【上方芸能な日々 文楽】帯屋*旧ブログ

文楽の4月公演も30日に千秋楽。あっという間でしたな。
今公演、文楽には義理の悪いことをしたな…と。
結局、千秋楽で『桂川連理柵』を幕見で見ただけに終わってしまった。
やっぱり4月はこんな暇人にも何かとイベントがあって、なかなか文楽劇場に参じることができなっかたの。近くには何度か行ってるのにねぇ。
まあ、そういう「縁」のない公演もありますな、昔の朝日座時代からもう30年以上の付き合いやしなぁ。

さて、幕見でなんとか千秋楽ギリギリセーフで見ることができた『桂川~』。通称、「帯屋」とか「お半長」と言われてましてね、落語『胴乱の幸助』でもおなじみの作品。
昼の部だからか、千秋楽だからなのか、「満員」と言ってもいい位の入り。でも「満席」とまでは行ってない。それでも客席が8割以上埋まれば、館内に熱気があるし、人形さんのちょっとした動きや、太夫の「クスッ」とくる言い回しにも反応が大きくて、観劇そのものが楽しい、ワクワクする。

人形浄瑠璃文楽
平成24年4月公演
国立文楽劇場
1794402

『桂川連理柵』(かつらがわれんりのしがらみ)
作者:菅専助
初演:安永5(1776)年10月15日 大坂北堀江座

六角堂の段
三味線の喜一朗は聴くたびに「腕上げてはるな~」と思う。亡き師匠にはまだまだだけど、いずれその域に達するのも夢じゃないのではと、ここ数公演で思えるような感じになってると、アタシは思いますがね。あんまり気にとめてなかった人(ゴメンねぇ)だったけど、いつの間にか気になる存在になってますね。
文字久大夫も懸命な中にほんのわずかに「ゆとり」を感じる語りでした。良くも悪くも真面目な人なんでしょうな、がちがちに固まった語りで「肩凝りますねんけど…」と言いたいこともなくはなかっただけにね、その「ゆとり」いいなぁ。喜一朗が上手くノセたのかもわからんけどね。

帯屋の段
豪華顔ぶれです。これでもか!の布陣です。
切場語りで嶋さん~住さん、人形さんで簑助&文雀、さらには勘十郎、紋壽。三味線も富助、錦糸と安心と安定のメンバー。「どうだ、まいったか!文楽すごいだろ!」と言わんばかりのメンバー。読売巨人じゃあるまいし(苦笑)。
この布陣、「ありがたや、ありがたや。幕見でこれだけのメンバーが見れるなんて!」と思わせたらシメたもの、なんて文楽側はよもや思ってはないと思うけど…。
小生はなんか釈然としないのですよね。
確かに、嶋さんから住さんへとつながる切場は圧巻だった。簑助、文雀、勘十郎、紋壽も至高の舞台を見せてくれた。幕見で観た身としては、「これ、1500円で見せてもらってエエんですか?」と、素直に喜んでおけばいいのだろうけど、いやいや待ってくれ…。
表現が悪いかも知れんけど、文楽はこういう形で「人間国宝の安売り」をしてはいかんと思う。さりとて出し惜しみも困るのだけど…。
いつも言う「できの悪い公演パンフ」の悪い点はここにもあって、「なぜこの布陣でやるのか」の説明が一切ない。公演チラシにもない。きっとこの布陣には何らかの意図があったのだろうけど、せめて「嶋大夫と住大夫が切場を語る帯屋では、嶋大夫の人物描写の妙と住大夫の情感あふれるお半&長右衛門の心情をたっぷりご堪能を」とか「文雀がお絹の賢妻ぶりを、簑助はお半の健気で一途な恋心を思い詰めた表情を人形に醸し出してゆきます」…、だから必見の舞台です! みたいなのが欲しい。

要するにこの布陣で上演するのに、何の宣伝もないのである。これでは「人間国宝や実力者をずらっと揃えたから文句ないやろ」と言ってるみたいやないですか…。残念だな、こういうの。
いつまで住さんを筆頭とする人間国宝を「超スーパースター」として祭り上げておくつもりなんだろう。もちろん、「超スーパースター」であるし、いつまでも元気に舞台を勤めてもらいたいのだけど、こういうやり方は好きじゃないなぁ。
同じようなこと思ってる人、いっぱいいると思うよ、ホンマに。アンケートにいっぱい書いてやろうと思ったけど、その時点ではまとまった文章になりそうになかったので、気持ちが落ち着いたからとりあえずブログにした。文楽の人は見てないと思うけどw、ちょっと吐き出したかったので。

舞台そのものは、メンバーがメンバーだけに何も申すことはありません。「これぞ文楽」という素晴らしいものでした。その点だけでいえば、この幕見はマジ、お値打ちもんでした。
中でも嶋さんのチャリ場は最高でした。ああいう嶋さんが大好きです。ほれほれ、あの「胴乱の幸助」でもおなじみの一節、

「親じゃわやい、親じゃわやい」。

もう、あそこで思わず

「キタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!!!」

の3連発でしたよ(笑)。Lovely♡嶋さん♡

そして住さん。もうこの方と同じ空間で「文楽」を共有していることにえも言えぬ幸福感を感じる。いやいや、共有なんておこがましいけど、そう思う。だからこそ、文楽は、そして文楽を生み育ててきた大阪の街は、住さんをはじめとした人間国宝をもっともっと大事にしてほしい…。
道行朧の桂川
太夫、三味線総勢12人で道行をお送りいたします。
若いな~。咲甫、睦、宗助までは香港へ行く前から見ている顔ぶれかな?――すなわち15年以上のキャリア。
とにかく、咲甫以下、イケメンがそろってるね(笑)。
團吾がなんかとぼけた味があって好きな三味線さんだな。咲寿大夫は自分のメディアを駆使して、一人でも多くの人に劇場へ足を運んでもらいたいと頑張っている。文楽の若き好漢の一人。若い世代の文楽もイイよ~。

文句も言いながらも、やっぱり文楽、好きだから。頼むわ、どうぞよろしいに。


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