【返還10周年】思い出話(37)「六四その2」 *旧ブログ

もう、2日前の話になりますが、遅ればせながら現場レポートです。
MINOLTA DIGITAL CAMERA
2007年6月4日午後8時半ごろ、ビクトリアパークで筆者撮影
天安門事件から18年。
小生が初めて「六四追悼集会」を見たのは1995年。あの頃は返還後への不安も手伝い、参加人数にかかわらず、それこそ「天安門事件への怒り、抗議」という空気を重たく感じたものです。

最もそれを強く感じたのは、やはり返還まで1ヶ月を切った97年の六四集会でしょう。主催の「香港市民支援愛国民主運動連合会=支連会」発表で5万5千人が参加。小生も現場におりましたが、「もしやこれが最後か?」という悲壮感、絶望感が漂い、集会で歌われる民主活動の歌声も例年の数倍のボリュームに聴こえたものです。
MINOLTA DIGITAL CAMERA
2007年6月4日午後8時半ごろ、ビクトリアパークで筆者撮影
返還報道の一環か、世界中のメディアが正面ステージ前に集まり、「最後?の六四」を伝えていました。集会終了後には、香港の新聞記者たちが記念撮影をするなど、「ああ、こういうのが返還というんだな~」と感慨深くその光景を見ていたものです。
が、翌年以降も集会自体は変わらず開催され、毎年主催者発表で4万~8万(警察発表とは倍以上の開きがある!)が参加しています。今年も主催者発表で5万5千(警察発表2万7千)。で、小生の目勘定では1万5千人くらいでしょうか。もし、本当に5万5千とすれば、甲子園満員で20万人くらいってことになる…。見た目はそんな感じです、実際は。
MINOLTA DIGITAL CAMERA
2007年6月4日午後8時半ごろ、ビクトリアパークで筆者撮影
仮に、5万5千としても、現場の空気は返還前のような重いものではなく、逆にあっけらかんとしたものさえ感じるのは小生だけでしょうか?
確かに「母親運動」の丁子霖さんや、米国在住の王丹のメッセージが流れるなど、「天安門」のおもかげはあるのですが、どうも、しっくりしない。

78314
2007年6月4日午後8時ごろ、ビクトリアパーク(蘋果日報)
このようななんかおかしな雰囲気っていうのは、国家安全条例の立法化を特区政府が急いだため50万人デモ(03年7月1日)を誘発したころから強まっていったのではないかと思います。
それまで事件への抗議と怒りの声を上げているだけだった「六四活動」が、どうにも「打倒董建華(C.H.トン=初代行政長官)」、「全面普通選挙導入」などと同列に扱われ始めているように見えます。
78315
蘋果日報だけは自社イベントのような扱い
返還前までは「全球唯一勇敢的中華民族」として、「反共」と「反日」は任せとけ! という「大陸への優越感」みたいなところがあった香港人ですが、反日はともかく、「反共」や「六四」などと言う前に、自分たちの「民主化」をなんとかせなあかんのとちゃう? ってことに気づき始めた…。そこで、「六四」も言うけど、俺らのことも同じように言おうぜ、そんなのがここ数年強まっているんでしょうね。
それを「六四の風化」と言ってしまっていいかどうかは、「六四」を見る立ち位置によって違うでしょうが、「風化」というよりは「埋没」というべきでしょうか…。
それから、本土在住者の香港への自由旅行枠の拡大で、かなりの数の大陸人がビクトリアパークにやってきて、集会を体験します。そのためか集会の進行は広東語と普通話で進められます。返還前は広東語と英語でした。実際、大陸からも参加者があったようですが、それを伝える『蘋果日報』もさすがに本人の身の安全を考慮し、素性を明かしてはいません。
今後も香港での「六四」は継続されるでしょう。一方で、香港市民が「全面普通選挙導入」など、自らの民主化に熱心になればなるほど、「六四」は「風化」ではなくそれらの中に「埋没」してゆく…、そんな気がします。
それは中共にとっては「思うツボ」どころか、非常に危なっかしい方向ではないでしょうか…。
で。度々申し上げますが、支連会のメンバーの大半は(ってか全員かも)、徹頭徹尾反日戦士でもありますから、いたずらに香港の民主活動を持ち上げるのは危険ですよ~。
以上、素人香港ウォッチャーのとりとめもない「六四」雑感でした。
———————————————————————————————
COMMENT:
AUTHOR: 丸山光三
DATE: 06/06/2007 05:08:07
ううむ、やはり「祖国復帰」による去勢、というところでしょうか?もう、以前のように他人事ではない現実の政治的、経済的、社会的圧力を日々感じているであろう香港人のやるせなさ、といったものを感じてしまいます。
こうして、「復帰」前に、すなわち停滞して死水のようだった上海と活気のあった香港を誇りながら、「今日上海、明日香港」と愚痴っていたのが、呪文のように効いてきている、のでしょうか?
—–
COMMENT:
AUTHOR: leslieyoshi
DATE: 06/06/2007 12:20:45
To マルコおいちゃんさん
>ううむ、やはり「祖国復帰」による去勢、というところでしょうか?
去勢されたのか、はたまた自ら去勢を選んだのか。まだ返還から10年ではその結論は出ません。やはり「50年不変」の果てを見てみたいという気持ちは強いですね。
昔ほどではないにせよ、いまだ香港では「とにかく金儲けができれば」という意識は強いので、現状で言えば、いたずらに中共を刺激することもないだろう、というとこでしょうか。
中共よりもむしろ、それに恭順するHKASARへの不満の方がはるかに大きいようです。
—–
COMMENT:
AUTHOR: leslieyoshi
DATE: 06/06/2007 15:00:07
*訂正
>HKASARへの不満
正しくは「HKSAR」


1件のコメント

コメントを残す