院」だけで、死者6、感染者60
(3)告発医師は1952年入党(タイムにもロイターにも地位が書いていない)
(4)衛生部広報官は「人民解放軍病院は衛生部の管轄下にない」
(5)309人民解放軍病院の死者は土曜日(4月5日)には7人になった。
(6)3月に「302病院」で2人死亡。
(7)北京市の4つの軍病院だけで少なくとも140人(医師と看護婦を含む)が感染。

■民政事務局・何志平局長は、香港の18地区の区議会に対して、衛生署はSARS関連の資料を渡すと述べた。しかし、資料提出の内容や方法は、患者のプライバシーと市民の「知る権利」のバランスをとったものになろうと補足。

■香港労工処は9日、「非典型肺炎に関する雇用主と従業員間の手引き」を刊行した。

■4月9日、新たに42名がSARSに感染。うち15名が医療関係者、5名が淘大花園住民。退院者は累計で142名になった。2名のSARS感染者が死亡。うち1名は慢性疾患を持つ35歳男性。死者累計は27名

■TVB 夜のニュースより:中国本土でSARSに感染した米国籍教師が深圳で入院していたが、病状が悪化し、9日に香港に移送。屯門病院へ送る予定だったが危険な状態となったため、より近い北区病院へ送られたが死亡した。友人によると、肺は70%が死んでいたという。

■マレーシア政府は、SARS蔓延防止のため、本日より即日香港居民へのビザ発給を停止した。SARS感染がないことの医師証明書がある香港政府官員ないしマレーシアへの投資者は例外。同様の措置を中国本土、台湾。カナダ、ベトナム居民に対しても行う。

■【東日罔】が伝えた上海の状況は以下の通り。
(1)香港旅行後、SARSに感染した上海の女性は、人工呼吸器をつけているものの病状は安定。
(2)肺炎の症状があった9人のうち、SARSと診断されたのは彼女だけ。
(3)市内の4病院が昨日SARS病院に指定された。市民は上海感染症病院、国外居住者は上海肺病院、子どもは小児医療センターと復旦大学小児病院へ。
(4)アメリカンスクールは2日間休校だったが、再開した。
(5)新天地の国際シネプレックスで数人が感染したという噂を、同館の報道担当者は否定。

■外務省の医務官が、香港日本人倶楽部で「SARS説明会」(主催、在香港日本国総領事館)。当初2回の予定が、出席者多く、4回開催。いずれも150人を超す出席者となった。内容については、大多数の出席者が「香港の現状との乖離が甚だしい」と不満を抱くものであった。中には、外務省へ抗議文書を送ると息巻く人も出現。

外務省医務官の講座は、つまりは「余計なお世話!」でした。
内容は、当時香港で報道されていたものとは、かなり乖離していました。
例えば、マスクをつけるという行為は、当時の香港では「服を着て外出するか、裸で外出するか」とほぼ同列のものであり、いきなり「マスクを外せ」と言われても、すんなり了解できるものではありませんでした。
一方で、日本政府は在住邦人向けにマスクを送って来ているのですから、ワケわかりません…。
その送られてきたマスクの顛末については、またそのうち、ということで。
今回はこれにて…。


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