【SARS10年を回顧-11】*旧ブログ

SARS回顧集もいよいよ10回目。なんと、ドびつこい(笑)。

香港の感染者の拡大は、一向に沈静化の気配を見せない中、「やはり」という感じで、ポツポツと本土の感染拡大の実像が見え始めます。

ただ、この時点では中央側はあくまで「沈静化に向かっている」なんていう態度を取っていますし、報告される数字も極めて少ない。これが逆に香港在住者に不信感を抱かせるのです。何でもそう。あっちが自信満々に語れば語るほど、こっち側は「ウソ言えぇ~」って思っちゃうのです。香港市民と中央に信頼関係などありませんからね。

挙句の果てには、「広東省のパンデミックは、香港の感染拡大のせいだ!」なんて、言われる始末。これじゃ、信頼関係なんて築きようがないですもんね。

香港在住中、小生は下手くそなりに月に1回くらいは、広東省各地へゴルフに出かけていました。香港からはバスやフェリーで行くのですが、交通費含めても、日本よりずっと安いし、時間もさほどかからないので、多くの人は頻度が増えます。

あんな時節でしたから、たまには息抜きにゴルフ行きた~い!なんて思うのが人情ですが、社内のスタッフは「どうか、ゴルフには行かないでくれ」と懇願します。「アタシの娘に感染したらどーしてくれつもりですか!」なんて強く言われたりも…。
まさか、草原の上(笑)で感染はしないだろうと言っても、バスやフェリーには感染者が乗ってるかもしれないし、キャディが感染者かもしれないし…と、言いだしたキリが無いほど不安を色々と並べます。

もちろん、知らん顔して行くってのもアリですが、そこまで言われて、こっそり行ったとしても、決して気分良くラウンドできるわけでもなし…。なんかもう、ほんと息苦しい空気が全体を覆っていました。

いつもなら、人でごった返している空港の出境口近辺も マスク姿の職員が一人ブラ~っとしてるだけ 香港から出る人も、香港へ来る人もほとんどいない日々が続きました

【4月10日】
■集団感染の発生した淘大花園、牛頭角下邨とは、MTR(地下鉄)をはさんだ位置にあるマンション群「徳福花園(テルフォードガーデン)」の家主委員会・潘任惠主席は、衛生署から徳福花園住民のうち、数ブロックにかけて5名がSARSに感染しているとの通知を受けたことを発表。潘主席は、プライバシーを盾にして政府が「公民の“知る権利”」を軽視し、患者の詳細資料を公開しない事を批判した。同マンション群の住民は、すでにSARSが蔓延しているのではと不安を訴えていると語った。

淘大花園(アモイガーデン)を中心とした感染の拡大
駅の反対側にある「徳福花園(テルフォードガーデン)」でも、感染者確認

■4月10日午後1時の時点で、新たに28名がSARS感染者と確認された。累計で998名。うち12名が医療関係者、1名が淘大花園住民。SARS感染者3名が死亡。退院者累計は154名(きょう12名退院)。120がICUで治療中。

■衛生福利及食物局・楊永強局長は、SARS感染者と一緒に住んでいる家族は自宅内あるいは隔離キャンプ内で10日間隔離されることになると述べた。今日より即実行。これに合わせて衛生署は隔離された人の自宅に人を派遣して身体検査を行うと発表。楊局長は、これまでの経験によると、感染者と一緒に住んでいる家族が2次感染を起こす危険性は5%以下だが、今回このような措置をとることにより、更なるSARSの蔓延を防止していきたい、市民もこの隔離措置を受け入れてくれるだろうと語った。また衛生署は同署のウェブサイトで感染者が居住していたビルの名前を公表すると発表。楊局長は、香港市民が感染者やその家族を差別視しないことを望むと共に、市民一体となって共にこの困難を乗り越えていこうと語った。

■衛生福利及食物局・楊永強局長は、淘大花園ブロックEの流しやトイレから比較的高密度のコロナウイルスが検出されたことから、詰まった排水管を通してSARS感染が広まった可能性が高いと考えていることを明らかにした。既に香港大学と衛生署の研究でSARS患者の排泄物からコロナウイルスが発見されており、淘大花園ブロックEの感染源と見られる12階住民の親戚は下痢をしていたことがわかっている。この調査結果は、飛沫感染ルートに次ぐ、患者の糞便という第2の感染ルートを示唆するものである。

■衛生署・陳馮富珍(マーガレット・チャン)署長は、今日中に新措置の影響を受ける家庭に文書を送付し、明日から強制隔離措置を開始すると述べた。定期的に健康診断を受けている感染者の家族のうち、あと4日以上の観察期間が残っている場合は隔離されることになる。およそ70~80世帯の家族、少なくとも150人の家族が影響を受けることになる模様。また陳馮署長は、感染者家族の自律心にだけ頼っていては隔離措置を完璧に実行するのは難しいと思われるため、当初は警察と協力し合い、隔離者が確実に自宅内にいるかどうかを確認する予定、しかし長期に渡って警察に依頼するわけにもいかないだろうと述べた。

■民政事務署・王栄珍総署長は、この日の夕方からSARS感染者の家族とコンタクトをとり10日間の隔離措置について説明すると述べた。隔離期間中はホットライン(18ライン)を設け、朝8時から夜8時までの間、隔離者からの質問に答える。

■SARS問題で、香港大学、中文大学の2大学が、日本で予定していた日本語・日本文化研修を見送ることに。受け入れ先の鹿児島県アジア・太平洋農村研修センター(同県鹿屋市)にメールで伝えた。両大学とも「これから学生への感染の可能性もあり、安心して送り出せない」としている。中文大のメールは4日、香港大からは9日に届いた。研修は香港大、中文大とマカオ大が参加し、7~8月、センターを拠点にホームステイなどで交流する予定だった。センターでは、「残念だが予防方法などが分からない以上、健康には代えられない」と話している。

■SARS問題で、横浜市教育委員会は10日までに、香港や中国などの流行地域から市内の学校に転入予定の生徒は帰国から10日間、自宅での待機を保護者に要請するよう市立小中高校に伝えた。市教委によると、流行地域から転入予定の児童、は9日現在で、約10人いるという。

■9日付の中国紙「中国青年報」は、「情報公開と社会の安定」と題したコラムで、SARSなどを例に挙げて情報隠蔽が「政府の信用を損なう」とともに、メディアに対する報道規制が「原因の徹底究明を妨げる」と批判。共産党と政府の強い管理下にある中国紙が、一連の肺炎に関する報道の中で政府の対応を批判するのは極めて異例。同紙は、政府が対外的に不都合な事件の報道を規制するのは「社会の安定に影響を与えてはいけない」との理由からだとする一方、「メディアが報道しなければ(事件が)発生しない、というわけではない」などと指摘

■北京で、日系のデータ関連会社に勤める中国人女性従業員が、SARSに感染していたことが9日わかった。日本人駐在員への感染は確認されていない。中国の日系企業で感染者が明らかになったのは初めて。 関係者によると、この女性は3月末から発熱し、仕事を休んでいた。3月中、市内の病院へ見舞いに通っていたことがあり、院内感染の疑いあり。夫と父親も感染しているという。この会社が入居しているビルは北京の海淀区中関村地区。外資系を含め情報技術関連の企業が集中。同ビルにはほかに日系企業が2社入っており、それぞれ感染者がいないかどうか確認中。ビルは8日から15日まで閉鎖され、すでに全階が消毒された。

■WHOは、中国本土および香港を除き、SARSはその他の地区での蔓延のピークは過ぎたと発表。中国衛生部は木曜、新たに2名のSARS患者の死亡を発表。中国の死者累計は55名になった。この他、新たに11名感染者を確認、累計で1290人になった。

■中国衛生部は、北京でのSARS症例の一部は当地内の感染であり、全部が外地からもたらされたものではないと認めた。公式発表では、北京の感染者は22名で、うち4名は死亡していることになっている。

■北京市は10日、北京の外国大使館や報道機関向けに新型肺炎予防対策の説明会を開き、北京で確認された感染者22人のうち外国人は2人(うち1人は死亡)、香港・マカオ出身者は2人と明らかにした。外国人は北京に出張し、6日死亡したフィンランド人の国際労働機関(ILO)局長とカナダ人の旅行者。

■広東省SARS対策医療専門家チーム責任者・鍾南山氏は、広東省で感染し死亡した人の大部分が中、青年であると指摘。広東省でのSARS感染例は1,213名、44名が死亡している(政府の公式発表)。また同氏は、香港の淘大花園の住民が広東省に来たから、SARSウイルスが当地の居民に蔓延したのだと述べ「広東省の異常事態は、香港住民がもたらせた災い」との見解を示した。

■北京解放軍総医院(301医院)の蒋彦永医師がタイム誌に投書した問題に関し、昨日同医師は、マスコミに対して、今のところ上層部からはまだコンタクトしてきていないことを明らかにした。しかし、今後の身の振りようについては分からないとコメント。同医師の告発に対し、昨日衛生部のスポークスマンは、軍の医院は衛生部の管轄下になく独立しているため、張文康・衛生部長には軍の医院に状況を尋ねる権利はないと語った。また北京市が故意に状況を隠していたとの指摘に対し、昨日北京市の張茅副市長は、記者会見の席上で正面からこれに回答することを避け、中央政府・地方政府ともに定期的にデータを公布するとだけ述べた。北京市内にある他病院の医師もまた、現在北京東直門中医院、301及び302医院内にも数多くのSARS感染患者がいると証言。

■中国外務省の劉建超・副報道局長は10日の定例会見で、中国人医師が政府発表のSARS患者数は過小報告だと告発していることについて、「中国政府は、極めて厳粛に、責任を持って問題を処理している。根拠のない数字を広げることは利益にならず、こうした情報は有害だ」と述べ、告発者を批判した。また、衛生省当局者は同日の記者会見で、「(公表分以外の)患者を隠していることなどありえない」と反論した。

■中国国務院の呉儀副総理は9日午後、WHOのベケダム駐中国代表、SARS調査団と会見した。呉副総理は会見で「中央・地方政府や医療関係者の努力によって、中国のSARSはすでに感染防止対策が効果を上げており、発病者数が減少するとともに完治者が増加している」と述べるとともに、「中国政府は、WHOの支持と協力により、SARSの感染防止と根絶を達成する自信と能力がある」と強調した。また呉副総理は、中国での流行・予防・治療について「SARSは新種の伝染病であり、世界各国に認識されるまでには時間がかかった」と述べたうえで、「中国政府は一連の措置を取り、中国にいる外国人の健康・安全の確保に努めた」と述べた。

■国際サッカー連盟(FIFA)は10日、SARSが東南アジアを中心に広がっていることを考慮し、5月24日に武漢で行う予定だった女子ワールドカップの組み合わせ抽選会を延期すると発表した。女子W杯は9月23日から中国で開催される。今月17日からタイで開催予定だったアジア女子選手権兼W杯予選もSARSを懸念して延期されている。

■フランスで新たに3名がSARS感染。すべて、ベトナム・フレンチホスピタルに勤務していた心臓科医師(SARS感染者)からの感染ではとみられている。この医師は3月23日にフランスへ帰国。現在入院中。この医師が登場した飛行機のスチュワーデス1名と男性乗客1名も感染している。スチュワーデスはすでに退院、男性乗客は順調に回復中。

南アフリカで、 SARSの感染が報告された。国立伝染病研究所の関係者が、記者会見で明らかにしたもの。アフリカ初の感染者であり、南アフリカ国内でも患者第1号とみられている。この患者は先日、香港に渡航していた。

インドでSARSの疑いのある患者が3名いると確認された。1名はタイ旅行の後、発症。SARSのインド社会への蔓延が心配されているが、同国の衛生当局は、現時点ではまだ感染者は確認されていないと発表。当地の医療関係者は、インド国内の医療設備不足を指摘しており、ひとたびSARSが猛威を振るえば、医療システムは大打撃を受けることになると警告している。

■シンガポールで、さらに8名のSARS感染者を確認。当地での感染者累計は126名、死者累計は9名になった。新感染例のうち7名は病院内感染(5名が医療関係者、1名が入院患者、1名が見舞い客)。現在42名の患者が入院中で、うち14名が重態でICUに収容されている。

■香港における伝染病蔓延が深刻であるため、フィリピンのアロヨ大統領は10日、国民に対し香港へ行かないように呼びかけた。

■東南アジア諸国連合(ASEAN)は、今月末のマニラ会議を中止した。SARS蔓延を憂慮して。この会議は、ASEAN加盟国間の経済統合と、一体化したアジアパシフィック債券市場の設立を討論する予定だった。

ご覧の通り、中央は数字を公表してはいますが、「過少報告」だというのが見え見えでした…。この数日後、ついに真実を隠し通すことができない状況に追い込まれた中央政府は、恐るべき感染の実態を公表するに至るわけです。

まあ、アタシも広東省内地へ、ホイホイとゴルフに出かけなくてよかったと言うわけですが…。

こんな状況でも、日本人の香港現地採用者を「駐在員は本社から本土への渡航禁止令が出ている」という理由で、「身替わり」に本土の工場や取引先へ出張させている日系企業も多いって噂を聞かされたことがあります。それはアカンやろ!ねぇー!

当時の勤務先は、なぜか現法社長が、このSARS禍に疎いというか「我関せず」な人でした。よって、香港の感染拡大も「一過性ですからねぇ~」と落ち着き払っていたし、台湾やシンガポール、あげくは上海なんかも平気で出張してました(笑)。
こういう人は、まず感染しませんね(笑)。

って、もはや、笑いごとではない香港だったんですが、今だから「(笑)」ってことで、今日はこれにて。
では、また。


1件のコメント

コメントを残す