【睇戲】中国女子バレー(中題:奪冠)<日本プレミア上映>

第16回大阪アジアン映画祭

さて、大阪アジアン映画祭も残すラインナップは、この作品含めてあと2本。で、この日の二本目は、この映画祭にしては珍しく、バリバリの商業映画。監督が陳可辛(ピーター・チャン)で主演が鞏俐(コン・リー)という超絶売れ線狙い。さらには描くのは中国女子バレーの歴史にその名が燦然と輝く、あの郎平ときたもんだ!我々以上の年代には懐かしい名前。日本チームを苦しめたあの郎平だ。こりゃ相当期待できるぞと、わくわくしながらABCホールへ!

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2021》
中国女子バレー 中題:奪冠 <日本プレミア上映>

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

中題簡体『夺冠』中題繁体『奪冠』
原名『中国女排』 英題『Leap』

邦題『中国女子バレー』
公開年 2020年 製作地 中国、香港
言語 標準中国語
評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳可辛(ピーター・チャン)

領銜主演(主演):鞏俐(コン・リー)、黃渤(ホアン・ボー)、吳剛(ウー・ガン)、彭昱暢(パン・ユーチャン)、白浪(バイ・ラン)
主演(出演):中国女子排球隊(中国女子バレーチーム)=姚迪、朱婷、徐雲麗、張常寧、惠若琪、袁心玥、林莉、劉暁彤、顔妮、丁霞

【作品概要】

文化大革命後、改革開放路線へと舵を切った1978年から始まり、日本で開催された1981年のワールドカップで中国女子バレー国家代表チームが優勝するまでの奮闘、その後の低迷を経て、2016年リオデジャネイロ五輪の準々決勝で再浮上するまでの紆余曲折を描いた実話ベースの作品。<引用:大阪アジアン映画祭作品紹介ページ

最高に面白かった!文句なしの★5つだ。

さすが、天下の陳可辛(ピーター・チャン)、何をどうすれば客が喜ぶかというツボを心得ている。そこがやっぱり「メジャー」の監督の作品。多くのスポンサーが付き、潤沢な資金に恵まれ、一流の俳優陣をそろえ、バレー中国国家隊の選手が「自分役」として登場し、日本チームも協力して、超娯楽大作に仕上げている。

そして単なる超娯楽大作というだけでなく、郎平という中国女子バレーの超級レジェンドと、改革開放政策当初からの中国国家隊の山あり谷ありのストーリーを描くことで、中国の観客の涙腺を緩ませるのだから、まあ皆さん、陳可辛の掌の上で見事に転がされましたな(笑)。

横断幕がすごいね。「コートはまさに戦場、ボールは鋼鉄の砲弾」。さすが解放軍! by “香港01”

改革開放、といえば。中国女子チームが解放軍の男子チームと対戦する場面があるのだが、女子チームの奮闘に男子チーム側が「女子チームに学ぼう!」とか叫んで拍手するシーンには、笑ってしまう。「ああ、そういう時代をまだ引きずっているころだったなぁ」という、一種の「思い出し笑い」だ。なにせ改革開放以前の中国は、やたら「●●は◆◆に学べ!」ってのが多かった。その辺の時代背景を挟み込むから、余計に大陸本土の観客は喜ぶ。一応、大阪アジアン映画祭では「香港映画」というカテゴリーだが、監督が香港人なだけで、俳優も作品が向いている方向も完全に「中国映画」である。

そもそも、五星紅旗が打ち振られ、『義勇軍進行曲』がクライマックスシーンで流れる「香港映画」なんて2019年以降はあり得ないだろう(笑)。と言いながら、香港人の皆さんは北京五輪の聖火リレーでは五星紅旗を打ち振り、中国の金メダル獲得のたびに『義勇軍進行曲』にウルウルしてたんだから、ずいぶんと自分たちの都合のいいように「一国両制」を使い分けるなあと感心することしきり(笑)。

ま、そっちはさておき。

レギュラーを目指して、誰よりも鍛錬に励む若き日の郎平を演じたのは、実の娘、白浪

ま、観る前から分かっていたことだが、明らかにこれは「郎平物語」である。選手時代の郎平を演じるのが、実際の娘の白浪(バイ・ラン)である。当たり前だが、そっくりだ、あの頃の郎平に。

非常に印象深い1981年のワールドカップ。大阪での女子決勝戦は日中対決。郎平旋風吹き荒れる中、日本チームは小島孝治監督のもと、江上由美、横山樹里、三屋裕子といった面々が身長差をものともせずぶつかり合う熱戦にテレビにくぎ付けになったもんだ。

今作では、あの「伝説の決勝戦」が忠実に再現されているのには感心した。中国国家隊全面協力なんで中国選手がばっちりプレーしているのは不思議じゃないが、日本側の選手もなんだか横山とか江上とかそっくりで、プレーもちゃんとこなしているのはびっくり。日本人なのか、中国人なのか、バレーの選手なのか…。そこはよくわからんが、ああいうことができちゃうのが、やっぱり潤沢な資金に恵まれているからってことだろうな。

そう言えば、中国の映画サイト『豆辨電影』でこの作品のページを眺めていたら、日本80年代教練=日本チームの80年代の監督役として、高野浩幸の名が。「お、これは、『超人バロム・1』の白鳥健太郎(しゅっとした方w)ではないか!『なぞの転校生』ではないか!」。ちょっと待て、あの頃の(1970年代)の彼は正味でしゅっとした少年だったぞ、そんな子が、え?小島監督役?と我が目を疑ったが、高野浩幸さん、もしこのブログ見たらご本人かどうか教えてください!(一生見ないと思うけどw)しかし、どういう経緯でバロムワンがこの映画に出たんやろ?そこも気になる…。

初期のポスターには陳忠和の名前があったが、陳忠和からいちゃもんがついて以降はこの名前は出てこなくなる

郎平のよき理解者であるとともに、指導者となってからはよきライバルとして激しく火花を散らした陳忠和の若き日を演じたのは彭昱暢(パン・ユーチャン)。初めて見る顔だが、なかなかいい味を出していた。陳忠和自身は、この作品に色々といちゃもんをつけたみたいだが…。だからクレジットには役柄を「教練(コーチ)」としか書いてないのかな? 観た限りはそんな印象まったく受けなかったけどな~。知らんけど。

指導者となった郎平を鞏俐(コン・リー)、陳忠和を黃渤(ホアン・ボー)と、中国二大スターが共演。選手として頂点を極めるも、指導者として苦悩し、どん底も味わい、体もガタガタになってしまう郎平を鞏俐が熱演する。すっぴんにスポーツウエアの鞏俐が新鮮すぎる!

実は小生、鞏俐と映画で共演しているのだ。いや、これホンマに。勝手に「香港の師匠」と崇め奉る許冠文(マイケル・ホイ)にジェレミー・アイアンズも出演した『中国匣』(邦:チャイニーズ・ボックス)なる作品なんだが、返還記念パーティーの場面を中環(Central)の旧中国銀行ビル内の中國會(The China Club Hong Kong)で撮影するにあたって、エキストラ大募集と日本人クラブからお知らせがあったらしいが、小生はそのお知らせ元からのお誘いで参加した。その時の殺し文句が「許冠文と鞏俐が来ますよ!」。ようわかってはる(笑)。というわけで、ほぼ1日を許冠文、鞏俐とともに過ごしたのである。後にVCDを購入し、件の場面を何度もストップモーションかけながら観てみたが…(笑)。ま、そんな次第で、大女優の鞏俐には非常に親近感を抱いている(笑)。

それにしても、本作中の鞏俐はすっぴんだろうが、スポーツウエアだろうが、やっぱり鞏俐は鞏俐という絶大な存在感。そこはもう、当たり前と言えば当たり前なんだけど。そんな鞏俐の起用法については、「これはいくらなんでも…」との意見もあるが、小生は、こういう手法、大好きなんで、逆 に「おお、これこそ娯楽作品の本道!」と拍手喝采なのである。

朱婷が朱婷として出演している。一時、自信を失う朱婷を勇気づける郎平(鞏俐)

さてこの作品もまた、COVID-19に振り回されたクチである。本来なら、2020年の旧正月公開のはずがずれ込んで、国慶節連休を見込んでの9月の公開となった。今年の大阪アジアン映画祭、こういう経緯の作品が実に多いのが印象的である。

【预告片先知| Movie Trailer】

(令和3年3月14日 ABCホール)



 


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